第30話 俺が救う
俺は弥生の部屋に向かった。
「やっぱりいたのか!」
弥生の部屋には最初に首を吊っていたロープと、弥生がいた。
「またなの。どうして君は邪魔をするの?」
「だって…」
「どうせミッションなんでしょ。だからあなたは初めて会った私の自殺を止めたんでしょ」
「違う」
「違わない。だって君は…私を苦しめようとしているじゃないか。死にたい私を、生きる意味を無くした私を、生かそうとしてるじゃないか」
そうか。弥生は死にたい。それを止めるってことは、弥生が苦しむだけなんだ。でも死なせていいわけじゃない。
「弥生。聞いてくれ。俺はお前知っている。俺とお前がまだ幼稚園だった頃、俺はお前と友達だった。だけど苦労してたんだな。だから…」
「嘘。私はあなたなんて知らない。あなたは私を知らない。だから、今すぐ私を死なせてよ。だから、これ以上私に涙を流させないでよ…」
そう言った弥生の目から、涙が何滴も流れていた。
「弥生。もう一人じゃない。お前には俺がいる。それにこいつらもいる。だからもう死ぬのは止めてくれ。お前はもう苦しまなくていいんだよ」
澤村弥生はロープを置いた。
「弥生。これからは俺も一緒に苦しんでやる。だから、苦しかったら相談してくれ。いつでも相談に乗るぞ」
そして弥生は俺に抱きつき、涙をこぼしながら教えてくれた。
「私、一人でずっと苦しかった。親も友達も誰もいない」
「そうか」
「ずっと誰も信じれなかった。小学生の頃仲良かった男の子。その子にずっと会いたかった。そしてやっと会えたんだ。だからね、今とっても嬉しいんだ。私、すごくうれしい」
俺は弥生の頭を優しくなでた。
「弥生。俺はずっとお前を見放さない。だからこれからもそばにいろ。今は俺だけじゃない。如月と睦月とも仲良くできる」
「ありがとう」
「どういたしまして」
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