第17話

 料理を受け取り席に戻り、食べ始めていると、徐にリゼが口を開いた。

「そうだヘイン、この後予定ある?」

「いや、特にない」

 丁度この後どうしようかなと考えていたところだ。

「じゃあちょっと昔みたいに魔法の練習に付き合ってほしいんだけど……」

「ん、いいぜ」

「ありがとう。ちょっと試したい魔法があるんだけど、一人だと不安で」

「あら、それなら私に言ってくれても良かったのに」

 横からイーシアが口を挟んでくる。確かに魔法の練習なら優秀なイーシアとでも良いだろう。

「ううん、失敗したら結構危ない魔法だし、シアを傷つけたくは無いから……」

「おい、俺ならいいのか俺なら」

「ヘインは昔から丈夫でしょ」

「あのなぁ……」

 呆れつつ視線をリゼから離すと、カレンが目に映った。

 思案しているような、何か悩んでいるような、そんなそぶりだ。今いる女子3人の中で1人だけ魔法に劣り、会話に入れない事に悩んでいるのかもしれない。

 とは言ってもこればかりは個人の問題だ。せめて2人に使えないユニークスキルの一つでも使えたら彼女の自尊心を守る事も出来るのだろうが……今度、自習中にでも声掛けてみるか。

「危険な魔法って、大丈夫なの?禁術だったりしないかしら?」

 いくら魔法学院生とはいえ、一定以上の威力を持つ攻撃系魔法やその他禁術に指定された魔法の使用は禁じられている。理由は単純明快で危ないから。死人が出る可能性も高い。

 朝にイーシアがシロノアに使った魔法も、本来ならば処罰を受けてもおかしくないものだ。彼女は絶妙な威力の調整により、禁止されている威力のギリギリ下で発動している。

まぁ、禁術自体はそもそも存在も使う方法も秘匿されており、まず使用された事を判別することは大抵の魔術師には出来ないが。出来るのは学院でもごく一部の教師だけだろう。

 禁術は使い手が悪用しようと思えば幾らでも出来るようなものが選ばれている。従って、その存在は王に直々に信頼された者にしか伝達されない。使おうと思って使えるものではないのだ。

 というわけでリゼが練習しようとしているものも禁術である可能性は低い。

「多分大丈夫だと思う。ただの瞬間移動する魔法だし」

 ……それ、禁術じゃないのか?

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