第16話 フロストドラゴン

どれだけの時間、そこに立っていただろうか。

凛が泣き止み、放心するまで、俺は見ている事しか出来なかった。


凛に近付き、その肩にそっと触れる。壊れない様にそっと。


凛は俺の顔を見ると、またその瞳に涙を滲ませ、俺の胸に頭を押し付ける。


「真琴様…私…私は……」


掠れてしまって聞き取れない程の声を振り絞る凛。


「何も言わなくていい。」


「私は…………うぅ……」


抑えきれない声が漏れ出すように聞こえてくる。


そしてそれと同時に俺は驚く程冷静に、殺意を抱いた。殺したいと心の底から思った。

こんな惨状を作り出し、凛を壊そうとした奴を。


なんとか落ち着いた凛を連れて外に出ると俺と同じ様に考えている仲間の顔がそこにはあった。凛の泣き声は外にまで聞こえていただろう。そして何があったかは聞かなくても大体想像出来る。


「俺にも我慢の限界ってもんがあるぜ、真琴様。」


「私も到底許せそうにありません。」


「俺もだよ。だが……先にあっちだな。」


龍脈山の中腹辺り、雪の残る場所が爆発したように豪快に弾け、積もっていた雪が煙のように上空に舞う。

上部にあった雪が雪崩を起こして下の森を飲み込む。


そしてその雪煙の中から飛び出してきたのは全長10メートルはある天災級のドラゴン。


全身を氷の棘で覆い尽くし、羽を羽ばたかせるだけで周囲の木々が一瞬で凍っていく。まだ距離は遠いが明らかに俺達の方を見ている。


翼を広げ更に上空へと飛び上がったフロストドラゴンの顔が上を向く。距離にして1km位はあるが、ピンと伸ばした長い首はここからでもよく見える。


「マコト!魔力が集まってる!防御しないと何か来る!」


シャルの声で我に返る。何をしているんだ!相手は世界最強のドラゴンだぞ!


即座に村を覆う程のクリスタルシェルを発動する。


ゴウッ!!


正面を向き直したフロストドラゴンの口から白く冷たい冷気が噴射される。

天災級ドラゴンに許された力。ドラゴンブレス。

まるで液体窒素えきたいちっそをぶちまけた様に、冷気が通った所が瞬時に凍りつく。

そのブレスは勢いを失うこと無く俺達の居る場所まで到達し、クリスタルシェルに当たるとパキパキと音を立てながら氷が成長し、クリスタルシェルを撫でるように上へと拡散していく。

ここまでの距離は約1kmもあるのに、その距離を全て凍らせたのだ。


「なんて威力だよ…」


ブレスの効果範囲では空気中の水分までもが凍りつき、氷の粒となりキラキラと振ってくる。

ただの挨拶だとでも言いたいのか、ゆっくりとフロストドラゴンが近付いてくる。


「真琴!!」


「キーカか。」


そのタイミングでキーカともう一人、女性の龍人種が到着する。ストレートの赤髪をポニーテールにして、キーカと似たような服を着て、見覚えのある直剣を腰に差している。背は少し低めで大剣を振るには体格が足りない気もする。

彼女がテュカだろう。


「なんて惨状だよ…」


「こんな酷いことを誰が…」


「今はそれよりドラゴンだ…」


「他の星龍達も後で合流してくれる。それまでなんとか持ち堪えるぞ。」


あまりにも控えめな言い方に聞こえるかもしれないが、それ程までにドラゴンという存在は強い。倒そうと考えるのではなく、とにかくしのぐしかない。


冷気を纏い、徐々に近付いてくるフロストドラゴン。近くで見ると一層デカく見える。

翼を羽ばたかせる度に芯から冷えるような空気が地上へと降りてくる。


ゆっくりと地上へと降り立ったフロストドラゴンの青い瞳は縦に長く、口から白い冷気がモワモワと上がっている。


天災級のドラゴンともなると言葉を操り意思疎通が可能と言われているが、見る限りそんな余裕は無さそうだ。

完全に俺達…いや。凛を敵視している。


何があったら最強と呼ばれるドラゴンが人間の一個人をそんなに敵視すると言うのだろうか…


あまりにも強大な力。皆寒いと言うのに冷や汗が止まらないだろう。俺ももちろん同じだが、それと同時にその荘厳そうごんな姿に賛美さんびを贈りたいという気持ちもあった。

一片の隙もないその姿は確かに最強と呼ばれるに相応しい。


だが賛美を贈った所で俺達が生きて帰れる訳でもない。足掻くとしよう。


「グルルルル……」


「かなりお怒りだな。」


「凛。下がってろ。」


「私も…私も戦えます!」


「ヤバくなったら助けてくれ。頼むよ。」


「……」


今の凛に戦わせるのは多分皆反対するだろう。あれだけの事があったのだ。心中穏やかでは無いなんて易しい言葉では表せない程だろう。


「健!テュカ!遅れるなよ!」


「誰に言ってんだ!」


「はい!」


キーカ、健、テュカの三人が一気にフロストドラゴンとの距離を詰める。

シャルと一緒に三人に身体強化と武器強化魔法を付与する。


ガギッ!


「なんつー硬さだ!」


キーカの大剣ですら体表の氷を割ることが出来ない。


キュン!


リーシャの放った矢が横に弧を描くように飛んでいく。


バキッ!


強固な鎧であったはずの氷に矢が突き刺さる。貫通矢なのに少し刺さっただけとは…硬すぎるだろ。


「私の矢では突き刺すだけで精一杯です!矢の刺さった所を狙ってください!!」


「やるじゃねぇか!聞いたかテュカ!」


「はい!行きます!」


テュカが直剣を正面に構える。


炎貫えんかん!」


ボワッとテュカの持っている直剣に赤い炎が渦を巻くように出現する。燃える直剣を矢の刺さった部分へと突き立てる。


バキバキッ!


激しい音と共に氷にヒビが入る。範囲としては鱗一枚分だろうか。たったそれだけの傷を負わせる為にこちらは全力だ。


まるで鬱陶しい羽虫を退ける様に翼の片方を空中にいるテュカに向かって煽る。


「うっ!」


「テュカ!!」


ギリギリでクリスタルシールドが間に合ったが、シールドごとテュカの体が吹き飛ばされてしまう。

キーカが援護に回りダメージは最小限に抑えられているが、キーカの抜けた穴を俺が魔法で埋める必要がある。


シャルと合わせて大きいのをぶち込むしかない。それはシャルも分かっているはず。


「サンダーバード!」


大人シャルが叫ぶと、子供シャルの時と比べて倍くらいはあるサンダーバードがフロストドラゴンの目の前に現れる。その姿形も以前に比べてずっと明確なものになっている。

前足を振り回しサンダーバードを邪魔だと払い除けようとするフロストドラゴン。だがサンダーバードもあっちにこっちにと飛び回り目の前をうろちょろする。


その間に俺の発動した魔法がフロストドラゴンの足元から迫る。


第七位土魔法クリスタルアント。小さなクリスタルのありを作り出す魔法だ。一匹では当然フロストドラゴンに何も出来ないが、それが数十万という数になれば別のはず。

ワラワラと足元に集まり、張り付く。クリスタルアント同士で繋がり合い、拘束、数十万の牙で一斉に攻撃を仕掛ける。体が小さい為どんな隙間にも入り込んでいく。


「グガァァァァ!!」


堪忍袋の緒が切れたのか、両翼を大きく広げ前足を上げたフロストドラゴン。冷気が周囲に拡散し、サンダーバードもクリスタルアントも一瞬にして凍りつき消し飛ばされる。

しかも冷気をこちらに飛ばしてくるおまけ付き。


「させませんよ!!」


俺達の前に突然現れたのは白く長い髪を先の方で纏めた女性龍人種。自分よりも大きな盾を構えてその冷気を完全にシャットアウトする。


「イルシャプ!!」


「遅れてしまって申し訳ありません!」


「かー!でっけぇなぁこりゃ!!」


後ろを振り向くと、三人の頼もしそうな龍人種が立っている。話には聞いていた五星龍。


大盾で俺達を守ってくれたのは四星龍、イルシャプ。

額に手を当ててフロストドラゴンを見上げている最も体が大きく筋肉隆々の男性は三星龍ゴドルトース。短い茶髪に、片方の角が折れている。武器は拳らしい。


「デカさが強さとは限らない。お前と同じだ。」


「あ?!なんだ?!やるのかルドグ?!」


ゴドルトースに声を掛けている長めの青髪の男性が二星龍ルドグ。先端が二股に別れた珍しい槍を使うらしい。


「あー…ドラゴンってどんな声で泣くのかしら…考えるだけでゾクゾクしちゃうわ…」


一人何故かうっとりしている緑色のボブヘア女性は五星龍ヤルヒャ。腰に纏めてあるむちを使うとのことだ。

なんとも濃ゆいメンバーだが、頼もしい限りだ。


「遅いぞお前達!キーカ様を待たせるな!」


「テュカはいつもそれねぇ。」


「わ、私は注意したんですよ…?」


「俺には俺のタイミングがある。」


「ガハハハハ!!すまん!!」


フロストドラゴンを前になんとも豪気な人達だ。


「自己紹介は後だ。とりあえずあのフロストドラゴンを山に帰すぞ。」


「はい!」


「テュカ張り切ってるわねぇ。」


「ガハハハハ!」


あの大男ずっと笑ってるんだな。


いい加減にしろとでも言いたいのか、フロストドラゴンが冷気を纏った腕を振り下ろしてくる。


ガンッ!


あの華奢きゃしゃそうな体のどこにそんな力があるのか…イルシャプがその腕の下に入り込み大盾でがっちりと攻撃を防いでみせる。


「おっしゃぁぁあ!!」


無造作に飛び出したゴドルトースが飛び上がりフロストドラゴンの顔面に拳を打ち込む。


ゴンッという鉄を鉄で殴った様な音がするが、フロストドラゴンは軽く首を振って跳ね返してしまう。


「かってぇなぁ!!!」


落ちてくるゴドルトースの後ろから飛び上がったルドグがゴドルトースを足場にして更に上へと飛び上がる。


「うぉ?!ルドグ!!やりやがったな!!」


「うるさい。」


飛び上がったルドグは一言だけ言ってフロストドラゴンの脳天に槍を突き下ろす。


ガギッ!


刃は通らず、ルドグを振り払い大きく口を開くフロストドラゴン。

ルドグが喰われると思った瞬間に鞭がルドグに巻き付き無理矢理後ろへと引き戻す。


全員の攻撃が通用しなかった…なんて圧倒的な存在なんだ…


「てめぇルドグ!俺を足場にしやがったな!?」


「ふん。」


「先にてめぇをぶっ飛ばしてやろうか?!あ?!」


フロストドラゴンを前に仲間割れとかやめてくれよ…?


ガンッ!!


地震かと思ったが、キーカが大剣を地面に刺しただけのようだ。だけとは言えないかもしれないが…


「おい。てめぇら。随分余裕じゃねぇか。なんならドラゴンと私を同時に相手にしてみるか?あ゛?!」


「「ごめんなさい。」」


「言い合ってねぇでさっさと構えろボケが!」


「「はい。」」


あんなに威勢のいい男連中だったのに、キーカの一言でまるで怯える子猫だ。ドラゴンより怖いってキーカもキーカだが…


「グガァァアア!!」


怒り狂うフロストドラゴンが再度あのブレスを使おうと首を上に伸ばす。


「この距離で打たれたら流石にヤバいぞ!なんとしても止めろ!

健!先駆けは頼むぞ!」


キーカの声より早く地面を蹴った健が空中で刀を振る。俺とシャルは失敗した時の為にシールドを張る準備をしているし手は出せない。ここは任せるしかない。


龍顎連斬りゅうがくれんざん!!」


見た目は健の使っていた四刀連斬だが、一撃の重さも鋭さも桁違いだ。まるで龍のあごが食い付く様な斬撃。


フロストドラゴンの伸びきった首を捉えた。

リーシャの矢が刺さった位置をしっかりと切り抜く。


バキッ!!


首周りの鱗が僅かに剥がれ落ちる。だがブレスを止めるには至らない。


「やりやがる!次は俺が行くぜ!!」


「お前だけじゃ無理だ。」


続いてルドグとゴドルトースが同時に飛び上がる。


「オラいくぜ!発岩拳はつがんけん!」


水突すいとつ。」


ゴドルトースの拳に集まった岩が、フロストドラゴンの首に当たった瞬間に弾ける。健の付けた傷からボロボロと氷が落ちる。


反対側から槍を突き出したルドグ。槍の先に集まっていた水の玉が触れると同時に水蒸気となり爆発する。


あと少しで氷の鎧が剥がれきる。


「ヤルヒャさん!」


「任せときなさいな。」


イルシャプがこちらに向けて構えた盾を足場にするヤルヒャ。盾の上にヤルヒャが乗るとイルシャプが盾を上へと押し上げる。


恐ろしい程の大跳躍でフロストドラゴンに近付いたヤルヒャが鞭を振る。


蛇跡じゃこん。」


生き物の様にフロストドラゴンの首に巻き付いた鞭をヤルヒャが引っ張ると、バキバキと音を立てて氷が完全に剥がれ落ちる


どうやらあの鞭は釣り針の様に返しが付いているみたいだ。任意で出し入れ出来る仕組みらしいが…エグすぎる武器だな…


「テュカ!!」


「はい!」


テュカが直剣に炎を纏わせ、氷の剥がれ落ちた首元を狙う。


「はぁぁぁああ!!」


ギンッ!


テュカの攻撃は入ったが、音からするに氷の下にある鱗はそれ以上の強度。多少傷を付けられたかもしれないが…だが目的はブレスの中断。僅かだがフロストドラゴンの首がグラリと揺れる。しかし猶予はそんなに無い。シャルが既に防御魔法を展開している。

だが最後はキーカの出番。頼むぞ。


「おらぁぁぁあ!!!」


ゴンッ!!


斬る事は出来なかったが、フロストドラゴンの首が大きく揺れ、体勢を崩し、地面に前足を付ける。

口元から冷気が漏れ出し、上空に向かって放出される。


だが…フロストドラゴンはそのまま頭をこちらに向けて降ろす。上空に向かって伸びていたブレスがそのまま地上へと向かって降ってくる。


「クソっ!!ダメか!!」


キーカが悔しそうな顔をしている。俺とシャルのシールドでなんとか防ぐしかない!


影縛かげしばり。」


ブレスを吹き出している口に向かって何かが飛んでいく。あれは……俺の作った投げナイフ?

今の今まで隠れていたプリネラが、フロストドラゴンの横から飛び出してきて投げナイフを放ったらしい。

だが、投げナイフではあれを止める事は…いや。違う。八本の投げナイフの後ろに伸びているのは闇魔法で作った影の紐。二本の投げナイフを繋いでいる。それがグルグルとフロストドラゴンの口に巻き付いていく、二重、三重と巻き付いた影の紐。僅かだがフロストドラゴンの口が閉じ、ブレスが細くなった。


「リーシャ!!」


「任せて下さい!!」


プリネラの叫び声に反応したリーシャが矢を放つ。


恐ろしく早い射撃だ。本当に狙っているのか分からない。しかも二本同時に射出している。


飛んで行った矢はフロストドラゴンの口の周りを未だ回り続ける投げナイフを正確に捉える。

矢が当たった瞬間に投げナイフの闇魔法が矢を巻き取り、そのまま矢の軌道へ連れ去られる。


当然その勢いは口に巻き付いた影の紐にまで影響し、開いていた口を無理矢理閉じる。


ブレスは地上へと到達する前に完全にシャットアウトされる。

生き物の特性上口を閉じる方向には顎は強い力を持つが、開く方向には弱い力しか持たない。そこを突いたのだ。


プリネラの咄嗟の判断に、その意図を瞬時に汲み取り対応したリーシャ。予想以上に強くなっているらしい。


それでもブレスを躱しただけ。未だ怒りを鎮めようとしないフロストドラゴンに着地したキーカと健が走り寄る。


「そろそろ……」


「「落ち着けボケェェエ!!!」」


ブレスを放とうと下がってきた首、その氷の剥がれ落ちた部分に二人の剣戟がモロに入る。カウンター気味に入った下から上への衝撃でフロストドラゴンの首が再度上へと打ち上がる。

残念ながら僅かな傷しか付けられなかったが、それでも衝撃は吸収出来ずにフロストドラゴンを仰向けに押し倒す。


冷気で凍った草木をバキバキと割りながらフロストドラゴンの体が地面に倒れ込む。地面に積もっていた氷の粒が風に乗って飛んでくる。完全に白く塗りつぶされた視界。龍脈山で体験したホワイトアウトによく似た状況だ。


視界が取れないのはこちらにとってあまりにも良くない状況。直ぐに風魔法を使って視界をクリアにしていく。


俺の隣に居るはずの凛の姿さえまだ見えない。当然フロストドラゴンの動きは全く見えない。


「真琴様ぁ!!!」


凛が俺の体に抱き着くように横から飛び出してきた。


バカッという音が聞こえたと思ったら今の今まで俺のいた場所をフロストドラゴンの口が通過し噛み砕く。いつの間にか口の拘束を解いたらしい。


「凛!!大丈夫か?!」


俺に抱き着くように飛びついてきた凛の背中が赤く染まっている。フロストドラゴンの牙で傷を負ったらしい。


「だ、大丈夫です…」


致死的な傷では無かったらしいが、傷口がパキパキと音を立てて凍りつき始めている。


風魔法で一気に視界をクリアにしてフロストドラゴンから凛を抱えて逃げる。


しかし、後ろからフロストドラゴンの口が追ってくる。


「くっ!!」


凛を庇うようにして抱き、クリスタルシールドを展開する。


ガギッ!!


クリスタルシールドに食い付き、牙は俺と凛を噛み砕く一歩手前でなんとか止まる。以前の俺のクリスタルシールドだったなら間違いなく噛み砕かれていただろう。


「グガァァ!!」


噛み砕けないと分かったフロストドラゴンは苛立つように一鳴きする。


凛の背中は治癒魔法でなんとか治せた。だが、まだまだピンピンしてやがる。


もう一度戦闘が始まろうとしていた時だった。


「待ってくれフロストドラゴン!!」


後ろから聞こえてきた声はヴェルトのもの。


「ヴェルト?!なんで来た!!」


「やめてくれフロストドラゴン!この人達のせいじゃない!!」


「ガァァ!!」


「ヴェルト!」


邪魔な物を排斥はいせきせんと振り出された前足をなんとかシールドで直撃を防いだが、衝撃でヴェルトが吹き飛んで行く。地面を転がるヴェルト。


「ぐ……い、痛いな……」


「何してんだ!逃げろ!」


口から血を滴らせながら起き上がるヴェルトはそれでも逃げようとはしなかった。


「聞いてくれ!頼むよ!!」


「いくらお前がイルラーだからって格下じゃなきゃ意味無いだろ!」


「感情を感じ取れるなら話は出来るはずなんだ!頼む!聞いてくれぇぇ!」


ヴェルトが叫ぶとフロストドラゴンの動きがピタリと止まる。


「わ、我は……」


「良かった…聞いてくれるみたいだね…」


ガクリと膝を折るヴェルトに駆け寄り治癒魔法を掛けてやる。フロストドラゴンはとりあえず攻撃を止めてくれたらしい。

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