第25話 睦月薫
「じゃあ絶対に生き返らないと…」
俺がそう言うと、睦月は不満そうな顔をした。聞いちゃいけないことだったのだろうか。
「ねえ、三月くん。君は家族と食事をしたことがある?」
「も…もちろん」
「うらやましいな~」
睦月は少し寂しい顔をした。
「でもそれがお嬢様ってやつだろ。だからお金ががっぽりあるんだろ」
「まあね~。でもさ、お金があっても買えない物なんて、いくらでもあるんだよ」
俺は悟った。多分睦月薫は、自殺した。この様子だと親から愛情など注がれていなかったのだろう。寂しかったんだ。
「三月くん。…私…普通の家庭で生まれたかった。普通に行きたかった」
睦月は泣いていた。きっと思い出してしまったんだ。自分が、愛情など注がれなかったことを。
「あーあ。結局、死んでも退屈だな~。これじゃ、今日のミッションクリアしなくてもいいかな~」
睦月はきっと苦しんでいる。なら…
「じゃあさ、生き返ったら俺が友達になるよ」
「友達!?」
「ああ。もしお前が退屈なら、俺がお前の友達になって、寂しい時、悲しい時、苦しい時、一緒にいてやる。だから、生きてくれ」
「生きる…か~」
「もし生きるのが辛いなら、もし一人が苦しいなら、俺はすぐにお前のもとに駆け寄ってやる。だから生きようぜ」
「ねえ三月くん。私さ、お父さんとお母さんと仲直りできるかな?死んだこの私を受け入れてくれるかな?」
「受け入れてくれるまで、俺が一緒に謝ってやる」
「ねえ。私のワガママ。聞いてくれる?」
「もちろん」
「じゃあさ、生き返ったら私と…け…け…」
「け?」
「私と…いっぱい遊んで。三月お兄ちゃん」
「いいよ。睦月」
これでこの子は、苦しみから解放されたかな。
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