四年に一度は大嫌い。

水谷一志

第1話 四年に一度は大嫌い。

また、この季節がやってきた。

四年に一度の祭典、オリンピック。

しかし、僕はこのオリンピックが大嫌いだ。

いや、正確に言うと、「大嫌いになってしまった。」

なぜなら、僕がいくら頑張っても、オリンピックにはもう出られないのだから。


『えっ、除外…?』

その瞬間、僕の競技がオリンピック種目から除外された瞬間、僕は打ちひしがれた。

僕は、あの華やかなオリンピックに出場するために、頑張ってきたのに。

その夢は、運営によって完全に打ち砕かれた。


ちなみに僕は、足が遅い。

これは今でも僕のコンプレックスだ。

しかし、僕はそんな、足が遅くても大丈夫なポジションを自分で見つける。

そう、それは僕が輝ける場所。

人には向き不向きがあるが、このポジションは僕に向いている。


そしてこの競技では、指先の感覚がとても大事だ。

またそのせいで腱鞘炎(けんしょうえん)になる人もいるので注意が必要だ。

あと、この競技では道具の手入れもマメにしないといけない。


また、最近では僕のポジションをいわゆる分業制にして、最初から最後までを一人でやらないこともあるらしい。

―でもこれは僕のポリシーかもしれないが、僕は一人で最後までやりきりたい。

他の人に、このポジションを任せたくはない。

まあ、時代に逆行しているのかもしれないが。


あと、僕はどちらかというと研究熱心だ。

例えばであるが、陸上選手はどのようにトレーニングし、どのように筋肉をつけているか。

―僕は陸上競技は直接やらないが、そういったことを研究するだけでも勉強になる。


そうして僕は頑張り、プロになった。

今では僕は年に一億円は稼げるようになった。

周りから僕は、「よく頑張ってるね!すごい!」と称賛される。

そして有名になった僕はこう解説の人に言われる。

「これは…、まさに『芸術』です!」―と。


しかし僕の心は晴れない。

僕はいくら頑張っても、もうオリンピックには出られない。

それは、僕の競技がオリンピックから除外されたから。

―もしかして、僕がプロになったからオリンピックには出られない?

―僕がアマチュアだったら、オリンピックには出られた?


…それも過去の話。

何せ、競技そのものが除外されてしまったのだから。


しかし、ここで朗報が入る。

何と、いくつかの競技がオリンピックでまた行われることになったのだ。

―僕の競技は復活する?もしかして?

僕は期待を胸にふくらませながら、その一報を待った。


「オリンピック競技に復活するのは―、

【野球、ソフトボール】です!」


何だ、野球、ソフトボールか…。


えっ?


僕は【野球のピッチャー】じゃないかって?


全然違いますね…。


僕は例えば、陸上選手などアスリートを描く、【画家】ですよ。


だから「まさに【芸術】」って言ったでしょ?


PS 1912年ストックホルムオリンピックから1948年ロンドンオリンピックまで行われていた、芸術競技。

 何か昔ながらのオリンピックという感じがします…。笑

あと、この人は長生きですね!笑  (終)

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