第15話 衝撃(3)

「ねえ、」


南は最後の夜を真太郎と過ごしていた。



「ん・・?」


愛しそうにベッドの中で彼女を抱きしめる。



「・・ゆうこちゃん・・真太郎のこと好きやってんな、」


南はポツリとつぶやいた。


「は・・」



真太郎は意外な言葉を言われて、思わず彼女を見た。



「は?って。 気づかなかったの?」



「白川さんが? おれのこと?」



あまりにも意外な顔をされて



「って・・ほんまに? これっぽっちも?」


南は思わず身体を起こした。



「・・彼女が言ってたの?」



「言わないけど! わかるよ、」



「そんなこと・・」



真太郎はまだ信じられなかった。



「ほんと、白川さんとは仕事ではずっと一緒だったけど。 それは仕事だし、」



「ニブすぎるし。 あんた女心いっこもわかってへんなあ、」


南は呆れた。



「え? そうかなあ? そんなことないと思うけど、」


真太郎はまだ疑心暗鬼だった。



「ま・・平和やったんやな。 そうやって・・うまくいってたんやろなあ。」



「ヘンなこと言うなよ。」



「あたしには・・どうすることもでけへんけど、」



「おれは・・。 ずっと南だけだから、」



真太郎はまた彼女を強引にベッドに押し倒した。



彼から


好きだ、と打ち明けられて。


ずっと弟のように思ってきたから


ほんとに驚いた。



だけど


真面目で何でも一生懸命な


彼のことを


いつしか


『弟』以上の目で見るようになり。



いつの間にか


逞しくなった彼は


本当にまぶしかった。



そして


自分にとっても


一番大事な人になって。


女の子からはモテっぱなしだっただろうに。


とにかく


勉強以外の興味はなかったみたいで。



子供のころから


ずうっと


ホクトグループの跡取りと期待されて


本人も


重圧と責任を感じ続けてきたようだった。



キスも


あたしが初めてで。


もちろん


あたしが


『最初』の女だった。



めちゃくちゃ遊び倒して


キャバ嬢までやったあたしとは


本当に真逆の人生を歩んできた人だった。




苦しいほどのキスをして。


少し乱暴なくらいに彼は身体を貪ってきた。




また明日から


遠く離れて。



今度いつ会えるかわからない。



4つも年下の彼は


ずいぶん逞しくなったけど



やっぱり


カワイイ。



いつも大人っぽい顔で


社会人と同じように


立派に仕事して。



だけど


こうして自分の身体を求めてくる時は


まだ22歳の大学生で。



ずっと


真太郎を


見守っていきたい。


あたしは。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る