第15話
食堂は混雑しているわけでも閑散としているわけでもなく、丁度いい塩梅の混み具合だった。
6人も居るので先に席を確保して、その後に券売機へ向かうことにした。3人づつ行くことにし、食堂慣れしている俺達3人は分かれてサポートに就くことに。
先にイーシアとシロノア、そしてカレンが行くことになり、残ったのは俺とメリルとリゼ。
「んひひ、それで、お二人はどういうご関係で?」
3人になった途端メリルがニヤつきながら聞いてくる。
「ん?だからさっきも言っただろ、幼馴染だって」
「いやいや、幼馴染っていうのがもう怪しい。訳ありな関係なのを隠すための嘘にしか聞こえないって。ヘインは寮住みなのに、どうやってリゼリアと知り合ったのさ?」
要するに平民と貴族が幼馴染なのはおかしいと言いたいわけだな。
「それはですね、私が小さい頃よく魔法の特訓をしていた場所でヘインと知り合ったからですよ」
「へぇ?何それ、詳しく聞いていい?」
「別に面白い話じゃねえよ。俺がいつも魔法の練習に使ってた森が実はリゼの所の所有地でな。知らずに入り込んでしまってた」
「その森は私の家が代々魔法の練習に使っていた所で、私も使っていたんです。結構広いのでばったりヘインと会ったわけではなく、私の魔法ではない痕跡を見つけて。それで誰か他にいることに気づいてヘインを探し出して接触したのが始まりです」
「その時は驚いたな、誰か他に居るなんて思いもしなかったから。それも同じぐらいの女の子だったからもっと驚いた。最初は迷子だと思ってた」
「だけど私はこう言ったんだよね。『魔法の練習なら、私も混ぜて!』って」
「ああ、確かそうだった。懐かしいな」
「ほうほう。十分興味深いよ、続けて続けて」
実はこの話には嘘が混じっている。リゼもマインドリーディングで俺の意思を知って尊重してくれているのか話を合わせてくれているが、重要な登場人物を一人隠したままだ。
俺の師匠もその場に居た。というか、師匠にそこに連れてこられて修行してた。途中からはリゼも一緒に修行してた。
おそらく師匠の事をリゼの家も知っていたのだろう、特に俺と師匠が何か言われたりされたりする事はなかったな。
「それでヘインと私はこっそり二人で一緒に魔法の練習をするようになったの。ほとんど毎日、幼年学校が終わった後決まった時間までね」
「でもリゼは天才肌だったからな、俺が練習してる横で昼寝してたりサボってばっかりだった」
「ちょっ、そんな事まで言わなくていいのっ!」
「はは、悪い。口が滑った」
「もう〜っ」
「うん、どうやら本当に二人は幼馴染みたいだね。疑ってごめん。……あれ、もしかしてヘインが元神童とか言われてるのって、このせい?リゼリアとの特訓中他の誰かに見られて誤解されたとかそういう」
本当は俺もリゼと遜色なく魔法が使えたんだが、こういう誤解をしてくれるならありがたい。その設定を使わせてもらおう。
「あー、まあ多分そんなとこだろうな。俺の実力以上に過大評価された理由は」
「え、ヘインってそういう風に言われてるんですか?」
「昔は結構言われたが……今はこいつに揶揄われる時ぐらいにしか言われないな」
「そうなんだ……」
「ん?ちょっと待って、ヘインとリゼリアってさ、シロノアとイーシアの繋がりで結構顔合わせた事あったよね。でもこれまで全然話してなかったよね?幼馴染って気付いてたなら会話ぐらいしててもよかったんじゃ?」
メリル、そこに気づいたか。理由は単純だけどな。
「そりゃまあ、俺とリゼが人前で仲良さそうに会話してたら色々とまずいだろ。身分とかさ」
「それは分かるけど、じゃあなんで急に話すようになったの?」
確かに謎だ。今日急にリゼから話しかけられたな。
「私が話しかけたんです。……そうっ、一緒に練習してたヘインが黒ネクタイを着けてるのを見て、ちょっと我慢できなくなっちゃって」
「俺も人前で話しかけられたからもういいかなって思って今は普通に話してる感じだな」
「なるほどねぇ。……なるほどねぇ」
何かを察したのか、メリルはニヤニヤしている。全く見当もつかなくてなんだか悔しい。
くそっ、俺もマインドリーディングが使えたらな……。
「待たせたな、お前らの番だ」
このタイミングで三人が戻ってきた。
「おう。じゃあ、買いに行くか」
「うん。あっ、そうだ、何かオススメのメニューとかってある?」
「ボクのおすすめはね……」
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