第12話 疑問

なぜいおりが?

俺は分からなかった。だって手帳を使ったんだ…。手帳の力は絶対なんだ。


なのに…何でいおりは…俺を…。


「れい。何で泣いてるの?」


いおりの声は優しかった。そして心が温かくなった。


「ねえ…れい。私と…やり直してくれないかな?」


なんでいおりはこんなにも優しいんだ。言っただろ。全ては偽りだと。全て操作してたと。なのに…。


「れい。私は操られたことなんてないよ。ただ初めて見たときから好きだった子と話したり、デートしただけ」


「え!?」


「私ね。君のその優しいところが好きなんだ。雨の中、捨てられてた猫達を背負って、家まで持って帰ったこと。私見てたよ」


でも結局あのマンションペット禁止だったから施設に預けたんだっけ。


「あと倒れていたお爺さんを助けたりとかさ」


あれは救命のやり方をならった次の日だったから救えた命だった。


「あとは、私と元カレのよりを戻そうとしたこと」


しばらく沈黙が流れる。


「でもね、私は彼が嫌いだった。それに彼は私を奴隷のように扱った。だから…君と出会えて嬉しかったんだ」


「…いおり!」


「だから…これが手帳の力だとしても、私は嬉しかったよ。君が…れいが私の心を癒してくれたから。あのままじゃ病んでたと思う。だから…れい。…私と…やり直してください」


差しのべられた手のひら。俺は嬉しかった。なのに…何で答えが見つからないんだろう。


どう…答えを出せばいいんだろう。


俺は考えた…


「ご…めん」


そう言った俺は涙をこらえることが出来なかった。

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