最終話 遊歩道

愛するあなたへ


 あなたと初めて出会ったのは、いつの頃だったでしょうか。物心ついたときにはもう、あなたはそばにいたように思います。

 あなたとはとても長い間、共に過ごしてきましたね。だから、それだけたくさん、想い出があります。


 あなたとは、初めてできた友人と一緒に遊びました。学校で嫌なことがあったときは、あなたの元へ駈け込んで泣きました。好きな人との初めてのデートで緊張していたときも、そばで支えてくれました。結婚して子どもが生まれたら、その子をそっと、見守ってくれましたね。


 もちろん、あなたとの想い出は、良い想い出ばかりではありません。

 はしゃぎすぎて大ケガを負ったこともありました。一緒にいたときに、知らない人に声をかけられ、危ない目に遭いそうになったこともありました。ふとしたきっかけで、あなたの体の一部が大人たちに非難されたこともありました。けれども、あなたはどのようなことにもめげずに生きていて、強さを感じました。


 あなたの広くて優しい心や、誰にも負けない強さ、そして何よりも、いつも私に寄り添ってくれるところが大好きです。だから今、毎日のように続けていることがあります。大好きなあなたの元で、あなたのおかげで結婚できた私の愛する夫、タカシと共に、あなたの体の一部である遊歩道で、朝の散歩を楽しむことです。


 公園さん、ありがとう。これからも私たちをよろしくお願いします。


                               緑川キミコ 

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遊具にまつわるエトセトラ 須戸 @su-do

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