第5話 看病?

三月れいは風邪を引いた。


「ゴホッ」

「大丈夫? お母さん会社行くけど、一人でお留守番してられる?」


「でっ、できる」

「じゃあ行ってくるわね」


「いってらっしゃい」


三月れいは母を見送ると、スマホを取り出し、沖島いおりからメールが来てるか確認するが、とくに心配された様子はない。


三月れいは時計を見る。


「今は3時間目が始まってるくらいの時間か」


ピーンポーン


チャイムが鳴ったので、三月れいは玄関に行き、扉を開ける。

そこには天使がいた。


「れいくーん。心配で来ちゃった」

「いっ、いおり!」


三月れいは驚いた。


「学校は?」

「学校はサボってきちゃった」


「えっ!?」

「嬉しく…ないの?」


沖島いおりは不満そうに聞く。


「そっ、そんなことないじゃないか。とても…嬉しい」

「ならよかった」


沖島いおりの笑顔は、三月れいの風邪を和らげる効果があるのかと思うほど、三月れいは穏やかになる。


「じゃあ、どうぞ」


三月れいは沖島いおりをリビングまで案内した。


「れいくん。風邪は平気なの?」

「いおりが来てくれたお陰で治っちゃった」


「来て正解だったかも」


そんな会話を繰り返していくうちに感じた。彼らは話のネタが尽きない。

三月れいが映画の話題を振ると沖島いおりは「映画好きなんだ」と言い、会話が弾む。


三月れいも違和感を感じていた。

こんなにも気が合うのなら、なぜ今まで二人は見ず知らずの関係だったのか?


三月れいは手帳の力を解除しようとしたが、怖かった。

もしいおりの好意が消えたら。

もしいおりに嫌われたら。


三月れいは離したくなかった。

沖島いおりという、唯一無二の恋人を。


時間が経ち、沖島いおりは帰っていく。


三月れいは思った。

これが俺の求めていた青春なのか、と

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