第6話
無属性クラスは振り分け試験においてどの主流属性も学年平均以下の者が在籍する事になるわけだが、他の属性がそれぞれ160人程度いるのに対し、このクラスは30名ほどしかいない。だからこそ余計に他のクラスから見下される事になるわけだ。
人数に比例するように他のクラスと比べて圧倒的に狭い教室は、落ちこぼれの名に相応しく荒れている。備品も明らかにボロボロだ。どうやら学院側も、俺たちに投資するメリットがないと認識しているようだ。
狭いので一度教室を見渡せば大体のクラスメイトの顔が見えるわけだが、その中に見知った顔を見つけた。
彼女もこちらに気付いたようで、ぱぁぁと顔を輝かせたのちにこちらへ向かってくる。
「あっ、ヘインさん!よかったぁ、知ってる人がいて……」
「カレンか。久しぶりだな」
「うん、林間実習以来ですね。周りに顔見知りがいなくてちょっと不安だったんです……。これから三年間よろしくお願いします」
彼女はカレン。これまで同じクラスに配属されたことはないが度々魔術、学術の補習で顔を合わせたため知り合いになり、四年生の時に行われた林間実習では同じグループになった。その時に色々あったのだが、長くなるので割愛。
魔術師を国家が重宝してきた歴史の都合上この首都には魔術師の貴族が多く、この学院もその令息令嬢が殆どである。しかし彼女は街のパン屋の娘であり、早くに父を亡くして母と妹と三人で暮らしているらしい。
メリルも俺もそうではあるが、貴族じゃない出自の学院生は珍しい。学年の一割にも満たない。
しかしやはり血筋というものは実に残酷で、そういった生徒の殆どは才能に恵まれずここ無属性クラスに配属になる。数人通常クラスに配属になる者もいるが、そのクラスで上位になることはまずありえない。トンビが鷹を産む事は十年に一度あるかないかと言われているようだ。
もっとも、その鷹は血筋の制約を超越した存在であるためか、極端に優秀な生徒であるという。とは言っても優秀な血筋の多い学院生の中でトップクラスになれるという事は必然的に平民の出自にしては極端に優秀であると言えるわけだが。
今年もその御多分に漏れず、見渡す限りだとほぼ全てのクラスメイトが平凡な出自のようだ。彼らの両親からすればあわよくば国家魔術師に、と期待もあっただろうが、悲しいことにこれが現実だ。血には抗えない。
やはり貴族はシロノアぐらいだな。これまでも貴族が極端に少なかったからこんなに設備も汚いんだろう。貴族も一定数いればこんな事にはならなかっただろうに。
身分の格差も無属性クラスと他のクラスの間の格差を助長しているのは間違いない。今年はシロノアが居るが、こいつクラスの血筋ならゴロゴロ居るからな。これまでと変わらないだろう。
……なるほどな。こうしてみると、この無属性クラスは最初から俺達平民を他の学院生、つまり貴族が見下せるように作られている可能性がある。上には上がいるが、下には下も居ることを顕示して自尊心を保てるように仕込んであるのかもしれない。それも、伝統的に。
つまるところ、俺達はスケープゴートだ。そしてそれをクラスメイトの奴等も勘付いている。
ああ、酷い構図だ。
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