05.10 「あのね、お母さん、これには色々と訳があってね」
「で、何で僕は“シズカちゃん”って呼ばれてたのかなあ」
「えっと……」
一方の
「
「うーん、確かにね」
知った所で今更どうにもならないじゃない。それに、嫌な予感がするんだもん。そもそも、なんでうちの高校に転校してきたんだろう。
「あの……、私の所為、なんです」
か細い声で
「訊かせてもらおうじゃないか」
「えっと、入学して直ぐに告白されて……、好きな人がいるからって断ったんですけど……、誰が好きか言えって……。それで……、
「んー、つまりはそいつが逆恨みして僕にあんなことを?」
「こめんなさい……」
「それは
「そうだね。でも何で僕の名前を?」
もう、余計なこと訊かなくていいのに。適当に言ってみただけとか、たまたま通りかかったからとか、あとは、うーん……
「本当に好きでしたので……」
そう、本当に好き……、か。はあ、やっぱりな。それで態々転校してきちゃったわけかぁ。
「あらあら、聞き捨てなりませんわね。過去形でおっしゃてますけど、転校までしてきたということは現在進行形では無いのかしら?」
「それは……、はい。その通りです……」
「えーっと、どう反応していいのか悩ましいんだけど……、ほら、僕って男だったんだけど、知ってるんだよね」
「はい」
「ってことはさ――」
「私も女の子だったので……」
だよね、やっぱり。
「そう、なんだ。でも、過去がどう有れ男には興味無いかな……」
「あら、
「
「私は愛人でも構いませんけど?」
「ええっ?」
「私も……、愛人でも……」
「愛……人……」
もう、鼻の下伸ばしちゃって。
「
「う、うん。ダメだよ、そういうの」
「あら、そうかしら。今の反応からするとあとひと押しのように見えましたけど? 頑張りましょうね、
「は、はい。私、頑張って治療受けますね。そしたら……」
もう、何でそうなるのよ。治療しようがしまいが、駄目なんだから。
「
「はい。ですから私は愛人で構わないと」
「私も……」
「愛人でもダメなんだってば」
「まあ、怖い。見つからないようにしましょうね、
「はいっ!」
もうっ。
私も、お風呂ぐらい入っておいたほうがいいのかな、
お母さんたち遅くなるって言ってたから、誘ってみようかな、今夜。
◇◇◇
「ねえ、
「入る? 何処に?」
「お風呂……」
「いいの?」
「うん。今ならお母さんたちも居ないし」
とは言ったものの、緊張するなぁ。
「
「無理なんかしてないっ。さあ、入るわよ。
「う、うん」
もう此処まで来たら今更引けない。そうよ、
「あっ」
躊躇していると、
「
「
「うん……。ねえ、
「……」
「して?」
どうしよう、変な気分になってきちゃう。
女の子同士なのに……
「
じっと見つめてくる
「ただいまー」
えっ? 何で? お母さん帰ってきちゃった。今日は遅くなるんじゃ……
「
帰宅したらうがいと手洗いだよね……
どうしよう、こっちに来ちゃう。見つかっちゃうよ……
「居ないのかな? 入るわよ」
ガチャッ
洗面所兼脱衣所のドアが開き、お母さんが現れる。その表情は……、ニヤニヤが止まらないみたいだ。下着姿で抱き合ってるんだもんね、私達……
「……あのね、お母さん、これには色々と訳があってね。そういうのじゃ無いというか……」
「別にいいわよ、女の子同士なんだから。でも、
「だから、そういうのじゃ無いって……」
「はいはい」
流石にそのままお風呂に入るわけにもいかず、リビングで夕食を囲んでるんだけど……
ううっ、気まずい。お母さんがニヤニヤしながらこっち見てる。
「な、何?」
「べっつに?」
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