絶対負けない最弱職~死にかけになって手に入れた、付与効果反転スキル【リバース】がめちゃくちゃ強い~

ちっぽけなスズメ

プロローグ

0:「少年、冒険者になることを決意する」

「よーし、準備はいいかー?」



 しんとした草原に響きわたる、男の声。

 その目の前には、背丈が頭一つばかりしか違わない、男に似た青年が立っている。



 男の方は、茶髪にまだ年若い男であり、筋肉が凄い。

 もう一人の青年の方は、息子だろうか。

 男の遺伝子を色濃く継ぐ茶髪であり、同じような顔立ちをしている。

 体つきは父には及ばないとはいえ、引き締まった身体から鍛えているのが見て取れる。

 


 とまあ、俺と父さんを傍目はためから見ていればそんな感じだろうか。

 そして、そのような人たちから二人はなぜこんなところにいるのかと聞かれたら、俺は今からする稽古のためと答える。



「いつでも大丈夫です!」



 俺は、あごをひいて頷きつつ、木剣を握る手に一層力を込める。

 そうして剣を向ける先は、父さんのいる方。

 今、向かい合った俺と父さんは、たがいに剣を向け合っている。

 


「さあ、いくぞレイッ!!」



「はいっ!」



 そうして、猛々しい掛け声の合図とともに、稽古たたかいは始まった。


 合図とともに駆けだし、最初に攻撃を仕掛けたのは父さん。

 十メートルはある距離を一瞬で詰め、剣を振るう。



「はあぁぁぁッ!」



 剣で受けようとも思ったが、そっちは筋力差で父さんに負けてしまう。

 何とか寸前で横合いに跳んだが、それでも完全にはかわしきれない。



「……つう――っ―ッ!?」



 鼻先を木剣がかすめる。

 木でできているといっても、触れた感覚は金属の剣と変わらない。

 単純に父さんの剣の一撃が重いからだろうが、少しの衝撃でもすごく痛い。

 鼻血がでそうなくらいだ。


 俺はつんとする鼻をおさえながら、父さんの方へ向き直る。



「どんどんいくぞーーッ!!」



「ちょ、やっぱ早すぎ――!?」



 やる気に満ち溢れる父さんは、俺の言葉を聞かずに再度剣を俺に向け、振る。

 容赦のない剣が、幾度も俺の身体に打ち付けられる。



「待って、ほんとに、いたいって!?」



「このくらいで根を上げるのか?お?」



 父さんの一方的かつ俺をもてあそぶ様子は、茶番にしか見えない(俺にとっては結構シャレにならないくらい痛い)が、なぜこの状況が生まれたのか。


 それは今日がある大切な日の前日であり、俺自身がいつもより厳しい稽古をつけてほしいと頼んだからに他ならなかった。



「それにしても、程度を考えてほしいよ……」



「よそ見してるんじゃねえぇぇぇぇ!!」



 ぼやく俺のわずかな隙さえ確実に狙ってくる父さんのそれは、最早稽古と呼ぶのを躊躇するほどであった。






― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―






「じゃあ、今日はここまでだな」



 草原の中で一際大きな存在感を放つ大樹にもたれかかり、父さんが木剣を放り投げた。

 俺も木陰に入り、その隣でしゃがみ込む。



「涼しい……」



 太陽を遮るものは無く、炎天下の下二時間にもわたる剣の打ち合いをしたのだ。

 当然涼は欲しくなる。


 そんな様子でしばらく風に当たりながら涼んでいると、不意に父さんが話題を切り出した。



「何度も言うが、お前はこれでいいのか?」



「これでいい……」



 そう言いかけようとして、俺は口をつぐんだ。

 これでいいだなんて、まるで俺が望んでいないかのような言い方じゃないか。



「俺は、これがいいんだよ。父さん」



「そうか……」



 父さんは少しさびしそうだ。

 少し周りより高くなっているこの丘から、周りを見渡すようにして少しうつむく。



「うん。だって俺、父さんと母さんの子供だよ?」



 へらへらと、空気を変えようとそんな事をいった俺は、木剣を手に取り、振る。



「冒険者になって、絶対に二人を超える。そして、おっきなギルドなんか作って、びっくりさせるから」



 勢いに乗って、なんか物凄いことを口走ってしまったような気がする。

 けどまぁ、いいか。



「――待っててね、父さん!」



 俺は、まだ見ぬ未来の栄光に目を輝かせつつ、父さんの手を握る。

 その手はとても汗ばんでいて、暖かい。

 でも、その瞬間少しだけ、さびしそうな父さんの顔が笑って見えた。






――――

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