第4話 出会い(1)

彼と一緒に


仕事ができることが


幸せ。




ゆうこは


他に何も望むことなく


毎日を過ごしていた。




そんなある日。



「あ、白川さん。」


秘書課の課長に呼ばれた。



「ハイ、」



「今日、NY支社から高原さんて人がここに来るから。 仕事で。 たぶん、昼過ぎにはこれると思うけど。 1週間ほどこっちにいることになるから。」



「高原さん、て方ですか?」



「前に企画部にいた人でね。 よろしく、」


そう言うだけ言って、忙しそうに部屋を出てしまった。



ゆうこは特に深く考えることもなく、



お昼に来るってことは


お食事がまだかもしれないし。


社食が間に合わなかったら、ランチがやってるところもチェックしておいてあげなくちゃ。



と、ノートを取り出して調べたりしていた。






昼休み


ゆうこは仕事をしながら、その人を待っていた。



すると



「・・あっれえ・・誰もいーひん、」



大きなよく通る声がして



振り向くと


派手めなスーツにサングラスの


小柄な女性が立っていた。




「・・あ・・あのう、」



ゆうこが立ち上がる。



その女性はツカツカと彼女に歩み寄った。



そして


サングラスを徐に取り。



「ひょっとして。 白川さん?」




大きな瞳が


あまりに印象的な


美人だった。



「・・は・・はい。」


思わず頷くと、



「あ~、やっぱり! あたし、めっちゃ勘ええねん。」


キョーレツな関西弁。



「・・あの、」


おそるおそる声をかけると



「ああ。 ごめん。 あたし、NY支社の高原 南。」



笑うと白い歯が


キュートで。



「た、高原さん・・ですか?」


ゆうこはその人が特に女性とも男性とも聞いていなかったが、女性とは思わずに驚いた。



「うん。 そう! 1週間ほどこっちいるけど。 よろしくね。」


人懐っこい笑顔を見せた。




「ごめんね~。 食事までつきあわせちゃって。」



「い・・いえ。」



彼女を近くのイタリアンレストランに連れて行く。




とにかく


よくしゃべる。



一方的に。


気づいたら自分はひとことも発していない。



「社長の秘書なんて、ほんま大変やろ~? 新人の女の子がついたって聞いて。 めっちゃびっくりしちゃったもん。 社長、ほんまに仕事には厳しいし。」



「・・はあ、」



「でも。 めっちゃ気に入られてる~ってきいたし。」



「そんな・・ことはないです。 あたしもまだまだ半人前で、」



「あたしなんかほんまにガサツで、ダメ! 秘書の人って偉いなあって思うもん!」



目が


ビー玉みたいに


くるくると動いて。


思わず引き込まれそうで。



気がつくと


つられて


笑顔になっていた。




それが


ゆうこと南の初めての出会いだった。

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