四年に一度しか会えない君へ

卯月あと

四年に一度しか会えない君へ

「ねぇ、ウル。会いたいよ…。」


四年に一度しか会えないパートナーのウルを思い、耽っていると母からの小言が飛んできた。


「サラ~、洗濯終わったの?早く終わらせなさいよ!」


「わかってるよ。お母さん。」


「どうせ、ウルくんのことでも考えてたんでしょ。桜が咲くにはまだ早いんだから、気長に待ちなさい。」


「わかってるよ。裏山の桜だってまだ蕾なの見てるし(ここまでが小声)。さて、残りの洗濯終わらせよう。」


真っ白になった汚れ一つない洗濯ものが風に靡く姿は、一仕事を終えた達成感を味わわせてくれる。


「気候が春になってきたからかな。風も暖かくなって気持ちの良い日になってきたなぁ。早く桜咲かないかなぁ。桜を魔法で咲かせてもいいけど、前回それしたらウルに怒られたし…。」




それは、ウルに会える閏年が、今年で四回目となるのだが、三回目、今年から言えば四年前、私は今と同じくウルに会いたくて仕方がなかった。

その時に私が取った行動がこの国の季節を矛盾させることに繋がる可能性があることだったのに、バカな私はそれをしてしまったのだ。

そう、自らが持つ魔法の力で私の住む国にある桜の約半数を開花させた。

膨大な力を使った私は盛大に倒れた。

目が覚めるとウルがいたため、大喜びした私に雷が落ちた。


「サラ!お前はアホか!!あぁ、アホではなくバカだったな!」


「ちょっ、ウル!会って早々アホとかバカとか何なの?」


「バカにバカって言って何が悪い。この国の半数近くの開花前の桜を無理矢理開花させることは、この国の季節を矛盾させる絶対にやってはいけないことなんだよ!今回は1週間くらいのズレにしかならなかったけど、これが1ヶ月とかそれ以上あるとその生じたズレの分だけそれが当たり前になるんだよ!魔法科学校行ってたときに習っただろうが!理に関わる行為に魔法を使うことは罪に問われることがあるって!」


「そうだけど…。てか!桜が最も開花する日にしかウルが帰ってこないのが悪いんじゃん!ねぇ、四年に一度しか帰って来れない仕事って何?そんなに仕事が好きなわけ?」


このときの私は、ウルに会いたい気持ちが強すぎて、寂しい気持ちが強すぎて、ウルの気持ちなんて考えられる余裕なんてなかった。

私とウルが言い合いをしていると母から仲裁が入る。


「サラ、ウルくんもだけど、せっかく今日、四年に一度会えたのに喧嘩に時間使っていいの?」


母からの一言に冷静さを取り戻した私たち。


「サラ、言い過ぎたごめん。」


「ううん、私もごめん。仕事お疲れ様。おかえりなさい。」


「ただいま。」


「ウルくん、今度うちの娘を泣かせたら許さないからね。さて、喧嘩が終わったなら昼食にしましょ。」


この後、食事を食べながら会えなかった時間に二人の間で生じた誤解を解いた。




これが、前回ウルに会えた時の出来事。

本当なら今年も魔法で桜を咲かせてみたい気もするが、また大切なウルとの時間が減るのはいただけないだけでなく、喧嘩をしたいわけではない。

桜が最も開花する日を心待ちに、今日も今日とて君を思う。



「今年はいつ帰ってくるのかなぁ。」

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