第6話「変化」
みなさんこんにちは。
みちこです。
世の中が大変ことになってきました。
コロナウィルスの蔓延です。
飲食店である「アンガトーシュクレ」も、その影響を受けています。
社員じゃなくパートである私も、勤務の日数を減らされていて、もうここで働けなくなる日も近いかもしれません。
そんな中で、今日は久しぶりに出勤した日のお話になります。
今日は摩耶ちゃんはお休みで、正田くんと2人での厨房の中でのお仕事になりました。
※
「あ、みちこさんおはようございます。今日も一日よろしくお願いしますね 」
「正田くんおはよう。お久しぶりね。コロナウィルスのせいで、ここも大変なことになってきたわね」
「えぇ、そうですね。でもお互い体だけは気をつけましょうね」
そして正田くんが続きました。
「ところでみちこさん、出勤日が減ってしまっていますけど、金銭的に大丈夫なんですか?」
「そうなのよ。このままじゃヤバイから、新しく他のお店で掛け持ちでパートを始めたわ。アンガトーシュクレに居られなくなる日も近いかもしれないわね」
「そうですよね。もしみちこさんがここを辞めちゃったら、僕はとても悲しいです。でも金銭的な援助なら僕でもできますので、いつでも頼ってきてくださいね」
「そんな!頼れるわけないじゃない。でもその気持ちだけでも嬉しいわ。ありがとね」
そうして今日のケーキ作りが始まりました。
ケーキを作りながら、今日の正田くんは、いつもにも増して私に話し掛けてきます。
色んな質問をしてきます。
「あれ?みちこさん髪切りました?」
「みちこさん身長が小さくなったんじゃないですか?」
それに私は答えます。
正田くんはとても楽しそうです。
そして話をしていない間も、とても視線を感じます。
「今日はみちこさんの目の上がとてもキラキラしてますね」
と言われて、ハッと驚きました。
「あ、それは最近アイシャドーを変えたのだけど、よく気づいたわね」
「やっぱりですか。何か違うと思ったんですよ」
正田くんは私のことを見過ぎです。
私は苦笑いをしました。
※
そうして、午後の休憩時間中に、正田くんがまた私に話し掛けてきました。
「みちこさん聞いてくださいよ。僕は最近、ある自己啓発本を読み始めたのです」
「あら、そうなのね。それはどんな内容の本なのかしら?」
「僕には今、ある悩みがあって、その事が書いてあったんです」
「悩み?」
「そうです。それは職場の年上の人を好きになってしまって、それを相手に言いたくても言えないというものなのです」
私はこれを聞いて、少し緊張してしまいました。
正田くんは続けました。
「そして、その本には、その相手がもし仕事を辞めるのならば、告白をした方がいいと書いてありました」
お互いに少し沈黙をしました。
その沈黙を破ったのは正田くんからでした。
「みちこさん、お話があります」
「あ!私用事を思い出しちゃった!ちょっと行ってくるね!」
私は逃げるように、その場から離れました。
私、嫌よ。
私の中で疑惑は確信に変わりました。
その日は仕事が終わるまで、正田くんと仕事のこと以外は、ほとんど話しませんでした。
正田くんは人のことを好きになるのに時間が、かかるそうです。
でも私がここからいなくなれば、私のことはいずれ忘れるだろうし、摩耶ちゃんの好意や優しさに気づいて、彼女のことを好きになったらいいのにって思います。
やっぱり近くにいる人を好きになると思うから。
この日から、私はこの事が少し悩みになってきました。
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