第6話「変化」

みなさんこんにちは。



みちこです。



世の中が大変ことになってきました。



コロナウィルスの蔓延です。



飲食店である「アンガトーシュクレ」も、その影響を受けています。



社員じゃなくパートである私も、勤務の日数を減らされていて、もうここで働けなくなる日も近いかもしれません。



そんな中で、今日は久しぶりに出勤した日のお話になります。



今日は摩耶ちゃんはお休みで、正田くんと2人での厨房の中でのお仕事になりました。







「あ、みちこさんおはようございます。今日も一日よろしくお願いしますね 」



「正田くんおはよう。お久しぶりね。コロナウィルスのせいで、ここも大変なことになってきたわね」



「えぇ、そうですね。でもお互い体だけは気をつけましょうね」




そして正田くんが続きました。




「ところでみちこさん、出勤日が減ってしまっていますけど、金銭的に大丈夫なんですか?」



「そうなのよ。このままじゃヤバイから、新しく他のお店で掛け持ちでパートを始めたわ。アンガトーシュクレに居られなくなる日も近いかもしれないわね」



「そうですよね。もしみちこさんがここを辞めちゃったら、僕はとても悲しいです。でも金銭的な援助なら僕でもできますので、いつでも頼ってきてくださいね」



「そんな!頼れるわけないじゃない。でもその気持ちだけでも嬉しいわ。ありがとね」




そうして今日のケーキ作りが始まりました。




ケーキを作りながら、今日の正田くんは、いつもにも増して私に話し掛けてきます。



色んな質問をしてきます。



「あれ?みちこさん髪切りました?」



「みちこさん身長が小さくなったんじゃないですか?」




それに私は答えます。




正田くんはとても楽しそうです。




そして話をしていない間も、とても視線を感じます。



「今日はみちこさんの目の上がとてもキラキラしてますね」



と言われて、ハッと驚きました。



「あ、それは最近アイシャドーを変えたのだけど、よく気づいたわね」



「やっぱりですか。何か違うと思ったんですよ」




正田くんは私のことを見過ぎです。



私は苦笑いをしました。







そうして、午後の休憩時間中に、正田くんがまた私に話し掛けてきました。



「みちこさん聞いてくださいよ。僕は最近、ある自己啓発本を読み始めたのです」



「あら、そうなのね。それはどんな内容の本なのかしら?」



「僕には今、ある悩みがあって、その事が書いてあったんです」



「悩み?」



「そうです。それは職場の年上の人を好きになってしまって、それを相手に言いたくても言えないというものなのです」





私はこれを聞いて、少し緊張してしまいました。






正田くんは続けました。






「そして、その本には、その相手がもし仕事を辞めるのならば、告白をした方がいいと書いてありました」






お互いに少し沈黙をしました。







その沈黙を破ったのは正田くんからでした。






「みちこさん、お話があります」








「あ!私用事を思い出しちゃった!ちょっと行ってくるね!」




私は逃げるように、その場から離れました。









私、嫌よ。









私の中で疑惑は確信に変わりました。






その日は仕事が終わるまで、正田くんと仕事のこと以外は、ほとんど話しませんでした。







正田くんは人のことを好きになるのに時間が、かかるそうです。



でも私がここからいなくなれば、私のことはいずれ忘れるだろうし、摩耶ちゃんの好意や優しさに気づいて、彼女のことを好きになったらいいのにって思います。



やっぱり近くにいる人を好きになると思うから。







この日から、私はこの事が少し悩みになってきました。

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