第19話

 着いた。屋内練習場と言っても広さはかなりある。無属性クラス以外の普通のクラスの教室4つ分ぐらいはある。

 場所は学院の中でも離れの方にあり、知っている人でないとまず立ち寄らないような場所にあった。

 といっても結構認知はされているようで、俺達以外にも生徒の姿は結構ある。下級生の制服も見える。

 俺が今までつるんできた奴が軒並み無属性クラスにいる辺り、知らないのも無理はないなと思った。

 シロノアもメリルも得意魔法はユニークスキルで練習するような事もなく、カレンは同じクラスになったのは初めてでこれまで普段どう過ごしていたのかは知らない。

俺も俺でこのような場所にくるような性格ではないし、知りようがなかった。

「さて、申請出さないと」

「申請?」

「ああそっか、初めて来たんだっけ。ここを使用するにはどの魔法を練習するのか最初に申請しないといけないの。練習中はある程度監視されていて、申請した魔法以外を使おうとすると止められちゃうんだ。危ないから」

「なるほど。マジックキャンセラーか」

 マジックキャンセラーとは例外指示の一つであり、俺が師匠から教えてもらった例外指示の対になるようなものだ。

 俺の例外指示が自身の基本指示適正を書き換えてどんな魔法でも使えるようにするものだが、マジックキャンセラーは他人の基本指示適正を書き換えて魔法を使えなくし、魔法の発動を阻止する。

「そう。確か寮は全面的に魔法使えないんだっけ?」

「基本的には使えないって言われているが、それは主流属性だけだな。ユニークスキルなら使える」

 マジックキャンセラー自体もユニークスキルに分類されるもので、使おうと思っても使えるものではない。先天的に扱えるものが稀に現れるらしい。

 現在の使い手は主流属性全ての基本指示適正を書き換えられるが、実は全属性を書き換えられる者は非常に珍しい。歴史上でも他に存在するかどうかのレベルだ。基本的には1つの属性しかキャンセルできない。

 ちなみにその現在の使い手は男子寮長であるシラヌイ先生だ。

「へえ、知らなかった。なんでだろう?」

「マジックキャンセラーの原理に由来するんだろうな。基本指示適正を書き換えて使えなくするのが原理だから、適性を書き換えるのが難しい例外指示を用いるユニークスキルは対処できないんだろう」

「なるほど。……あ、じゃあ書類書いてくるからちょっと待ってて。書き終わったら提出時に学生証見せなきゃいけないから準備よろしく。」

 受付に着くなり、リゼはそう言うと窓口横に設置してある机に向かっていった。サラサラと手慣れた手つきで筆を走らせている。

「あー!いつもの癖でシアの名前書いちゃった!」

 ……手慣れているのが仇になったようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る