第16話 衝撃(4)

泣きっぱなしで眠れなかった。


こんなの


高校生の時に失恋して以来だ。



ゆうこははれぼったい目を何とか冷やしてメイクをした。



別に


真太郎に告白をしたことはないけれど。


ずっと


心に秘めていた想いなのに。



勝手に失恋をしてしまった。



それもまた心が痛む。



真太郎は少し遅く出社すると連絡があったようだった。


南を空港に送りにいくんだろう、とゆうこはわかりすぎて


辛かった。




できれば。




知りたくなかった。



彼女がいても


知らないフリをして


自分だけ


彼との空間を楽しみたかった。




そう思ったらまたじわっと涙が出そうだった。




だけど


ウチに泊まりに来てくれた南のことも同時に思い出し



彼女が


本当に人を惹きつける魅力的な女性であることが痛いほどわかってしまって。


真太郎が彼女に惹かれるわけも


わかりすぎてしまって。





やっぱり


あたしじゃ


ダメなんだ。




その時


自分のパソコンにメールが着信したのに気づいた。



開いてみると


南からだった。



「え・・」



慌ててクリックした。




『いろいろありがとう。 楽しい東京生活になりました。 ゆうこちゃんのご家族にもほんまに楽しかった、とお伝え下さい。 あたしとしては何を言っていいのかようわからへんけど、ゆうこちゃんが真太郎にとってとても大事な人だということは、よくわかりました。 これからも真太郎を助けてあげてください。 あたしはいつごろ日本に戻ることになるかはわからないけれど。 ゆうこちゃんと一緒にまた頑張れたら嬉しいです。 南』




も~~~


だから。


カンベンしてって・・。




ゆうこは一人、シクシクと泣いてしまった。



ごめんなさい。


やっぱり


素直になれなくて。


ちゃんと


『さよなら』もできなかったし。



たった1週間だったのに


彼女と楽しく過ごしたことばかりを思い出す。




ごめんなさい


ごめんなさい・・




ディスプレイで顔を隠すように


いつまでも泣いてしまった。



 


「どこか具合でも悪いんですか?」


ぼんやりしていると


いつの間にか戻ってきた真太郎に顔を覗き込まれ



「えっ!!」



ゆうこは驚いて思わず立ち上がってしまった。



そのリアクションに逆に驚いた真太郎は


「な、なんですか?」


おそるおそる訊いた。



「い・・いえ。」



ゆうこは挙動不審になってよろっとまた座った。



「すみません。 遅くなって。 何か電話ありました?」



彼の笑顔はいつもと同じだった。



『彼女』がやってくる前と


なんら


変わらない・・


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