ポーさんの下地の話

隅田 天美

「ありがとう、私の好きなハゲキャラ」(ひでぇ)

 私が短大生時代はほぼ家で小説を書いていた。

 パソコンではない。

 ワープロである。(「ワープロを知らない?」 レッツ検索か、レッツグーグル先生)

 ほぼ毎日小説を書いていた。

 それを教授せんせいや先輩に読ませて意見を聞いては悦に入っていた。(そして、布団の中で自己嫌悪する)

 

 ある日。

 ある先輩が言った。

「隅田」

「はい」

「お前の書く小説ってアクションシーンが多いな。そういうの好きか?」

「……あまり意識はしていませんが、アクションものを読むのは好きですね」

「じゃあ、格闘ゲームって分かるか?」

「はぁ、地元のおもちゃ屋で飢狼伝説スペシャル(SNK)を少々」

「誰使っていたん?」

「タン・フー・ル―です」

「あー、あの爺さんか……お前、ジジイキャラとか好きなの?」

「ええ、まあ」

「じゃあ、俺について来い」

 先輩は席を立った。

 私は、その後をついていった。

 連れてこられたのは短大近くにあるゲームセンターだ。

 この頃はゲームセンター全盛期で主に格闘ゲームと音楽ゲームが流行っていた。

 中に入った私は大音量と煌びやかな光に圧倒された。

「隅田、ここに来い」

 奥に『飢狼伝説3』の筐体機があった。

 デモ画面が流れていた。

 そこにいた編み笠を被った僧侶がいた。

 望月双角。

 一目惚れだった。

「お前、そういうの好きそうだよなぁ」

 先輩は笑った。

 その日から、私は主に短大とアパートの往復に時々ゲームセンターが入った。

 同時期、ある伝手からネオジオCDを頂いた。

 小説でネタが出ないときなどに気晴らしでやっていたが、途中からドツボにハマり深夜までやっていたことも珍しくない。


 そんな私も卒業して一年就職浪人をして、ある企業に就職できた。

 親からパソコンを譲り受け、私は自分のホームページを立ち上げた。

 色々なものを書いていた。

 でも、あるサイトのリンク欄でこんな紹介をされた。

「望月双角のページ」

 私は思わず笑った。

 しかし、そんな平穏な生活はすぐに崩れた。

 私はリストラされ、さらに心の病気が発症。

 私の三十代のほとんどは心との対峙だった。

 望月双角の名前すら薄れたころ、私は何故かストリートファイターの関連動画を見るようになった。

 最初はダルシムだった。

 理由は、今でもはっきり覚えていないが「ゲームセンターCX」で有野課長がプレイをして興味を持ったから。

 その後、これも理由不明でサガットにハマる。


 思い返せば、みな、頭髪がない。

 禿が極端に嫌いというわけではないが、こうなると、私の好きな格闘技キャラが全員禿キャラになる。

 

 さらに年月が過ぎ、私は『WONDERFUL WONDER WORLD』を書いていた。

 その時、困ったのがポーの容姿だ。

 特にファッションなどには他の女性より疎いのでヘアースタイル何ぞイメージがわかない。

 私自身、天然パーマなのとセットするのが面倒なので頭の後ろで一つに縛っているだけだ。(notポニーテール)

 天啓が降りた。

「そうだ、ポーは天才的な狙撃者なんだから髪の毛邪魔だろう。スキンヘッドでいいか」

 性格や骨子は出来ても問題はまだあった。

 どんな口調で話すかだ。

 読み返してみると、「あ、これは双角だ」などと思うときがある。


 私の好きな禿キャラがポーを育てたのだ。


 まあ、時代は変わる。

 今、SNKは倒産し、格闘ゲーム自体かなり数が少ない。


 でも、あの頃の、技術的には未熟な部分はあったけど熱があった。

 具体的に書くと愛と想像力があった。

 今は版権とかでうるさいけど、昔は結構自由だった(と思う)。

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ポーさんの下地の話 隅田 天美 @sumida-amami

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