第3話「吟じます」

今日も私は「アンガトーシュクレ」でケーキ作りです。



早番の私がケーキの仕込みをしていると、遅番の正田くんが出勤してきて厨房にきました。



今日は私と正田くんはペアでケーキを作ります。



私と正田くんは仕事をしながらよく話すのですが、今日も正田くんが話題を振ってきました。



「ねぇ、みちこさん、僕は愛は与えるものだと思うんです」



「君は神様か何か?」



と、いつものやり取りです。



「いや、好きな人には迷惑かもって思っていても、色々してあげたい気持ちが溢れてきて、色々やってしまうんです。みちこさんはこの気持ちが分かりますか?」



そう正田くんに言われて、よくよく思い返してみると、私も好きな人への貢ぎ癖があったし、重いと分かっていたけど弁当を作ってあげたし、そんな思い出がありました。



だから



「あると思います!」



と答えました。



「なんで今急に吟じたんですか?」



と、微笑みながら、正田くんがいつものようにツッコんでくれます。



「ところで、みちこさんは明日休みですよね?何をするんですか?」



「人と会うわよ」



「それは誰なんですか?」



「え?それ一々名前を言わないといけないの?今回は秘密」



「もう、なんなんですかそれ。もういいです」





正田くんごめんね。明日は彼氏とデートなの。





「あ、この前に貰ったシフト表を見ましたか?今月はみちこさんと一緒に働ける日が少ないから、僕は寂しいです」



「今日は私と話せるんだから、それで満足しなさいよ」



「わかりました。今日も一杯話しましょうね」



「OK!」



と、ローラのモノマネをします。



「なんで急にローラのモノマネするんですか?」



って正田くんは楽しそうです。





ごめんね正田くん。



でもごめんって謝ることなんてないわよね?

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