あるスポーツの大会。

山岡咲美

あるスポーツの大会。

 「みんなは知っているかい?4年に一度開かれるあの華々しいスポーツの大会の事を、僕はもちろん知っているよなんせ大会の実況だからね」


「そう!うるう年戦争だ!」


「ハローこんにちは、実況のマイク・ミノルです、そして」


「なんでわたくしがこんなのの解説を…」


「あの世津乃せつのさん、世津乃女史お願いします」


「はあ…解説の世津乃メイですわ」


「今日のは天気予報ではスコールとされていたんですが、晴れましたね」


「ええ、今回の開催地が熱帯雨林で沼地も在りますからコンディションも良くジャムの心配も減ると思いますわ」


「ジャムってパンに付ける…」


「いえ、銃が作動不良を起こすあれですわ」


「ですよねー」


モニター越しの実況は軽い感じでスタートした。


***


「アルファからチャーリー聞こえる?」


「こちらチャーリー聞こえてるよ、アイ」


「本名やめてって言ってるでしょチャーリー!」


「でもチャーリー本名だよ」


「本名もフォネティックコードも同じなんだから仕方ないでしょでしょ」


(だからコールサインに頭文字使うの辞めようって言ったのに)


***


「どうやら日本ペアはコールサインでもめてるようですよ、世津乃女史どうですか?」


「なに考えてるのかしら、わたくしには日本チームの心持ちが分かりかねますわ」


「まあまあ、リラックスしてる証拠ですよ、良い感じゃ無いですか?」


(何故リラックス出来るのかしらこの大会で…)


***


「どう?そちら側は」


「日本チームは2人共スナイパーだろ?コッチはアサルトライフルにグレネードだ、普通にやれば負ける事なんて無いぜ」


「ええ、でもあのペアはバランス悪いその組み合わせで決勝まで来てるの、脅威だと思うべきよ」


「でもよ、スナイパーは位置を突き止めればいいだけだ」


「それが問題なのよ」


「確か準決勝は泥の中から狙撃されたらしいな」


「ええ、私達は大会期間は拘束されてて相手の情報は入らないけど…」


「先の戦闘で2人共に泥まみれだったからな、服だけならともかく頭のてっぺんまでとなると潜ったと解る」


「それだけ意表を付くって事よ警注けいちゅうしなさい」


(フフ、でも私達はスナイパーには負けないわ)


某国チームの女がハンドサインを送る。


***


「どうしたんでしょう、某国チームの動きに変化がありましたよ世津乃女史」


「ええ、何かに気づいた動きをしています、なにかしら?」


***


トマレ、テキ、キノウエ、サンジホウコウ


(私達は負けない、実況の映像からスパイがゴーグルに情報をよこすんだから…)


「何か見えたわ木の上よ」


「木の上だって?た嘘だろ、あいつらサルかなんかか?」


「スノーモンキー、日本には居るでしょ?それよ」


「ああ、温泉入るサルねサル」


「気をつけなさい、あんまりサルサル言ってると差別発言でペナルティー食らうわよ、フフ」


某国チームの2人は情報を知ってるのを隠す為軽口をたく。


チャーリー、キノウシロ、カクレル


「位置を確認したやっぱり木の上よ、枝が揺れてるわ」


(こっちの動きに気づいて慌てたわね、スナイパー失格よチャーリー)


「オレも確認出来た、迷彩網で巣を張ってやがる、回り込んで先行する」


「解ったわ、私はこの位置てアルファを警戒しつつチャーリーの監視を続ける」


(フフ、アルファの位置もちゃんと掴んでいるのだから簡単ね、情報を掴む者が戦争に勝つのよ、日本人は騙され易いって本当だわ)


それが2人の最後の会話だった、2人は全く違う方向から頭を同時に撃たれた。


***


「意外とあっけなく終わりましたね世津乃女史」


「ええ、日本チーム、チャーリーのワイヤーを使って枝を揺らすフェイクに某国チームがいともあっさり掛かった印象ですわ」


「さあ、これにより金メダルは日本に、そのほかの国の選手には二階級特進の栄誉と死亡慰霊金および遺族年金が贈られます!」


(本当に頭のおかしな大会ですわ…)


「では、解説は世津乃メイ女史、実況はマイク・ミノルでお送りしました、また4年後お会いしましょうー!!」


***


ミッションコンプリート、スナイパースコープ、プログラム、ショウキョ…



-NO DATA-



「チャーリー帰ったら温泉行こっか?」


「スノーモンキーみたいにかい?」



END

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あるスポーツの大会。 山岡咲美 @sakumi

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