04.12 「健康な男の子だからね。そうなっちゃうのは仕方ないのかな?」

 「おやすみ、凜愛りあ……

 「えっ、とおる?」

 「……」


 今、私のこと凜愛姫りあらって。記憶が戻ったの?


 「ねえ、とおる、起きてよ」

 「う〜ん」

 「思い出したの? 私のこと」

 「凜愛姫りあら……」

 「うん、凜愛姫りあらだよ、私、凜愛姫りあらだよ」

 「大……好き……だ……」

 「私も、私もとおるのこと大好き」

 「……」

 「とおる?」


 寝ちゃったのか。


    ◇◇◇


 「伊織いおり

 「……」

 「伊織いおり

 「とおる……、大……好き……」

 「おはよう、伊織いおり


 伊織いおり……


 「伊織いおり?」

 「うん……、おはよう、とおる

 「でさあ、お姉ちゃんが大好きなのは解るんだけどね、こういうのは良くないかなって思うんだけど」

 「こういうの?」


 柔らかい……


 「ごめん、私、いつの間にか……」


 慌ててとおるの胸から手をどける。


 【R18警告により削除】

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 「ううっ、ほんとゴメン、わざとじゃなくて、その……」

 「健康な男の子だからね。そうなっちゃうのは仕方ないのかな?」

 「男の子……」

 「ん?」

 「ううん、ほんとゴメンね」


 思い出してくれたのかと思ったのに。そうじゃ無かったんだ……


 「うん。許してあげる。だからそんなに暗い顔しないのっ」

 「うん」


 焦っても仕方ないよね。


 「そういえば、どんな夢見た? お姉ちゃん出てきた?」

 「お、覚えてないかな」


 い、言えないよ、あの時みたいにとおるのお尻に……、なんて……


 「そっか。私の所には伊織いおりが出てきたけどね」

 「私が?」

 「そう。でも、エプロンドレス着て、プラチナブロンドのウィッグ付けてたかな。あと青いカラコンも。学園祭でそんな格好したんだっけ、確か。よっぽど印象に残ってたんだね、伊織いおりの女装姿。すごーく可愛かったよ?」

 「むぎゅ……ひはひほ、ほほふいたいよ、とおる

 「うーん、もっと女の子ぽかったかなあ、顔も」


 それ、出会った時の私だよ。カラコン着けたのはあの時だけだもん……


 「よし、じいちゃんにお年玉もらいに行こうか」

 「えっ、貰う気でいるの? とおる、いっぱい稼いでるんだから、寧ろあげる方なんじゃないの?」

 「いいの、いいの。じいちゃんだって楽しみにしてるんだから。ほら、早くぅ」

 「う、うん」


 既に明かりが灯っている居間へと向かう。


 「「明けましておめでとうございます」」

 「はい、おめでとう」


 おじいちゃんがお茶を入れてくれる。

 元旦の朝は家長が湯を沸かし、お茶を入れるというこれまた謎のしきたりによるものらしい。おじいちゃんは朝からお酒を飲んでるみたいなんだけどね。


 「婆さん、お年玉を」

 「はい、とおる伊織いおりもどうぞ」

 「ありがとう、じいちゃん、ばあちゃん」

 「ありがとうございます」


 とおるが言ってた通り、笑顔で渡してくれる。


 「じゃあ、これは私達からじいちゃんとばあちゃんに」


 私達って……


 「孫からお年玉貰えるようになるとはな。長生きしたもんだな、ばあさん」

 「そうだね。ありがとね、二人共」

 「それは――」

 「中身は商品券だよ。お金だと使わないからね、じいちゃんもばあちゃんも」


 ウィンクしてるけど、言ってくれれば私だって少しは出せたのに……

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