第18話 涙と決意

凛の魔法にローズガーデンという魔法があったが、あれは血液を吸い取る。そして今度は魔力を吸い取るという事か…


「この出来損ないがぁぁああ!!」


いくら魔力を集中させようとしても魔法陣すら出てこない。完全に魔力が制御出来ていないらしい。

この魔法が第四位程度の魔力で行使できるという話を後から聞くのだが、やはり凛の魔法に対するセンスは圧倒的だ。


何度も魔法を行使しようとしているムンストの首元から徐々に体外へと伸びてくる蕾。魔力を吸い取って成長しているのだ。小さかった蕾はどんどんと大きくなり、鮮やかな青色の花弁を開く。

真っ青な椿つばきの花。


「クソっ!!クソォォォオ!」


それに気が付かないのか自分の魔力を注ぎ続けるムンスト。この魔法の恐ろしい所は、種が成長を始めると体内に根を伸ばし簡単には取り除けなくなり、尚且つ、咲いた花を無理矢理引きちぎったりするとその瞬間に魔力を全て体外へと引きずり出すという所にある。


魔力に自信を持っていたムンストへの最大限の侮辱だろう。


そしてこの魔法は体内の魔力を全て奪い取る事で完結する。


「知っていますか?」


「何をだ!!」


「椿の花はんですよ。」


ブツン…そんな音が聞こえた気がした。凛の言葉と同時に美しく咲いた真っ青な椿の花が首からポトリと落ちる。

それと同時にムンストの体は操り人形の糸が切れたかの様にガクリと力を失いその場にペタリと座り込み微動だにしない。あれだけ五月蝿うるさかった口も動かない。完全に体内から魔力が無くなったらしい。


「悔しいですか?死にたくないですか?」


「……」


「でも、ペルちゃんや皆はもっと悔しくて死にたくなかったんですよ。」


「……」


凛はペルちゃんがいた所にあった木彫りの人形を取り出す。

小さく不格好な人形は赤く染まっている。


「あなたに瞬間的な死はあまりにも贅沢です。ゆっくりと命が消えるのを感じて下さい。」


凛の手元が光ったと思ったら、木彫りの人形が形を変えて小さな棘となる。

それを凛が胸元に持っていくと、ツツツと棘がムンストの心臓の上に動き、ゆっくりと刺さる。


「……あ…………が………」


言葉にならず、動く事も出来ないムンストは、自分の心臓へと向かいゆっくりと刺さっていく小さく真っ赤な棘を眺める事しか出来ない。


凛の所業を非道だと、鬼畜だとののしる人はいるかもしれない。確かに命をもてあそぶ様に見えるかもしれない。

だが、少なくとも俺はその権利が凛にはあると思っている。ムンストを殺す時でさえ死んだ村の人達を思い涙する凛には。


真っ赤な棘が心臓へと到達し、ゆっくりと死へと到達したムンストの目から光が消える。


ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー



「はぁ。やっと終わったか。」


「なんだかんだ久しぶりに結構動いたぜぇ!」


ムンスト以外の連中も魔力を底上げして身体強化していたらしいが、敵では無かったらしい。まぁキーカの様な素で身体強化してる様な人がこれだけ集まれば相手には絶望しか辿れる道は残されていなかったのだろうが…


「お前はもう少し普段から動け。」


「あ?!やんのかルドグ?!」


「うるさい。」


「あ、あの…やめませんか…?」


「うるさいとはなんだ!今日こそ決着を付けてやるぜ!」


「これだから馬鹿は。」


「あ、あのー……」


「誰が馬鹿だゴラァ!」


バキッ!!


ルドグとゴドルトースがキーカに殴られてトリプルアクセルを決めた。着地は失敗したが……死んでないよな?

というか今日一番の大怪我じゃないか?


「うるせぇ!!殴るぞ!!」


うん。キーカさん。殴ってから言っても遅いです。


「それより真琴。卵は?」


「それなら大丈夫だ。プリネラが最初にちゃんと確保してある。」


「プリネラもやるようになったじゃねぇか!」


「く、来るな!」


「なんだよ連れねぇなぁ。」


「俺達は卵をフロストドラゴンの所に返してくる。キーカ達はどうする?」


「私達は街に戻って詳しい説明をしなきゃならねぇ。急いでたから無理矢理こいつらを引っ張り出してきたからな。

詳しい話なんかは全部しておくからゆっくり戻ってくると良いさ。」


「あぁ。ありがとな。」


「気にすんな。

オラァ!いつまで寝てんだ!行くぞ!」


ルドグとゴドルトースの頭を鷲掴みにしてズルズルと引きずって行くキーカ。自分の倍以上もあるゴドルトースを軽そうに引きずって行く姿は忘れられそうに無いな。


「あの!」


「ん?」


「落ち着いたらこの剣のお礼とか諸々ありますので挨拶に伺ってもよろしいですか?」


「気にしなくて良いが…キーカの道場に泊まらせて貰ってるから来てくれれば良いよ。」


「ありがとうございます!それでは!」


テュカは真っ直ぐで真面目なタイプだ。恐らく明日にでも尋ねてくるだろう。何やら健にも話し掛けていたみたいだが…今はフロストドラゴンの元に卵を持っていこう。


ミャルチ村へと向かうとソワソワしたフロストドラゴンの姿が遠くからでも見える。

ドラゴンという生き物は基本的に親子の関係をかなり大切にするらしい。母親は子を何より大切にして育てる。特にドラゴンの子供は卵でいる時間がかなり長く数年間、長いと十年以上も温め続ける必要があり、その間に外敵から守る為に母親が付きっきりらしい。

基本的に腹の下に入れて眠り続けるらしいが、どうやったのかムンスト達がその卵を抜き取ったという事だ。


「おぉ!取り返してくれたか!」


大き過ぎて前が見えないくらいデカい卵だが、フロストドラゴンからしてみれば片手で持てる大きさだ。それを慎重に受け取るとやっとソワソワと怒りが収まったらしい。


フロストドラゴンというドラゴンは卵でいる時間が他のドラゴンより圧倒的に長く、孵化ふかまでに数百年掛かるという。途方も無い数字に感じるが、天災級のドラゴンという生き物は短い寿命の種でも数万年を生きると言われている。長い種では更に長くを生きる。そんな生き物からしてみれば数百年という時間はそれ程長くは無いのだろう。

山の中で数百年を眠り続けていた事で龍人種からも忘れられ昔話となっていたが、今回の件で飛び起きたわけだ。因みに、ドラゴンの父親というのは基本的に子育てには関与しないらしい。このフロストドラゴンの父親となる個体は今どこで何をしているのか、そもそもまだ生きているのかさえ分からないらしい。


「助かった。」


「もう盗られるなよ。心配は要らないだろうがな。」


「僕も定期的に見に行くつもりだから大丈夫だよ。」


「……マコト…と言ったか。」


「なんだ?」


「……いや。我の知る者に雰囲気が少し似ておるかと思ったが…気のせいだな。

それよりこれを受け取るが良い。」


ゴトゴト…


目の前に冷気を放つフロストドラゴンの鱗が数枚落ちてくる。キーカ達を含めて僅かな傷しか付けられなかった代物だ。


「我らドラゴンの鱗は簡単に生え変わる。マコトに扱えるかは分からんが金くらいにはなろう。」


「はは…これだけで国が動くレベルの素材だな。ありがたく貰っておくよ。」


「ではまたな。

近くへ寄ったらまた会いに来い。この子もきっと会いたがるはずだ。」


「約束しよう。」


フロストドラゴンは大切そうに卵を抱えて、また龍脈山へと飛んでいく。アホ程デカい穴が空いていたが、その中にフロストドラゴンが入ると一瞬にして氷が蓋をする。

今更ながら、とんでもない相手と一戦交えていたと思い知る。


「しっかしとんでもねぇ土産を置いていったな。」


「フロストドラゴンの鱗か。」


「ふ、フロストドラゴンの鱗…」


ヴェルトが鱗に触れる。


「痛っ!」


1メートルはあろう鱗をヴェルトが手に取ろうとして直ぐに引っ込める。恐らく冷たいのだろう。ドライアイスの様な物だ。


「持つことも出来ないなんてぇ…いや。待てよ。これからはフロストドラゴンの所に行けるわけだしこれくらいいつでも見れる…じゅる…」


「いるなら何枚か持っていくか?」


「嬉しい申し出だけど辞めておくよ。僕には荷が重過ぎるからね。」


「そうか……」


「星龍の人達も要らないと思うよ。」


「心を読んだだと?!」


「それくらい分かるよ。マコト君は分かりやすいからね。」


「ぐぬぬ……って、なんで要らないんだ?」


「あの人達に素材なんて渡しても使わないし、加工に出してもこれを加工出来る人はこの世には多分居ないよ。」


ヴェルトが鱗を見て言う。

確かに恐ろしい強度と衰える事の無い冷気。加工出来る気がしないな。


「それにこんな物その辺に出したらそれこそ大騒ぎだからね。人前には出せない物を受け取った所で彼らも困ると思うよ。まぁ聞いてみるだけ聞いてみたら良いけどさ。」


「お、おぅ…使い道は後々考えるとして…まずは…」


「…だね。」


俺達の話を聞いているのかいないのか、後ろを向いて村の様子を見ている凛。


「凛。」


「真琴様…」


「皆の墓を作ってやろう。」


「………はい……」


俺達は一人一人村の人達の墓を作った。誰もいなくなってしまった村の一等綺麗な龍脈山を一望出来る場所に。終わった頃には朝日が上り始めていた。


二つの墓に守られるようにして経っている小さな墓の前に膝を着く凛。手には小さな白い花の束を持っている。


「ペルちゃん……」


墓の前にそっと小さな白い花束を添えて目を閉じる凛。

今回の事の発端は俺がムンストの息子を殺した事にある。ムンストの顔が治癒されていなかったのは多分俺への恨みを忘れない為…

因果な話なのかもしれないが、それは俺に返ってくるべき因果であり、決して一人の小さな女の子に返るべき物では無い。


目を閉じそっと涙する凛は守れなかった自分を恨んでいるのだろうか…事の発端となった俺を恨んでいるのだろうか…

自分の無力さとそこまで考えが至らなかった浅慮せんりょをただただ恨むばかりだ…


涙を拭いて立ち上がった凛の顔はまだ少し悲しさを残してはいるが、それでも真っ直ぐに俺の目を見て言った。


「真琴様。」


「…なんだ?」


「ネフリテスの連中は根絶やしにするべきです。」


「それは多分…皆同じ気持ちだ。」


「二度と……二度とこんな事はさせません。

それが多分私に出来る唯一の償いだと思います。」


泣いて俺の後ろに隠れているだけの凛はもう何処にもいなかった。


「俺にもその償いを手伝わせて欲しい。いや…違うな。俺にこそ、その償いは必要なんだ。」


「真琴様はいつも私を守る為に全てを背負ってきました…今回のことだって………」


「俺がやった事だ。凛のせいじゃない。」


「…真琴様はいつも守って下さるのですね。」


「必死なだけさ。」


「……でも…これはからは、私も真琴様を守ってみせます。」


「……あぁ。頼むよ。」


「はい!」


そう言って見せてくれた朝日を浴びる凛の笑顔は、赤くなった涙の跡がかすむほどに強く美しく見えた。


ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー



「おはようございます!!」


「は、早いな…」


「礼を述べるのに遅くなっては失礼ですから!」


「う、うん。」


ヴェルトと別れ、キーカの道場に戻ったが寝れそうには無かった。凛とリーシャが用意してくれた紅茶を飲んで一息着いた頃、キーカとテュカが門を開けて戻ってきた。


「そっちはもう良いのか?」


「あぁ。墓守は頼んできた。」


「そうか……私達も気にかけておくよ。」


「ありがとう。」


「礼を言うのは私達の方だよ。本来であれば我々が守るべき者達だったのだからな。」


「……」


「気に病むなよ。真琴のせいじゃないんだから。」


「あぁ……」


「フロストドラゴンは帰ったのか?」


「帰ったぞ。山も元通り…とまではいかないが、修復されたしな。おっと、そうだった。キーカ達に見せたい物があってな。」


「な、なんだこりゃ…?ヒヤッとするな。」


「フロストドラゴンが鱗を何枚か分けてくれてな。俺達が独占するわけにも行かないからな。」


「これを私達に渡したってどうする事も出来ないんだが?」


「ヴェルトにも言われたよ。」


「なら真琴が使え。私達はそんな物必要ないからな。」


「良いのか?売れば一財産だぞ?」


「私達星龍ってのは金よりこっちだ。」


大剣をポンポンと叩いて見せる。戦闘が好きとはなんともキーカらしい。


「ですね。私はこの子を作ってもらえただけで十分ですから。」


「大切に使ってくれてるみたいだな。」


「テュカは毎日不気味な笑い声を出しながら剣の手入れしてるぞ。」


「き、キーカ様?!」


瞬時に真っ赤になるテュカ。俺の顔をチラチラ見ながら俯く。


「そ、その…凄く美しい剣で…とても気に入っておりますので手入れは欠かした事がありません……」


「恥ずかしがる事じゃ無いだろ?作った俺としては嬉しい限りだよ。

それに健だって毎日フンフン言いながらしなくてもいい手入れまでしてるからな。」


「真琴様に貰った刀の手入れを欠かしたら俺は自分の首を切り落とすっての。」


「カタナ…と言うのですか?」


「テュカは初めて見たんだったか?」


「はい。キーカ様から話には聞いておりましたが…」


「見るか?」


「はい!是非!」


健が腰から刀を鞘ごと抜いてテュカに手渡す。

慣れない手付きで刀を抜くと真っ白な刀身が姿を現す。


「う、美しいですね…」


「名は白真刀はくしんとうだ。」


「白真刀……素晴らしいですね。ありがとうございました。」


「おぅ。」


「見たところ、このカタナという武器は扱いが相当に難しいと思うのですが…?」


「まぁ練習は必要だろうな。」


「やはり素晴らしいです!キーカ様の教えを受ける方がどの様な方がずっと気になっていましたが!

ケン様!改めてお手合わせお願い致します!」


「良いぜ。」


「お?面白いじゃねぇか!酒取ってくる!」


「酒のさかなかよ…」


「飲まねぇのは嘘ってもんだろ!」


テュカが健に話していたのはこの事だったのだろう。道場に移り二人の対戦を見る事にする。

座ってみて思い出すと健の本気の試合って見た事無かったな。


「テュカ!気を抜くなよ!健は私から一合取った男だぞ!」


「キーカ様から?!強いとは思っていましたが、これは最初から全力で行く必要が有りそうですね!」


「くくく。やれやれー!」


「楽しんでるなー。」


「楽しいからな!ほら!マコトも飲め飲め!」


「ちょっ!おいっ!抱き着くな!」


キーカとじゃれ合っているうちに二人の間にピリッとした空気が張り詰める。

二人共身体強化は使っていない。使っていない筈なのだが…


テュカの姿が完全に消える。魔法ではなく単純な身体能力。脚力だけで消えるなんて…


「テュカは私と違ってスピードタイプの戦闘が得意なんだ。だから大剣は合わないんだよ。」


「それなら健も合わないんじゃないのか?」


「いや。あいつは一撃に全てを掛ける戦い方。スピードも速いが最も怖いのはあいつが振るう攻撃の方だ。

スピードで撹乱して手数を出すテュカとは違って、あくまでも必殺の一撃を叩き込むためのスピード。

私に寄った戦い方なんだよ。一撃の重さで言えば私より上かもしれん。」


「特星龍にそこまで言わせるとはなぁ…でもテュカのスピード異常だぞ?」


「まだ健の周りをグルグル回っているだけだ。健も見えてるはずだぞ。」


「嘘だろ…あれ見えてんのかよ…確かに床を蹴る音は聞こえてはいるけどさ…」


「健の戦い方的に最初の一合で勝負が決まるぞ。」


「タイミング教えてくれなきゃ分からんて!」


相変わらず健は動かず、テュカがその周りを回っているだけの様だ。一瞬で決まると言われてしまうとどうしても目が離せなくなる。


「お、来るぞ。」


キーカが酒を飲む手を止める。

健の腰が僅かに下がり、刀を抜く手に力が入る。


「居合………龍月りゅうげつ。」


鯉口を切ったと思ったら健の後ろに背中合わせで止まったテュカ。その後ろから逆手に持った刀を首元に突き付ける健。


「………うん。分かんないね。もう全然見えないね。」


「くっくっく!テュカ!私以外にも勝てない奴が現れたなぁ!」


「参りました。」


「紙一重だったな。」


「待て待て!俺にも教えてくれよ!何がどうなったんだよ?!」


「テュカが健に飛び込んで行ったんだ。それに対して健が刀を抜いてカウンターを合わせようとした。だが、テュカがそれを見切りカウンターにカウンターを合わせようと剣を振ったんだ。

そしてそのカウンターのカウンターに対して健がカウンターを返して勝負が決まったんだ。」


「う、うわー…訳わかんなくなる。」


「健が使った龍月は私の教えた星龍剣術の一つ龍流りゅうりゅうと、独自に身に付けていた朧月を合わせたものだ。

龍流は相手の攻撃に合わせて持ち手を返してカウンターを放つ柔の技。それを応用したんだな。」


「えっと…健が刀を抜いてテュカへ攻撃、その攻撃に合わせてテュカが健の刀をいなそうとしたけど、それを持ち手を変える事で躱して一本取った。って事か…」


「その通りだ!流石マコトだなぁ!」


「ひっつくなっての!」


「お見事でした。最後の瞬間カタナが目の前で消えた様に見えましたよ。」


「テュカだって速すぎて目で追いきれなくなる所だったぜ?」


「テュカは正直過ぎるんだ!健みたいに狡い攻撃が無いから読まれやすいんだよ!」


「狡いって…賢いと言ってくれ。」


「あ、それはありませんね。」


「無いな。」


「お前らって俺に対する優しさどこかで落としてきたのか?」


「逆に聞きますが優しくしてもらえる要素がどこかにあるんですか?」


「真面目な顔してサラッと酷いこと言わないで…」


「私は優しくしてやってるだろ?ほらほら次は私の番だ!」


「キーカ様と剣を交えることが出来るのですか?!」


「普段は禁止されてるが、今は誰も見てないからな!」


「お、お願いします!!」


「さて。俺は…」


「コラコラ健。勝ち逃げなんてダメだろ?」


「やめろー!あ!プリネラ逃げるな!」


「さぁさぁ楽しもうぜぇ!」


「ぎゃぁぁああ!!」


その後、幸せそうに気絶するテュカと、この世の終わりの様な顔をして気絶する健を見届ける事になった。


ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー



「準備出来たな。」


「なぁマコトー。もうちょい居てくれよー。」


「特星龍がそんな情けない声出すなっての。」


「だってよー。」


「俺達も先を急がなきゃならないからな。」


「……また来てくれよ?」


「もちろん近くに来たら必ず顔を出すよ。」


「それなら良し!!」


翌日、俺達は次の目的地に向かう事にした。キーカが最後まで駄々だだねていたが…

テュカが星龍を代表して見送りに来てくれたし気持ち良く出られそうだ。


「じゃあなぁ!」


「お気を付けて!」


手を振るキーカとテュカに見送られ、ズァンリを後にする。


凛は一度だけミャルチ村の方角を見て、振り返る。

その目に涙は無く、強い決意を感じさせる瞳をしていた。

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