第12話
初日という事もあり今日は午前のみで授業は終わりのようだ。早速自習だった午前中を適当に本を借りてきて潰していると、シラヌイ先生がその事を告げ教室から出て行った。
「よっしゃ、飯行こうぜ飯」
シロノアが声を掛けてくる。傍らにはメリルもいる。そういえばこいつらはユニークスキルの使い手だったな。どうなんだろう、自習時には磨いたりするんだろうか。
ユニークスキルも一応例外指示を使用しているが、俺の例外指示とは違って習得も比較的楽な例外指示だ。数字で例えると基本指示が有理数、ユニークスキルの例外指示は無理数、俺の例外指示は虚数である。
「うーん、どうだろう。正直ボクのコレはもう完成してるようなもんだし。今更、ねえ?」
「確かにな。俺も一応遠視が得意だが……。これ使えるって言うと白い目で見られるからな。自習とかであんまり知られたくないんだよな」
さっきの疑問を問いかけると二人はこう返してきた。メリルはともかく、シロノアは大変だな。確かに遠視は便利な魔法だが、大体の人間はそれを覗きに使うなど悪用する事を思いつくし、それに用いる事ができる力を持っているだけで偏見は生じてしまうだろう。
「ま、とにかく今は飯だ。どこか食いに行こうぜ」
「いや、お前さっき弁当貰ってただろ」
「ああ、あれか?さっき食っちまったよ」
ほら、と空の弁当箱を持ち上げるシロノア。体格に見合った健啖だ。
「外はちょっと厳しいかな。行くなら食堂が嬉しい」
メリルがバツが悪そうに言う。同じ寮生だから同感だ。寮生は基本的に必要最低限しか金持ってないからな。
この学院には基本的に裕福な家の産まれの生徒が多いのであまり使われないが、金銭的余裕が無い生徒のために格安で食事を提供する食堂がある。場所は学院の校舎と寮の丁度間ぐらいだ。
ちなみに学院の生徒が授業料や施設設備の利用料を払う事はない。王立魔法学院だけあり、そういう費用は租税で賄われている。
「あの、食事でしたら私も御一緒して良いですか?」
いつのまにか後ろにいたカレンが声をかけてくる。
「俺は別に構わんが……良いのか?野郎三人に一人だけ加わって」
それに対してシロノアが返す。歓迎はするが大丈夫か、と意思確認のための質問だな。
「え?メリルさんは女性ですよね?」
鳩が豆鉄砲食らったようにキョトンとしている。まぁ、無理もないよな。カレンはメリルと初めて会ったようなものだし。カレンとこいつらの接点は俺しかない。
「いや、こいつは今の見た目はこんなんだが男子寮に住んでる。女子寮で見た事ないだろ?」
「あ、いえ、私は実家から通ってるので……。え、本当に男性なんですか?」
そういえばシロノアもカレンが実家通いと知らないんだっけか。まあこのクラスに来る奴は殆ど地方出身で寮生活だもんな。
「まあ一応、書類上は男。男子寮で俺の隣の部屋だからな。本当はどっちかは俺も知らない」
「さあてねえ、どっちだろうね」
メリルが楽しそうに言う。まあ、初見で性別が男かもしれないなんてわからないよなあ。俺だって知りたいよ。
「とりあえずメリルの性別はおいといて、食事なら大歓迎。今から食堂に行こうと思うんだけど、どう?」
カレンもこのメンツに加わる事に積極的だし、俺からも誘ってみる。
「はい、是非!」
「決まり。じゃあ、混まないうちに行こうか」
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