一章 「【リバース】を手に入れることになったワケ」
1:「成人と、冒険職鑑定―①」
そして今日。
俺は――、青年レイ・アルクールは、大きな一歩を踏み出すのだ。
「今日は俺の十五歳の誕生日。いよいよ、俺の冒険職適正が分かる日だ!」
気分はウキウキ。
身体は羽のように軽い。
小さなころから待ち続けた今日という日が、ようやく来たのだ。
おっと、今のうちにもう一度復習しておかないと。
冒険職っていうのは、それぞれの才能を可視化させたもの。
言うなれば、可能性だ。
その冒険職によって役割は変わり、同時に得意武器なんかも変わる。
そんな性質のため、冒険職は成人するまで不確定らしい。
そのため、きっちりと鑑定をされるのは、十五歳の誕生日を迎えた日となっているのだ。
「おいおい、レイ。まだ喜ぶのは早いぞ?万が一ってこともある」
「でも、父さんは剣聖。母さんは魔導師でしょ?なら俺もきっと凄い冒険職だったりするはずだよ!」
俺がこう言うのには根拠がある。
まず第一に冒険職の適性は遺伝する。
これ大事。
正確には”系統”が遺伝するというものなのだが、そこは割愛。
難しく考える必要はないだろう。
そして、両親とも二人の冒険職はそれぞれ剣系統、魔法系統の最上級職であり、遺伝したとしてもそうそう悪いものにはならないはずだ。
とくにこの二つの冒険職については稀に合わさることがあり、『魔法剣士』と。
そう呼ばれている。
「それにさ、冒険職って同じ系統なら上級職になる事も出来るんでしょ?」
「ああ。父さんはそうやってこの強さを手に入れて、お前の母さんとも出会えたんだ。元々は、剣士系統最低ランクの剣士だったがな!」
「そうなの!?」
がっはっはと大声で恥ずかしげもなく笑い声をあげる父さんは、道行く人たちを気にしていない。
周りの人たちも微笑ましそうに笑っているくらいだ。
「だから、行ってこいレイ。もう緊張はしてないだろ?」
「あ、うん!」
気付けばこのギルドハウスの中に入ってきたときの緊張はほどけ、周りにいる人たちの目もきにならなくなっていた。
「じゃあレイ君、こっちに来てもらえるかな?」
― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
「私は、このギルド【銀狼の爪】の依頼の管理とか、会計なんかやってるの。ここにいる皆と同じ冒険者だけどね。名前はエレンノーラ、よろしくー!」
「よろしくお願いします!」
すらりとした
印象は見た目と同じ少し年上のお姉ちゃんって感じだけど、とても優しそうな顔をしている。
目は宝石のような蒼。
髪は二の腕辺りまで伸ばしつつも、一部の髪はワンサイドアップにしてまとめている。
「それにしても、君がアルフレッドさんの息子さんだなんて信じられないなー」
様々な書類をカウンターの端へよけながら、エレンノーラさんはそんな事を言う。
「な、なんでですか?」
「だって君、全然怖くないもん。君のお父さんね、普段はものすっごく怖いんだから」
エレンノーラさんは俺の後ろにいる父さんを指さして、してやったりという顔をしながらにんまりと微笑む。
すると父さんは走り寄り、
「お前、レイになに吹きこんでるんだよ!?」
と顔を赤くしながら詰め寄る。
「なるほど、つまり父さんが家でいつも見せている笑顔は、偽物なんですね?俺と母さんにいつも見せる顔は、偽りだったと。ひどい、父さんがそんな人だとは……」
「あー、いや、そのーーえと、なんだ。父さんにも外の顔と内の顔ってもんがあってだな、レイと母さんに見せているのが内の顔で、ここにいる皆とかに見せている顔が外の顔で、」
あたふたとしつつも弁解を始める父さん。
その顔は赤く、身につけている白い衣服のせいでやけに目立つ。
「おーっ、やっぱりアルフレッドさんたら家族には甘いんですねっ!」
しかしエレンノーラさんはそんな父さんの言葉の一部を聞き逃さず、建物内全体に響き渡るような通る声で、わざとらしく言った。
「まて、そんなことはない!いや、ない事はないというか……ともかくだ!早くレイの冒険職の鑑定をしてくれ!」
父さんはその声に勝るとも
そこで俺は周りを見渡す。
「まったく、剣を握ってない時の剣聖っていうのは、みんなこうなのかよ!」
「ふふ、まーたはじまったわね」
「本人はばれてないと思ってるけど、レイ君にちょこちょこ後ろから付いて行って見守ってる様子とか、皆見てるしな!」
全員が楽しそうに父さんの事を話している。
俺も思わずほっこり……、
「って、ん?」
ちょっと待って、今聞き捨てならない事が聞こえたぞ。
おそるおそる、俺は父さんが俺に付いて来ているといったお兄さんに、話を聞くことにした。
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