第44話 皐月の思い出

皐月は天照のことを知っていた。


「皐月。どうしてお前は天照を知っている?」


「私は…天照一族の末裔まつえいだよ。天照一族は天照の子供だ。だから私は天照に可愛がられていた」


天照一族など知らないことが多かったが、俺は黙って話を聞いていた。


「私は天照に出会う前、紛争地域で戦っていたんだ。だけど私は子供だったから、すぐに泣いて帰ってきた。だけど…」


皐月は過去のことを悲しげに話している。まるで子供のようだ。


「だけどね、私は無理やり戦場に連れていかれて、その戦場で大ケガを負っちゃって…。でもさ、その時に天照が治してくれたの」


天照は優しいのかな?


「だけど結局私は死んじゃってさ。だけどこの世界に来た。そしてここに住んで傷を治した」


駄目だ。話についていけない。


「皐月。どういうことなんだ?」


「ここは本当は医療施設なんだ。だからここでミッションなんか出されるはずがないんだ。だから私もおかしいと思った。だけどこの日、三月れいを殺せとミッションが来た。もし殺せなければ…天照が死ぬ」


「何!?」


閻魔は何を考えているんだ!


「皐月。なら俺を殺せ」


俺が皐月に言うと、天照は焦って話しかけてくる。


「三月れい。もうすぐ1日が終わる。だから…まだ諦めないでくれ。まだ生き残れる」


「無理だ。せめて最後にいおりに会いたかったけど…話すことなんて無いしな。だから…もう死んでもいいよ」


すると天照は皐月の脳内に話しかけた。


「皐月。私は生きてる。だから三月れいを殺さないで…うわっ!?」


「皐月。天照を助けたかったら三月れいを…殺せ」


閻魔は天照の口を塞ぎ、皐月に三月れいをころさせようとする。


「皐月。いいぜ。俺は死んでも…」


「三月れい。ごめんね」


皐月は顔を下に向け、俺の心臓を一突きにした。


「三月れいいぃぃぃぃ」


最後に…天照の声だけが俺の脳内に響いた。

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