うるうる年
鮭さん
第1話
今年は四年に一度の閏年。よって、2月29日があります。そしてついに今日、2月29日を迎えました。
「やったー!!おめでとう!!」
「お誕生日おめでとう!!」
「四年に一度のお誕生日!!盛大に祝わなくちゃねー!!」
四年に一度しか誕生日が来ない人々、2月29日生まれの人々とその周辺がはしゃいでいます。いいですね。それはそれはめでたい。それはそれはめでたいことです。みんな、もっともっとはしゃげ。もっともっとはしゃげ。四年に一度しかはしゃげないのだから。はしゃげ、はしゃげ。ちなみに、たかしくんもその一人。同じ年に生まれた人々はもう48歳。おじさんやおばさんとして立派に生きています。しかし、たかしくんはまだ12歳。小学校をやっと今年卒業できるのです。
「やったね。たかしくん!!遂に、遂に今年は小学校を卒業できるね!!」
先生がお祝いしています。ほとんどの先生はたかしくんより後に生まれた人々です。
「ははははは、嬉しいや先生。ありがとう。閏年に生まれたお陰で僕は他のみんなよりたくさんお勉強することができた。きっとどんな問題が来てもコテンパンにやっつけることができるよ。先生方が一生懸命教えてくれたおかげさ。ありがとう!!ありがとう!!」
たかしくんは満面の笑みで感謝の意を表明しています。しかし、その一方で.....
うるうるうるうる、うるうるうるうる。
おっと、泣いています。年が、泣いています。
うるうるうるうる、うるうるうるうる。
「それは閏年じゃなくて、うるうる年じゃねーか!!」
たかしくん、突っ込みます。ナイス突っ込み、その通りですね。流石、みんなよりたくさん勉強しただけありますね。的確な突っ込みです。素敵です。素敵です。
「たかしくんに十点!!」
先生はナイス突っ込みをしたたかしくんに点数をあげました。
「ありがとう。先生。こんな突っ込みができるようになったのも、先生方のおかげだよ。」
たかしくんは喜んでいます。そして同時にお礼も言いました。さすが、小学6年生。年は突っ込まれて痛かったのでしょうか。より激しく泣き始めてしまいました。
うるうるうるうる、うるうるうるうる
お、幼い。幼すぎやしないだろうか。年よ。いくらなんでも........。泣きすぎでは.....。いや、まあ幼いか。まだ生まれてから二ヶ月しか経っていないのだから。まあ、幼いか。しかし、しかし、うーん。12ヶ月を120歳として(この時代の平均寿命は120歳まで伸びていたのだ!!)も20歳くらいのはずだけどなあ.....。なぜ泣いているのだろう。うーむ、うーむ......。20歳あたりといえば.....就活の時期......。そうか!!そうか!!もしかしたら就活に苦労しているのかもしれない。内定をあげよう。そしたらきっと、泣き止むのではないのだろうか。そう、たかしくんは考えました。
「年よ。弊社、株式会社たかしの社員として共に働かぬか?」
「嫌だ!!労働は嫌だー!!」
年は内定が出なくて泣いていたのではなかったようです。労働が嫌で泣いていたのでした。
完
うるうる年 鮭さん @sakesan
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