性徴期性反転症候群の悪戯 - ある義兄妹の恋模様

04.15 「そっか。我慢しなくていいからね？」

　「（我慢しなくて……いいよ、凜愛（りあ）……姫（ら））」

　「えっ、透（とおる）？」

　「……」

　寝ちゃったの？

　でも、また私のこと凜愛姫（りあら）って。大晦日の夜もそうだったけど、記憶が戻りつつあるのかな。

　だったらいいんだけど……

　うん、もうしそうなら恥ずかしいけどこんなの平気……かな……

　恥ずかしいけど……

　「透（とおる）、寝ちゃったんだよね」

　気付かれなかったら大丈夫だよね。そういうことしても、気づかれなかったら……

　暗くてよく見えないけど、透（とおる）は可愛い寝息を立てていて、すぐそこにに唇が、透（とおる）の唇があるんだよね。

　そっと私のを重ねても……

　ゆっくりと透（とおる）の顔に自分の顔を近づける。

　「ううん、凜愛姫（りあら）」

　「透（とおる）……」

　呼吸に合わせて上下する透（とおる）の胸。鼻と鼻が触れ合い、あと少し、ほんの数ミリで唇も触れ合う所まで近づいてるんだろう。

　このまま唇を重ねて……

　あと少し、ほんの少しなのに……

　「やっぱりダメだ。こういうのはちゃんとお互い意識してしないと。初めてなんだから、こんな風にしちゃうのはダメだよね」

　透（とおる）、今度こそ思い出してくれたんだよね。

　明日起きたら凜愛姫（りあら）って呼んでくれるんだよね。期待していいんだよね？

　そしたら、しようね、透（とおる）。

　　　　◇◇◇

　「おはよう、伊織（いおり）」

　「透（とおる）……」

　伊織（いおり）……か。

　先に起きた透（とおる）が隣で私の顔を覗き込んでいる。思い出せたんじゃないんだ、私のこと。

　事件の前と同じ顔なのにな。ダメなんだ……

　「昨日はごめんね。睡魔に勝てなかったみたい」

　「うん。疲れてたよね」

　「そんな残念そうな顔しないで」

　残念そうなって、そんな顔してるんだ、私。そうだよね、実際、残念だもん。ちょっと期待してたのにな。今度こそ思い出してくれたんじゃないかって。寝てる時には凜愛姫（りあら）って呼んでくれるのに、何で……

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　そうじゃないんだって。私が残念に思ってるのはそっちの事じゃなくて――

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　「そっか。我慢しなくていいからね？」

　もう、透（とおる）がどんどんエッチになっていく。そういうのはちゃんと思い出してから、じゃなくて、この体じゃなくてちゃんと元に戻ってから……

　キスだったら今すぐにでもいいんだけど……

　「あら、何を我慢するのかしら？」

　大きな声出してたからお母さんに聞こえちゃってたんだ。もう、透（とおる）の所為なんだから。

　「えっとー、三大欲求の一つ？」

　「お母さん、透（とおる）まで変な事言わないでっ」

　だいたいから、しようって言ってるの透（とおる）なんだから。

　「透（とおる）ちゃんが我慢しなくていいって言ってくれてるんだから、甘えさせてもらったら？」

　「だって、透（とおる）は記憶が……」

　「あら、記憶さえ戻ったら良いみたいね？」

　「それは……」

　記憶だけじゃなくて体も戻ってからじゃないと……、じゃなくて――

　「もう、朝からそんなことばっかり」

　「あら、朝だからじゃない。睡眠欲の話よね？　透（とおる）ちゃん」

　「何だと思ったの？　伊織（いおり）」

　「くっ……、もういい」

　二人して私のことからかって。さっきの流れからして睡眠欲なわけないじゃない。もう。

　でも、二人に怒っていたらだいぶ治まってきたかな。このまま朝食会場に向かおうかな。

　「待ってよ、伊織（いおり）」

　「浴衣、はだけてるから。ちゃんと直してから来てね」