第43話 ローレンシア歓喜祭まであと63日(9月28日) 

 ジアースとミュウは朝起きて体操し、深呼吸して気持ちを切り替えてそれぞれの職場へ行った。

 ジアースはイムラ教指導者が来るということで、その指導者と対話するため、ザバンの元へ行った。そこにはカイザーがいた。

カイザー:ジアース様。イムラ教最高指導者の名はロザックといいます。ロザック殿との対話にザバン様も準備しています。ジアース殿は勝てますか?

ジアース:勝つということより、納得させることですよ。

カイザー:そうでした。

 と、そこに奥の部屋からザバンが出てきた。

ザバン:ジアースよ。よく来た。カイザーよ。ロザック殿をここへ連れて来てくれ。

カイザー:わかりました。

 と、カイザーはロザックのところへ行った。

ザバン:ジアースよ。イムラ教についてだが、私は仏というものがいまいちわからない。

ジアース:仏というものは全てを悟ったものです。

ザバン:なるほど。ジアースはその仏というものはわかるのか?

ジアース:イムラ教の経典の仏とは違いますが。

ザバン:まあ、ロザック殿が来てから話を進めよう。

 と、カイザーはロザックを連れてきた。

ロザック:私はロザックと言います。

ザバン:私はローレンシア王国国王ザバンです。

カイザー:私は国務大臣のカイザーです。

ジアース:私は副国務大臣のジアースです。

ロザック:私はザバン様がどうしても仏というものを聞きたいと言われまして、来ました。ザバン:では、我々はどんな質問をしてもいいのですな。

ロザック:はい。

ジアース:では、仏とは何でしょう。

ロザック:いきなりそこですか。仏とは全てを悟るものです。

ジアース:全てを悟った先には何があるのでしょう。

ロザック:そうですな。悟りというのはあの世に帰る準備と思っています。

ジアース:では、生きることによって悟るということですか?

ロザック:そうです。

ジアース:では、ロザック殿はどういうことを悟っておられるのですか?

ロザック:まず、この世は原因と結果があります。現在の因は過去にあり、未来の因は今にあります。

ジアース:なるほど。で、この世はどういうものと思いますか?

ロザック:生きることで何かを見つけようと思います。

ジアース:その何かとは何でしょう。

ロザック:己が生きる道です。

ジアース:その道は社会とはどんな関わりがあるのですか?

ロザック:その道とは社会を超えたものですが・・・・・・。

ジアース:私が思うに、人は社会から離れて生きることはできないと思います。ロザック殿の論を聞いていると、己が生きる道は社会を超えているということは、この世に無い世界にあると聞こえますが。

ロザック:確かに・・・・・・。

ジアース:ロザック殿。私はこう考えています。その社会を超えた世界というのは理想郷、つまりユートピアと思います。で、我々ローレンシア王国の考えは、ユートピアはこの世で作るものと考えています。

ロザック:この世の中にユートピアを作ると。

ジアース:はい。人の最もいい所は、理解できる点です。また、物事を作る力があることです。この世でのあらゆる事は人が成長するためと思っています。

ロザック:なるほど。いきなり極論から入られると、私が用意していた答えは不要になってしまいますが、ジアース殿の言われることはポイントを突いています。

ジアース:私は悟りとは自らの心の中にあると思います。また、生きるという点から考えると、全員が生きるのであれば、お互いがお互いを思い合う、GiveアンドTakeの考えが必要であると思います。

ロザック:確かにおっしゃる通りですね。

ジアース:で、お互いがお互いの中で認め合って生きるべきと思います。

ロザック:確かに。

ジアース:で、ロザック殿は、カソンについてどう考えますか?

ロザック:そうですね。・・・・・・。難しい質問ですね。

ジアース:で、カソンは何を悟っていると思いますか?

ロザック:わかりません。

ジアース:私も、カソンが何をしたいかがわかりません。ただ1つ言えることは、1人の人間を陥れることは宗教の目的である生きることに反します。やってはいけないことです。

ロザック:その通りです。

ジアース:また、人間社会は権力で押さえるのではなく、徳によって治めるべきと思います。

ロザック:確かに。

ジアース:また、全員が納得できる形で治めるのが国の役割と思います。

ロザック:確かに。

ジアース:ですので、私は人を幸福へ導く道が悟りと思っています。

ロザック:そうですか。いや、私はローレンシア王国に感服します。

ジアース:では、シンについてはどう思いますか?

ロザック:ローレンシア王国が助けようとした者であるならば、カソンの言っていることは嘘でありますな。

ジアース:シンも人を幸福へ導く道を心得ていることはご存知ですな。

ロザック:それは何でしょう。

ジアース:大企業計画です。

ロザック:企業???いまいちわかりませんが。

ジアース:つまり、仕事で人々を救うのです。仕事というのは、人に役立つものであるからこそ存在します。人が人を助け、人が人に役立つことをし、報酬をもらって生活をする。これが企業というしくみというものです。ご理解いただけましたでしょうか。

ロザック:なるほど。

ジアース:これは基本中の基本です。

ロザック:・・・・・・。

ジアース:で、そういう世界の中で宗教はどうあるべきと、ロザック殿は考えていますか?

ロザック:生きる以上何かをつかみたいですね。その何かをつかむ、これが宗教と思います。

ジアース:ズバリ、その何かとは幸福でしょう。人は生きるのに幸福でなければ、生まれた意味はありません。

ロザック:なるほど。ジアース殿には勝てません。なぜ、宗教を持っていない貴国が外交で成功したのはジアース殿の裁量ではありませんか?

ザバン:その通りです。

ロザック:しかし、ジアース殿のような者が、ローレンシア王国を治めているのであれば、ローレンシア王国は安泰ですな。

ザバン:その通りなのです。

ロザック:また、ザバン殿も力量のある者を使う。この精神にも感服します。

ザバン:それは、力ある者が治めるのは国の基本です。

ロザック:しかし、私は貴国がうらやましい。

ザバン:では、ロザック殿。我が国を見物されますか?そこのカイザーに案内させますが。

ロザック:お願いします。

 と、カイザーとロザックは外へ出た。

ザバン:しかし、ジアースよ。私はこの国にジアースがいて本当によかったと思っておる。

ジアース:恐れ入ります。

ザバン:しかし、私もだんだんジアースのことがわかってきた気がするぞ。

ジアース:それは光栄です。

ザバン:では、ジアースは今日も忙しいであろう。時間をとらせてすまなかった。

ジアース:いえ。では失礼します。

 と、ジアースはザバンの部屋を出て、グリスのところへ行った。

ジアース:グリスよ。どうだ?

グリス:はい。クイズ大会の情報が漏れないようにするにはどうしたらいいかを考えています。

ジアース:その件だが、売れ残ったクイズ本を回収した分だけこの企画を手伝うものの収入を上げたらどうだ?

グリス:どういうことですか?

ジアース:つまり、情報が漏れるとクイズの参加者があらかじめ本を買う準備をして本が売れてしまうが、情報が漏れなければ本をあらかじめ買おうとするものがでなくなるため、回収率は高くなる。そこを突くのだ。

グリス:なるほど。考えましたな。ですが、売れないと私は困ります。

ジアース:いや、クイズ参加者は必死で本を買おうとするので、いろんな店を回るだろう。どの道売れることは変わりは無い。

グリス:ジアース様は頭が良すぎです。

ジアース:だが心配もある。本を売らないで本を回収されたらどうするかだ。

グリス:そこまで考えているのですか?

ジアース:だが、その場合は、配送組と企画組に分けて考えるか。企画組には回収できた分の報酬を払う、配送組には配達した分を払うということにすればどうだ。

グリス:恐れ入ります。

ジアース:で、配送組は、配達をしたという証拠を持参すると。その証拠はコンビニではハンコウをもらうことだ。

グリス:しかし、ジアース様も考えますね。

ジアース:だが、これで十分とは思わないが。

グリス:では、そのように準備します。

ジアース:では、私はここで切り上げる。

 と、ジアースはグリスと分かれ、王宮へ戻った。


 昼になった。ジアースは昼食を摂りに王宮の食堂へ行った。食堂には、ミミとハルがいた。

ジアース:ミミとハルではないか。

ミミ:ジアース様。こんにちは。

ハル:今日はミュウ様は?

ジアース:ミュウはオーディションの選考で今は部屋にはいなかったよ。で、シンはどうだ?

ハル:はい。シン様の言うことがわかってきた気がします。

ジアース:シンも頭の中ではいろいろ工面していてな。

ミミ:そのようです。で、ジアース様。今日は情報企画部へは来ないんですか?

ジアース:そうだなあ。覗いてみたい気がするが、シンにもプライドがあろう。

ミミ:でも、プライドという問題ではりません。仕事をきちんと遂行するのがローレンシア王国です。

ジアース:そうだな。

ハル:ジアース様は時間は無いのですか?

ジアース:いや、ある。・・・・・・。わかった。少し様子を見よう。

 と、3人は昼食を食べ、その後は情報企画部へ行った。


ジアース:シンよ。どうだ?

シン:はい。今日は順調です。

ジアース:で、今の進行具合は?

シン:国内組は、まず、宿泊施設を押さえ、飲食店もおさえ、歓喜祭のイベントを観賞できるツアー企画を組んでいます。

ジアース:正直、膨大な数だろう。

シン:はい。で、私が了解したツアー企画を海外組で海外の旅行会社と取引をさせています。

ジアース:なるほど。で、了解したものを見せてくれないか?

シン:ではご覧下さい。

 と、ジアースはツアー企画の1部を見た。


  歓喜祭ツアー企画:シャムルル編1(概要)

 宿泊施設

  オキューホテル・プラザホテル・ラミイホテルなど。

 日時

  11月30日~12月7日

 イベント

  ・ミスローレンシアコンテスト

  ・主張大会

  ・コンサート

 交通

  ヤマト線・チューリン線・オキューバスなど。

 食事

  シブカーレストラン・ディズレストラン、その他


シン:と、これは、シャムルルのツアー企画の概要です。この概要を元に細かいツアーを企画しています。

ジアース:例えば、これか。


 ミス・ローレンシアコンテスト(7泊8日間ツアー)その1

  宿泊施設

   オキューホテル

     IN PM3:00   OUT AM9:00

  外出先

     ミス・ローレンシアコンテスト会場

  交通・移動

     オキューバス

  オキューホテル概要

   ・料理

     イタラリ料理、アローン料理、フラリパ料理、ローレンシア料理

   ・部屋

     Aルーム:200G(1名当たり)

     Bルーム:100G(1名当たり)

     Cルーム:50G(1名当たり)

   ・施設

     ゲームセンター

     カフェ

     温泉・サウナ

     御土産屋


ジアース:なるほど、でこれが施設を変え、イベントを変え、日時を変え、何千とあるんだな。

シン:はい。大量にあります。正直、皆悲鳴を上げていると思います。

ジアース:シンも書類全部に目を通すのも大変だな。だが、大体わかった。私がここに来て気づいたことは、人が全然足りないということだな。

シン:はい。

ジアース:で、面接する時間がないと。

シン:確かに面接する時間はありません。適材適所に人を配置したいので、まずは面接に来たものにアンケートをとらせて下さい。

ジアース:で、アンケートの内容はこれだな。

シン:はい。


   情報企画部採用アンケート

  住所

  氏名

  海外へいった国

  国内で詳しい地域

  営業・オペレーターの経験

  旅行業界経験

  プログラム技術

   持っている資格

  ・国内旅行管理者(有・無)

  ・海外旅行管理者(有・無)

  ・プログラミング言語(A級・B級・C級・無)

  ・地理検定(1級・2級・3級・4級・5級・無)

  ・Webデザイナー

ジアース:なるほど。これならシンも人事がやりやすいな。

シン:はい。

ジアース:わかった。これを面接に来た人に私が渡して書いてもらえばいいんだな。

シン:はい。

ジアース:では、これから面接室へ行ってくる。

 と、ジアースは面接室へ行った。面接には約50人の人が集まっていた。ジアースはその約50人にアンケートを書かせ面接し、40人を採用した。

 情報企画部では今日中に人事変更がなされることになった。新しい人事は、明日シンがジアースに報告することになった。

 ジアースは面接で時間がかかったため、ミュウの部屋に帰ったのは夜遅くなった。

ミュウ:ジアース。お帰り。

ジアース:ただいま。

ミュウ:なんか大変そうね。

ジアース:ああ、シンの部門は正直1から始めている感じだが、シンはよく考えていることがわかった。

ミュウ:だけど、ジアースは夜ご飯は食べた?

ジアース:弁当を買ってきた。オーディションの曲を聞きながらこの部屋で食べる。

ミュウ:で、知力テストは明日までにできるのよ。で、最終確認。

ジアース:わかった。それにも目を通すよ。

 と、ジアースは弁当を食べ終え、その後は寝た。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る