第4話「摩耶ちゃん登場」
「さよなら三角、またきて四角♪ 四角は豆腐、豆腐は白い♪ 白いは目玉のハゲ親父♪」
「もう、なんなんですかその歌」
こんな私の訳の分からない歌にも、今日も正田くんは反応をしてくれます。
そして今日も「アンガトーシュクレ」で、正田くんと一緒に働きます。
今日は「アンガトーシュクレ」に新しく社員の人が入社するらしく、私は少し緊張をしています。
その人と仲良くできたらいいなぁって思っています。
そうこうしている間に、リーダーの山中くんが、1人の女性と一緒に厨房に入ってきました。
「えー、2人ともこちらに集まってください。こちら、新しく僕たちと一緒に働く仲間になります、田山摩耶さんです。じゃあ田山さん、自己紹介がてらに一言どうぞ」
「はい。今紹介をいただきました、田山摩耶と申します。年齢は30歳です。ケーキ作りは、他所で10年間程やってきましたが、まだまだ修行中の身です。ゆくゆく将来は自分のお店を構えたいという夢を持っています。未熟者ですが、これからよろしくお願いいたします」
「自己紹介をありがとうございました。えー、田山さんは、みちこさんと正田くんと同じ厨房で、これから一緒に働いていただくので、色々教えてあげてくださいね」
へー、田山摩耶さんって言うのかぁ。摩耶ちゃんって呼ぼうかなぁ。10年間もケーキ作りをしてきたって凄い。こっちが色々と教えてもらおっと。
※
1週間後
※
「摩耶ちゃんおはよう。今日もよろしくね」
「みちこさんおはようございます。こちらこそよろしくお願いしますね」
「もうここには、少しは慣れたかしら?」
「はい。みなさんがお優しいから、少しずつ慣れてきました。今までの職場に比べると、あんまり忙しくないから、少しケーキ作りには物足りなさを感じていますが…。私は修行中の身なので」
「そうよね。摩耶ちゃんは自分のお店を持つことが夢だもんね」
「そうなんですよ。色々考えてると悩みも多くて…。今度お話を聞いてくれますか?」
「うん。私でよければいつでも お話を聞くから、またその時には声を掛けてね」
※
2週間後
※
「正田くん おはよう。今日は摩耶ちゃんはお休みだね」
「あ、みちこさんおはようございます。摩耶さんって穏やかな性格の方で、僕は安心しました。ほら、僕って気が弱い所があるじゃないですか?今のところ摩耶さんとも、無理なく仕事ができています」
「そんな感じだよね。良い仲間が増えてよかったわ」
「ほんとにそうですよね。あっ!話は変わりますが、シフト表を見たんですけど、明日は僕が休みで、あさってはみちこさんが休みなので、僕たちは当分会えないですね」
「いや2日じゃないの」
「いやいや2日も会えないんですよ?僕は寂しいです。あー、もう飲みに行きたいなぁ。どこかで2人で飲みに行ってくれる人がいないかなぁ。ねー、みちこさん」
「何ブツブツ独り言を言っているのよ。早く誰か彼女を見つけてください。悩みがあるなら聞くわよ?私に言ってみて」
「悩みはあるけど、それをみちこさんには言えません。何となく分かりませんか?」
「分かるわけないでしょ」
「もう、なんで分からないんですか」
なんか最近、正田くんが以前より心の中を表に出してきているような気がします。
やっぱり私のことが好きなのかなぁ。
※
3週間後
※
「摩耶ちゃん おはよう。もうだいぶここにも慣れたって感じだね」
「みちこさん おはようございます。はい、みなさんが親切で優しいから、とても気楽に仕事をさせてもらっています。いつもありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそいつもありがとう。摩耶ちゃんは、今日お休みの正田くんとも仲良くしているから、みんなで良い雰囲気で仕事ができて、私も毎日が楽しいわ」
「ふふふ。みちこさんって人柄も良いし、穏やかで綺麗だし、尊敬しちゃいます」
「まぁ摩耶ちゃん、こんなおばさんを褒めても、何にも出ませんよー」
「あの、みちこさん一つ相談に乗ってもらえますか?」
「なになにー?私でよかったら相談に乗るわよ」
「ありがとうございます。聞いてもらいたいお話というのはですね、あの…私…好きな人ができてしまって…」
「へー、いいじゃない」
「それが…正田くんなんです」
「正田くん!?」
「はい。ほら正田くんって、よく喋るけど、割と地味目じゃないですか?私の地味な所とも似た者同士だなぁって思ってて、あとやっぱり あの穏やかな雰囲気が好きになってしまって。それでですね、もう気持ちを伝えたいので、今度告白をしようと思うんですけど、どう思いますか?」
「え!?告白をするのは まだ早いんじゃないかな?もうちょっと2人で遊びに行ってからとかでもいいんじゃないかなって思うけど」
「想いを伝えるだけで、今すぐ付き合って欲しいとか、そんなこと望んでいないんです。ただもう気持ちを伝えたいだけで」
「そうなのね。気持ちを抑えるのが辛かったら、告白をしてしまうのもいいのかもしれないわね。うーん…大したアドバイスができなくて、なんかごめんね」
「いえ、話せて気持ちが少しスッキリしました。ありがとうございます。また今後のお話も聞いてくださいね」
「うん。また聞かせてね」
※
1ヶ月後
※
「正田くんおはよう」
「あ、みちこさん おはようございます」
「今日もよろしくね」
「みちこさん! みちこさんに相談したいことがあるんですけど、お話を聞いてもらえますか?」
「うん。私でよければ、お話しを聞くよ」
「ありがとうございます。実はですね、あの…。摩耶さんに告白されたんですけど、僕はどうすればいいですかね?」
「えっ?摩耶ちゃんに?」
「そうなんですよ。それが、今すぐ付き合って欲しいという訳ではなくて、ただ僕のことが好きだと伝えたかっただけらしくて」
「そ、そうなのね。でも今すぐ答えを求めていないなら、摩耶ちゃんへの答えもまだ保留でいいんじゃないかな?」
「そうですね。でも僕は今好きな人がいるんです。しかもその人のことを、どんどん好きになっていて…。みちこさん、この気持ちが分かりますか?」
「正田くんの気持ちの全ては分からないかなぁ。でも恋って辛いときがあるわよね」
「なんで分かってくれないんですか。でもそうなんです。最近少し辛いんです」
「あんまり悩まないでね。その恋が叶うといいね」
「はい。ありがとうございます。この話は摩耶さんには、絶対に内緒ですよ!」
分かってるわよ。
こんな話、摩耶ちゃんに言えるわけないじゃない。
これって三角関係になるのかなぁ。
なんかソワソワしちゃうわ。
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