第32話 ローレンシア王国の外交5(歓喜祭まであと74日:9月17日)

 次にザバン一行が回る国はアルド国である。アルド今日はイムラ教が盛んな国である。イムラ教とは、人の心の中には必ず仏があると説いている宗教で、カソンとの交流がある国でもあった。

 ザバン一行は、アルド国に着いて、すぐ会談に臨んだ。会談の場所はアルド国の礼拝堂で行なわれた。

シルク:私が大統領のシルクです。

マーナス:私が副大統領のマーナスです。

ゼフタン:私が国務大臣のゼフタンです。

キーン:私が外務大臣のキーンです。

 ザバン一行も自己紹介をし、対話が始まった。

ザバン:我々が貴国へ来た理由は2つあります。1つ目はシンの件、2つ目は我が国のイベントの歓喜祭とインターナショナルマーケットです。

シルク:シンの件とは貴国はシンをどうしたいのですか?

ジアース:シンを守っていただきたい。貴国はイムラ教は命は尊いものと説いている。また、イムラ教はこの世で生きることは悟ることと説いています。シンはこの世のほとんどに悟りを得ています。シンほどの者を殺すのは何故でしょう。また、シンは真実を積み上げてきた人間です。イムラ教が生命が無限と考えるなら、それはシンのためにある言葉です。シンには世界では信じられないほどの才能の持ち主です。また、シンの悟りとはこの世のしくみがわかっており、なおかつ、この世の人々を全員幸福にさせるものがあります。ぜひ、貴国の力を貸していただきたい。

マーナス:しかし、貴国は無宗教国家といいながら宗教の考えを見抜いているようで、我々は驚いています。

ゼフタン:宗教が無い貴国が何故そこまで宗教を理解しておられるのです?

ジアース:調べたからです。我々は思うに、仏とは悟りによって人は成長し、その魂の成長が仏へ行く道だと。で、その魂の成長というものはどういうものかと言えば、存在するもの全てに価値があります。さらに価値がある者ほど辛い経験をしています。1人の人間を殺すという行為はあってはならない行為です。我が国には死刑はありません。なぜなら、あらゆる生命には可能性があるからです。この私の言葉でシンを殺すことは容認できないと思いますが。

シルク:なるほど。仮に、シンが何か多くの物を悟っているとなれば、我々の主義主張である生命には価値がある、その価値を全て生かせるということになりますが、できますか?

ジアース:シンならできると思います。シンはあらゆる苦しみを知っている男です。それゆえ、シンの人生は密度が高い。高いゆえ悟りも速いのです。仮に、これからシンが生きていたら、この世がユートピアといわれるものができるかもしれません。ユートピアの世界とはルールある自由の世界のことです。つまり、天の道理の通りに自由に生きる。これがユートピアだと思っています。貴国はどう思いますか?

キーン:もっともな考え。我々の心を打ちました。

シルク:しかし、私はカソンが理解できませんな。

ゼフタン:私はシンは平和主義者であることは存じております。ですが、ケダイ殿も平和主義者です。

ガイ:だが、平和主義者のケダイが何故、1人のシンという人間を潰すのですか?シンがアローンで受けたものは相当ひどいものです。シンはカソンにボロボロにされても、大企業計画をやろうとしていた。カソンの妨害はシンと契約しようとした企業、会社、お店に脅しをかけたり、シンの知的財産を奪ったり、シンからありとあらゆるものを奪ったものです。人として許される行為ではありません。

ゼフタン:しかし、貴殿が王様なら、どう対処するのでしょう。

ガイ:はい。・・・・・・。守るべきものを守り、正しいものを守る、つまり、ケダイの件では和解が対処目的になります。

キーン:貴国はカソンを潰さないつもりなのですか?

マーナス:それなら、我が国もシンのために動いてみましょう。

ザバン:ありがとうございます。

ジアース:次に歓喜祭とインターナショナルマーケットというものを、我が国のイベントとして行なう予定です。歓喜祭はエメラル星全体の人たちに楽しんでいただければと思っています。また、インターナショナルマーケットに関しては、各国の文化財を集めます。そのことによる各国の産業が活発になればと思っています。細かいことは資料をご覧下さい。

 アルド国側は資料をざっと見た。

シルク:なるほど。確かに細かく書いてあります。我が国の利益に関することまで書いておられる。ザバン殿。貴国の対話術は核心を突いている。貴国には結論があるので、もっとたくさん聞いてみたいです。

ザバン:実は今日はあと3カ国回る予定です。

シルク:そうですか。今度、時間が作れれば貴国ともっと話がしたいです。

ザバン:ありがとうございます。

 と、ザバン一行は、アルド国を出発して、次のワビサ国へ行った。

 ワビサ国は多宗教国家であった。ローレンシア王国側の戦略は宗教から入ることになる。さっそく、ワビサ国との対談が始まった。

ワラン:私がワビサ国総理のワランです。

ホテン:副総理のホテンです。

リーチェ:国務大臣のリーチェです。

マルタ:外務大臣のマルタです。

 ザバン一行も自己紹介した。

ワラン:で、今回の会談の内容はシンの件と貴国のイベント、歓喜祭とインターナショナルマーケットの件ですな。

ザバン:はい。で、貴国は多宗教国家ですので、宗教のあるべき姿から、シンを見てほしいと思っています。

ホテン:宗教のあるべき姿とは何でしょう。

ジアース:それは、大事なものを守ること。また、あらゆるものを生かすことです。

リーチェ:なるほど。

ジアース:ですので、シンは真実の者であるがゆえに助けていただきたい。

ワラン:ジアース殿は実に雄弁家ですな。しかも、核心を簡単に突く。

ジアース:では、シンを認めていただけますか。

ホテン:シンとはどういう者ですか?

ジアース:シンはあらゆる世界を知っているものです。また、物事の因果関係のつながりで見ることができる者です。また、シンの目指す所は幸福の世界なのです。

ワラン:なるほど。貴国の説明を聞くと、まるでシンは何でもできるといった感じですか?

ガイ:はい。シンは世界を全体で見る男です。

ワラン:なるほど。しかし、シンは一説によると狂っているとか。

ジアース:狂っているフリです。

マルタ:なぜです?

ジアース:できるだけカソンを生かそうとしたからです。

ワラン:しかし、カソンはシンにとって敵ではありませんか?

ジアース:シンが敵といっているのはカソンであって、シンはカソンは敵とは思っていません。シンはあくまでもカソンの命が浄化することを望んでいたのです。しかし、シンの思いはカソンには届きませんでした。

リーチェ:それが本当だとしたら、シンは不憫ですね。

ザバン:ですから、我々が動いたのです。

ワラン:なるほど。考えておきましょう。

ホテン:で、大企業計画というものはどういうものだったのでしょうか。

ザバン:人々の暮らしが豊かになるものです。

リーチェ:でしたら、シンを潰そうとしたカソンが考えられません。

ジアース:だから、我々が動いたのです。

ワラン:なるほど。で、貴国はどうするおつもりでしょうか?

ザバン:何とか解決に持ち込みたいと思っています。

マルタ:しかし、我々の情報では、カソンはシンを受け入れないということですよ。

ジアース:すぐ解決というわけにはいかないでしょう。今回の訪問は、まず、世界にシンについて真剣に考えてほしいだけです。

リーチェ:しかし、難しい道を選びますね。

ワラン:だが、貴国のことは頭に入れておきましょう。

ザバン:ありがとうございます。

ジアース:あとは、歓喜祭とインターナショナルマーケットについてですが、詳しくは資料を参照ください。

ホテン:わかりました。今度、時間があったら、貴国とゆっくり話したいです。

ザバン:いえ、今回は急な訪問ゆえ、短い時間でも空けていただいて感謝しています。

ワラン:それは国王がいらっしゃるとなれば、迎えないわけにいきません。

ザバン:10分ほどでしたが、来たかいがありました。

ワラン:また、お会いしましょう。

 と、ザバン一行はワビサ国を後にした。


次はタロマ国である。タロマ国は女性が総理大臣の国である。ザバン一行はタロマ国に着くやいなや、総理邸で対談が行なわれた。

ミセラ:私がタロマ国総理大臣のミセラです。

ロバク:私は副総理のロバクです。

スマル:私は国家戦略大臣のスマルです。

ダルン:私は国務大臣のダルンです。

 ローレンシア王国側も自己紹介して話は進んだ。

ザバン:今回の件は、シンの件と我が国のイベント、歓喜祭とインターナショナルマーケットの件です。

ミセラ:何故、貴国はシンを擁護するのです?

ザバン:シンは世界ではなくてはならないものだからです。

ロバク:しかし、シンの大企業計画はあるのですか?

ザバン:あります。

ロバク:大企業計画とはどういうものなのでしょう。

ジアース:簡単に言えば、産業の活性化による生活の改善、人間性の向上、経済の再生です。

スマル:しかし、簡単なことではないのではありませんか。

ジアース:しかし、シンの言うことは的を得ています。

ダルン:的を得ているとはどういうことですか?

ジアース:シンはどうすればいいのかという答えがあります。もし、シンに財力があり、組織があれば、簡単にできたのです。いままでは、考えがあっても資金がなくてできなかったのです。プロセスには問題はありません。シンには我が国で大企業計画をやらせてみようと思っています。必ず結果は出ます。

ミセラ:なるほど。で、貴国は我が国に何を求めておられるのですか?

ジアース:シンをフォローしていただきたい。

ロバク:それは難しいですね。

ザバン:今の経済状況を大企業計画で解決できるとしてもですか。

ミセラ:シンには結果がケダイ殿に比べて少ない。

ガイ:それはケダイのほうが長く生きているからでしょう。

ザバン:シンのことは人権問題なのです。カソンはシンに対し、人としてありえない事を

しています。もちろん天の道理に反しています。ですから、我々は戦うのです。この世に何が大切かをわからすために。一人の人間が全世界を救うことがあるのです。カソンは人類を騙せても天は騙せません。貴国は人の道というものを熟慮している国です。人の道というものをすでに失っているカソンがこれから存続し続けても、カソンが全員を幸せにする力はありません。まず、考えがないからです。仮にシンを殺したら、シンの死後、シンが書いていた小説を奪っていましたので、もし、カソンが小説の続きを書けなかったとしたら、我々はカソンに戦争を起こします。

ミセラ:なぜ、シンのためにそこまでできるのですか?

ザバン:シンはそれほどの男なんです。また、シンは人の道というものをわかっています。これ程わかっている者を死なせられません。

ロバク:そうですか。

スマル:私としてはシンをもっと知りたいですが。

ザバン:それではシンと対談しますか?

ミセラ:そうですね。

ザバン:貴国はシンにとって初めて話を聞いてくれる国です。感謝します。

ジアース:あとは、歓喜祭についてと、インターナショナルマーケットについての資料を持ってきましたので、お渡しします。ちなみに、そのインターナショナルマーケットはシンがこの企画に加わっています。

ミセラ:そうですか。わかりました。

ロバク:しかし、我々はシンの大企業計画に非常に関心があります。もし、産業を活発になるとすれば、シンはどうやってするのでしょう。

ジアース:簡単です。お客様の希望、願望、ニーズを考えて事業を展開することです。

スマル:なるほど。具体的ですな。

ジアース:シンが起そうとした事業はIT,出版、教育、飲食、イベント、観光、不動産、技術、福祉、などといったものです。

ミセラ:本当に産業を活性化させることができるかもしれませんね。

ジアース:では、我々は時間ですので、次回はシンを連れてきます。

ザバン:今日はあと1カ国回る予定なのです。時間がなくて申し訳ありません。今度は我が国で対談しましょう。

ミセラ:そうします。

 と、タロマ国を後にした。


次はラシカ国である。さっそくラシカ国の総理官邸に訪れた。

ムーン:私がラシカ国総理大臣のムーンです。

ジュラン:私が副総理のジュランです。

アフロ:私が国務大臣のアフロです。

シャラ:私が元総理のシャラです。

 ザバンらも自己紹介した。

ムーン:で、貴国の目的はシンの件とイベントの件でしたな。

ザバン:そうです。

ジュラン:しかし、貴国はなぜ、シンをかばうのですか?

ザバン:死なせてはならない者だからです。

シャラ:貴国はシンのことを相当買っているようですが、シンとはそれ程の者なのですか?

ザバン:シンが生きていれば、この世は極楽浄土となると言っても過言ではありません。

アフロ:しかし、それは言い過ぎではありませんか?

ジアース:シンは人類全員が幸せになるプロセスを持っています。

シャラ:それは具体的には何ですか?

ジアース:大企業計画です。

ムーン:しかし、その大企業計画はうまくいかなかったのではありませんか?

ジアース:それはカソンが妨害していたのと、資金がなかったのと、一人であったといった悪条件が重なったからです。

ジュラン:なるほど。

ジアース:そして、シンには我が国で大企業計画をやらせようと思っている次第です。

ムーン:なるほど。

ザバン:貴国がシンに対して聞きたいことは他にありますか?

シャラ:質問は貴国に対してですが、貴国はカソンとはどういう風にしたいのですか?

ザバン:和解です。と、同時にシンを受け入れてもらうことです。

アフロ:しかし、シンとカソンの両立は難しいのでは。

ザバン:しかし、何とかしたいのです。

ムーン:貴国がカソンと対話したらどうですか?

ザバン:カソンとの対話はシンが世界で受け入れられてからでなくては成功しません。カソンの後ろ盾は世界ですので。

シャラ:なるほど。それで世界を回っているのですね。

ザバン:シンを認めていただけませんか?

ムーン:シンとはどういう者なのですか?

ザバン:シンはこの世の中の幸福を本気で考えています。また、プロセスも持っています。シンは全てを有効に使う術を心得ています。あらゆる産業の成長を考え、実行できるものです。

ジュラン:なるほど。本当にそうなるとしたら、死なせてはもったいないですな。

ジアース:だから、我々は必死なんです。

アフロ:なるほど。人権という言葉だけではシンは助けられないが、国に実益があるとなると、助けたくなりますな。

ジアース:どうでしょうか。

シャラ:よく考えてみます。

ムーン:で、後は、貴国はイベントをやるとか。

ジアース:はい。歓喜祭とインターナショナルマーケットです。歓喜祭では各国の人々に楽しんでいただく企画で、インターナショナルマーケットは産業の再生が目的です。

アフロ:なるほど。

ジアース:詳細は資料を一読して下さい。

 と、ジアースは資料を渡した。

ムーン:では、後でゆっくりと見ましょう。

ジアース:よろしくお願いします。

ジュラン:では、貴国との会談は十分ほどでしたが、貴国のことはよくわかりました。今度、ゆっくり話したいものですな。

ザバン:はい。では、これで失礼します。

 と、ザバン一行は総理官邸を後にし、ラシカ国のホテルに泊まった。そこでザバンはジアースに言った。

ザバン:ジアースよ。お主は歓喜祭の事もある。後のことは我々に任せて、お主はローレンシア王国で手腕をふるってくれ。

ジアース:しかし、各国への歓喜祭の宣伝とインターナショナルマーケットの件の宣伝は誰が行なうのですか?

ザバン:サハリンと交代だ。インターナショナルマーケットはまだ先だから、改めて宣伝すればいい。サハリンなら歓喜祭のことは把握しておろう。

ガイ:ジアースよ。お主が凄い男だということはよくわかった。だが、ジアースの話の仕方で、外交のやり方がわかったつもりだ。後は任せろ。

ジアース:わかりました。ガイ様。テルル殿。後をよろしくお願いします。

ザバン:カランを呼んでおいた。カランと飛行船で帰るといい。

ジアース:わかりました。では、さっそく今から帰ります。

 と、ジアースはホテルの外で待っていたカランと合流してローレンシア王国へ帰っていった。








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