第14話
「あの、私も御一緒してよろしいのでしょうか……?」
「勿論!貴女も一緒に食べましょう、食卓を囲む人数は多いに越したことはないわ」
食堂に向かう途中、カレンがおずおずとイーシアに尋ねている。言わば友達の友達の友達みたいな関係の上、相手は貴族だらけのこの学院でも上流に位置する名家の令嬢だ。尻込みしてしまうのもよくわかる。
だが、彼女達は身分差等を一切気にせずに接してくれる。それが様々な観点から見て本当に正しいのかどうかはともかく、俺達としては非常にありがたい。
そして、こちらも大貴族とのコネクションを手に入れたとやましい事を言うつもりは毛頭ない。お互いただの一個人として対等な関係にいる。
「あ、そう言えばまだ名乗っていませんでしたね。私はカレンと言います。よろしくお願いします」
「カレンさんね。私達の事は多分知ってると思うけど改めて、イーシアよ。友人からはシアと呼ばれる事が多いから、貴女も気が向いたらそう呼んでくれると嬉しいわ」
「はい、シアさん!」
「さん、はいいわよ……っと、こっちが」
「リゼリアと申します。よろしくね。私も気軽にリゼって呼んでくれると嬉しいな」
「シアさんにリゼさん!うう、私なんかがこう呼んでいいのか不安になります……!」
「流石にちょっと萎縮しすぎよ……。やりづらいわ。同い年なんだし、もっとも気楽に、ね?」
女性陣も無事に打ち解けそうで何よりだ。貴族でもなく寮生でもないカレンにとってこうした友人は貴重だろう。四年次の林間実習の時にもペアを作る課題で一人で狼狽えていた事からも伺える。その時は俺が声をかけた。
「そう言えばカレンは食堂に行った事はあるのか?」
シロノアが横から口を挟む。シロノア自身は俺とメリルが普段食堂を利用しているので一緒に行動しているため、すっかり食堂の常連だ。食堂のおばちゃんに顔を覚えられているぐらいには。……いつも二人前は注文するから、そのせいかもしれないが。
「いえ、ありません。私、お家がパン屋なので、いつも売れ残りを持ってきて食べてます」
「なるほど、そうだったのか。今度店教えてくれよ?……あれ、となると今日は?」
「昨日はお母さんがちょっと体調悪くて、お店お休みにしたんです」
「それで売れ残りもなくて、か。お大事に」
彼女の実家の話は補習等で一緒になった時にある程度聞いて知っていたが、どうも上手くはいってなさそうだ。彼女の栄養状態が芳しくない事は発育から推察できてしまう。
カレンを一言で表すならば薄幸の美少女という表現が的確だろう。
「そういうことなら、ボク達は普段食堂で食べてるけど、食堂にお弁当持参して友達と一緒に食べてる人も結構いるよ。もしよかったらパン持ってきている時もどう?」
「いいんですか?是非ご一緒させてください」
メリルもカレンを気にかけているようだ。見た目だけは美少女でいる事が多いメリルも居れば、この四人で食事を摂っていても不自然には映らないだろう。
こういうところはいい奴なんだよな、メリルも。
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