四年に一度は大嫌い。
水谷一志
第1話 四年に一度は大嫌い。
一
また、この季節がやってきた。
四年に一度の祭典、オリンピック。
しかし、僕はこのオリンピックが大嫌いだ。
いや、正確に言うと、「大嫌いになってしまった。」
なぜなら、僕がいくら頑張っても、オリンピックにはもう出られないのだから。
二
『えっ、除外…?』
その瞬間、僕の競技がオリンピック種目から除外された瞬間、僕は打ちひしがれた。
僕は、あの華やかなオリンピックに出場するために、頑張ってきたのに。
その夢は、運営によって完全に打ち砕かれた。
三
ちなみに僕は、足が遅い。
これは今でも僕のコンプレックスだ。
しかし、僕はそんな、足が遅くても大丈夫なポジションを自分で見つける。
そう、それは僕が輝ける場所。
人には向き不向きがあるが、このポジションは僕に向いている。
四
そしてこの競技では、指先の感覚がとても大事だ。
またそのせいで腱鞘炎(けんしょうえん)になる人もいるので注意が必要だ。
あと、この競技では道具の手入れもマメにしないといけない。
五
また、最近では僕のポジションをいわゆる分業制にして、最初から最後までを一人でやらないこともあるらしい。
―でもこれは僕のポリシーかもしれないが、僕は一人で最後までやりきりたい。
他の人に、このポジションを任せたくはない。
まあ、時代に逆行しているのかもしれないが。
六
あと、僕はどちらかというと研究熱心だ。
例えばであるが、陸上選手はどのようにトレーニングし、どのように筋肉をつけているか。
―僕は陸上競技は直接やらないが、そういったことを研究するだけでも勉強になる。
七
そうして僕は頑張り、プロになった。
今では僕は年に一億円は稼げるようになった。
周りから僕は、「よく頑張ってるね!すごい!」と称賛される。
そして有名になった僕はこう解説の人に言われる。
「これは…、まさに『芸術』です!」―と。
八
しかし僕の心は晴れない。
僕はいくら頑張っても、もうオリンピックには出られない。
それは、僕の競技がオリンピックから除外されたから。
―もしかして、僕がプロになったからオリンピックには出られない?
―僕がアマチュアだったら、オリンピックには出られた?
…それも過去の話。
何せ、競技そのものが除外されてしまったのだから。
九
しかし、ここで朗報が入る。
何と、いくつかの競技がオリンピックでまた行われることになったのだ。
―僕の競技は復活する?もしかして?
僕は期待を胸にふくらませながら、その一報を待った。
十
「オリンピック競技に復活するのは―、
【野球、ソフトボール】です!」
何だ、野球、ソフトボールか…。
えっ?
僕は【野球のピッチャー】じゃないかって?
全然違いますね…。
僕は例えば、陸上選手などアスリートを描く、【画家】ですよ。
だから「まさに【芸術】」って言ったでしょ?
PS 1912年ストックホルムオリンピックから1948年ロンドンオリンピックまで行われていた、芸術競技。
何か昔ながらのオリンピックという感じがします…。笑
あと、この人は長生きですね!笑 (終)
四年に一度は大嫌い。 水谷一志 @baker_km
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