04.13 「うん。もう少しだけ」
見渡す限りの銀世界。
今日は健保主催のスノボ講習会に来てるんだけど、
本音を言えば、一緒に居たいだけなんだけどね。
講習内容は私には物足りないんだけど、心配してた通り
「君は上級者コースでも大丈夫でしょう」
ちょっと本気を出しすぎたかも。この人しつこいんだもん。だからこそ、ここを離れるわけにはいかない。
「いえ、私はここで……」
「おーい、この人、上級者コースに移動させてー」
「えっ、ちょっと」
「上級者の人たちこっちに来てるから、ちょっとここで待ってて」
「いや、だから私は――」
「折角お金払って来てるんだから、上達して帰らないとね」
「でも――」
「はーい、初心者の皆さんはこっちねー」
有無を言わさず私以外を引き連れて移動を始めるコーチのおじさん。
「
「大丈夫。ちゃんと対策は考えたから。折角だから、
「
「おおっと」
例のオジサンがわざとらしく転び、
「ねっ。大丈夫だから行ってきて」
「うん。午後は一緒に滑ろうね」
「それまでに上達しとかないと♪」
◇◇◇
昼食は講習会で貰った割引券で簡単に済ませ、漸く
「きゃあ」
えっと、全然滑れるようになってないんだけど……
午前中の講習会で
なーんて思ってた矢先……
「うわー、どいて、どいて、どいてー」
ドドッ
「いたたたたた。もう、どいてって言った、の……に……」
制御不能となった女の子が
「可愛い……」
「どいてって言われても、初めてなんだから無理だよ。っていうか、そろそろ離れてくれないかなぁ」
「あっ、ごめんなさい」
「大丈夫、
「うん。ちょっと痛かったけど」
「かっこいい……」
「えっと、手、離してもらえるかな」
「あっ、ごめんなさい」
ちょっとハプニングがあったけど、気を取り直して
「きゃーーーーー」
ドドドドッ
「もう、何で私のところばっかり」
「済みません、止まれなくて……、顔ちっちゃいですね」
いいから
「うわ〜♪ フゲッ」
ドサドサドサ
「鬱陶しいのよね、オジザン」
午前中の講習会で
もう一度
「じゃあ、私の手につかまって」
「うん。ゆっくりね、
スケートの時とは逆だね。って、ちょっと――
「ダメだって、そんなに力入れたら私まで――」
「うわあっ」
ドサッ
「大丈夫、
「まあね」
「今どくね。……よっと。あれ?」
「焦らなくてもいいよ」
もう、このままこうしてようか、
やっぱ無理だよ。大好きで、大好きで……私、どうしようもないよ。
「ちょっ、
「うん。もう少しだけ」
もう少しだけこうしてたい。
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