第21話

 訂正しよう。リゼ“は”消えた。

 彼女が着ていた服だけが宙に浮き、すぐに重力によって落下する。

 リゼだけが消えたと認識した次の瞬間、後ろから何かに抱きつかれて思わず声が出た。

「うわぁっ!?」

「わ、ちょ、ちょっと……その、えっと……失敗したから、うん、隠させて……」

「あー……。なんか隠す魔法持ってたり……って、止められるんだっけか」

「あ、土壁作る魔法なら申請してる。瞬間移動で使うから」

「じゃあ、さっさと作って着替えてくれ。その、なんというか……困る」

「ごめんね、次は気をつけるから……」

 流石に学年主席とだけあり土属性魔法も得意なようで即座に土壁を作り、向こうからこちらが見えないようにした。

リゼは少し離れた衣服を取りに行こうと動き、その瞬間に俺は目を閉じて背を向けたのでそれ以降は視認してはいないが、衣擦れの音から服を着ているのはわかる。

「ありがとう、もういいよ」

「俺は何も見てないからな」

「わかってるよ、ヘインの事信頼してるし」

「そりゃどうも。……それにしても服が脱げるって事は、高速移動じゃないんだよな?」

 瞬間移動と聞くと魔法で肉体を強化して視認できない速度で動くのを想像するが、それだと今回のような結果にはならない。何より、その移動で生じた衝撃の波が来るはずだがそんなものは無かった。

「そう。ちょっと思いつきでね、自分の位置を相対的に変える魔法を使ってみようかなって」

 そんな基本指示なんて当然ながらない。例外指示だ。

 更にユニークスキルを得るつもりなのかリゼは……。

「よし、もう一度。今度は自分が来ている服にも注意して……」

 再びリゼが視界から消え、白い下着だけがその場に残り落ちる。

 ちょっと離れたところに瞬間移動したリゼはそれに気づくと真っ赤になり、頬を膨らませながら、

「……見た?」

 と聞いてきた。

「そりゃ、まあ、見えてしまうよな」

 すごく気まずい。

「うううう〜〜〜……はいてくる……」

「わ、わかった……」

 瞬間移動は、まだまだ前途多難なようだ。

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