第11話 ローレンシア歓喜祭編その2 人材選出
朝がやってきた。ジアースとミュウとサハリンは、いつも通り庭で体操し、食事を終えて、ミュウの部屋の居間で、今日のことについて話した。
ミュウ:サハリン。今日は私の代理ってことで、予定を言っておくことがあるけど、今日は各省庁の大臣のところまでまわって、各省庁で選出された者と話をしてもらうから。
サハリン:わかった。
ジアース:だが、ミュウは今日は何をやるんだい?
ミュウ:へへっ。何でしょう。
ミュウは照れくさそうな様子をみせ、にっこりとしていた。
サハリン:それより、ジアース。私と一緒なんだから、準備しましょ。
ジアース:あ、ああ。でも気になるなあ。ミュウ。何かいいことでもあったのか。
ミュウ:別に。
ジアース:なんでそんなにわくわくしているの?
ミュウ:今日は記念の日なのよ。
ジアース:記念の日って、どういう日なんだ。
ミュウ:へへっ。内緒。帰ってきてからのお楽しみ。
サハリン:それより時間が無いから早く用意しようよ。
ジアース:そうだね。
今日のジアースのスケジュールは、各省庁からローレンシア歓喜祭企画組織団で運営する代表一人を選出された者と一人一人会って話すことである。ローレンシアには省庁は12あるので、その十二人とそれぞれ、初顔合わせを行なうのである。
出発の時間が来た。
ジアース:じゃあ、ミュウ。行ってくる。
サハリン:ミュウ様。じゃあね。
ミュウ:いってらっしゃい。でも浮気しないでね。
ジアースとサハリンはミュウの部屋を出た。
ジアース:今日のミュウの考えることは、いまいちわからんなあ。サハリンと一緒に行けと言っときながら、浮気しないでねと言うし。あの様子から言っても今日は何か大事な日なのかなあ。
サハリン:ふふ。
ジアース:なんだ。サハリン。気色悪い声を出して。
サハリン:ミュウ様の考えていることがわかった。記念の日の意味。
ジアース:どういう意味?
サハリン:教えてあげようか。
ジアース:ああ。
サハリン:キスしてくれたら教えてあげる。
ジアース:おい。さっきミュウに浮気するなって言われてから、まだ1分たってないじゃないか。
サハリン:冗談よ。でも、今の突っ込みは面白かった。
ジアース:まあいいや。帰ってきたらわかるんだろ。今日から90日間は激務になりそうだから、とにかく任務に集中しなくちゃ。
ジアースとサハリンは、話しながら玄関に行って、車に乗った。
今日の運転手はカランである。カランは運転しながらからかうように言った。
カラン:ジアース様。今日はミュウ様ではなく、サハリン様と一緒ですか。
ジアース:そうなんだが。これはミュウが決めたことなんだよ。
カラン:ミュウ様もいたずら好きですなあ。
ジアース:俺はそうは思えないんだよな。今日は記念の日だって言ってたからなあ。
カラン:なるほど。ジアース様。もしかして、ミュウ様はジアース様以外の男と関係があるかもしれませんなあ。実は、その男と密会でもするんですかねえ。いったい何の記念ですかねえ。
ジアース:今日のカランはやけにつっ込むねえ。
カラン:そりゃそうですよ。ミュウ様に毎回私とドミーのことをからかっておいでですからねえ。仕返ししなくてはねえ。
ジアース:それより、天気がいいなあ。
カラン:おっ。逃げですか。
ジアース:今日のカランは、よっぽど俺をからかいたいと見える。
サハリン:ところで、ジアース。今日はどういう順番で回るの。
ジアース:ああ。今日、カイザー殿とメールでやり取りして決めたのだが、まず、防衛庁、治安省、外務省、厚生省、交通省、労働省、法務省、通信省、と回って、最後にローレンシア大学に行くという流れだ。
ローレンシア大学は、ローレンシア王国の中で、最高の大学である。その大学には、ラバンバ、デバロ、エコー、コンバットが大臣でありながら、その大学の教授だからである。
早速、防衛庁についた。ジアースとサハリンは、車を降り、建物に入った。
役員の者に案内され、応接室で大臣のトールと、代表者のキサン(男)という者が待機していた。
トール:ジアース様。お待ちしておりました。
ジアース:この者がキサンですか。
トール:キサン。自己紹介を。
キサン:はい。自己紹介をさせていただきます。私の名はキサンです。防衛庁では、防衛大臣次官という地位で、職務に励んでおります。よろしくお願いします。
ジアース:キサン。こちらこそよろしく。では、トール殿、座って少し雑談でもしましょうか。
トール:はい。では、ここにお座りになってください。
ジアースとトールとキサン、サハリンの雑談が始まった。
ジアース:そういえば、トール殿とゆっくり話すのは初めてですな。
トール:そうですね。
ジアース:この際ですから、防衛庁から国王へ伝えたいことはありますか。
トール:私が言うのもなんですが、軍縮により、防衛費が減ると、わが庁の職員の給料または人を減らさなければならないときが着ます。その時はいかがしますか。
ジアース:なるほど、だが、実は考えていることがあるのだが、宇宙開発に防衛庁の能力を生かしたいと考えている。宇宙時代はもう来ていますからなあ。
トール:なるほど。それなら納得いきます。しかし、宇宙時代といっても宇宙船はこの星ではわが国は一つしかありません。しかも、その宇宙船はわが国で作られたものではありません。だから、宇宙時代はもう少し先になると思いますが。
ジアースは何も知らなかった。自分が乗ってきた宇宙船は、ローレンシア王国の技術で出来たものだとばかり思っていた。しかしその理由をトールに尋ねたら不思議がるので尋ねるのは止めにした。
ジアース:それでも、宇宙時代はきます。早いうちに。・・・ところで、キサンが代表になった理由は何でしょう。
トール:さすがに防衛庁は縦の社会ですからねえ。正直地位の高いもので無ければ防衛庁は動かせないんですよ。だから大臣次官である、つまり、防衛庁のナンバー2がこの企画に参加する代表になったわけです。
ジアース:なるほど。では、キサン君。今回の歓喜祭について、明日、各省庁の代表者が集まったところで会議をするが、今のうちに言っておくことはないか。
キサン:特には・・・。ただ私は言われた事に忠実に遂行するだけです。
ジアース:わかった。では、よろしく。だが、この企画について思いついたことは何でも言って欲しい。
キサン:心得ておきます。
ジアース:わかった。期待しているぞ。・・・。ではトール殿。今日は代表者全員と会わなければならないので、これで失礼します。
トール:わかりました。・・・。ところで、さっきから気になっていることがあるのだが、ミュウ様とは一緒ではないんですか。
ジアース:いや。ミュウに事情があってね。サハリンはミュウの代理なんだ。
トール:そ、そうですか。ははは。
サハリン:トールさん。誤解しないでくださいね。これはミュウ様が決めたことですから。
トール:まあ、事情があるのでしょう。つい余計なことを言ってしまいました。
ジアース:ははは。まあ、とにかく失礼します。
ジアースとサハリンは防衛庁を後にし、次の目的地、治安省に移動した。
治安省ではジアースとサハリンは案内人に大臣室まで招かれた。そこには治安大臣であるサムと、代表者のロカン(男)が待機していた。
サム:ジアース殿。ようこそ。
ジアース:サム殿。この者がロカンですか。
サム:はい。
ロカン:ジアース様。よろしくお願いします。
ジアース:ロカンの役職は。
ロカン:治安省本署署長補佐でございます。
ジアース:なるほど。彼が選ばれた理由は。
サム:私の考えでは、歓喜祭で治安省がやることは結局のところは、警備をすること以外にはないので、警備の指揮力がある彼が適役ではないかと思ったわけです。
ジアース:なるほど。ロカンはこの歓喜祭についてどう思う?
ロカン:正直に言って、私の職務は決まったことを遂行するのを安全に行えるようにすることと思っていますので、歓喜祭に意味が大きければ大きいほど、私の任務も大きなものとなると考えています。
ジアース:なるほど。わかった。後何かここでしかいえないことがあれば、今がいい機会なので、サム殿は何かございますか。
サハリン:あの。一ついいですか。
サム:はい。
サハリン:この前、私を拉致したものの黒幕は誰なんですか。
サム:実はですな。正直我々もそういったものの正体はつかめていません。相手はプロ中のプロと見ました。今、全力で操作しているのでしばらくお待ちを。
実は黒幕はガイで、サム自身もその事件に関わっていたので、当然、本当のことは言えるわけはなかった。
ジアース:それより、他はないか。
サム:ないですね。
ジアース:では時間もないので、我々はこれにて失礼する。ロカン殿。期待しているので、実力を大いに出していただきたい。
ロカン:ありがとうございます。
ジアースとサハリンは治安省を去り、外務省へ向かった。車の中でジアースとサハリンは話をしていた。
サハリン:ねえ、ジアース。私、少し退屈なんだけど。
ジアース:そうか?ミュウといる時はいつもこんな感じだぞ。それに、ミュウはこんな話でも楽しいっていってるぞ。
サハリン:・・・・・・。そうか。・・・・・・。
ジアース:サハリン?
サハリン:ジアース。いいのよ。どうやら私とミュウ様には決定的な違いがあるみたい。
ジアース:まあ、それより、次の外務省はもうすぐだぞ。
外務省に着いた。ジアースとサハリンは応接室に案内され、大臣のテルル(女)と代表者のスピーク(男)が待っていた。
テルル:ジアースさん。ようこそ。
ジアース:こちらこそ。隣にいる男性が外務省の代表で。
テルル:はい。では、スピーク。自己紹介を。
スピーク:はい。自己紹介させていただきます。私の名はスピーク。今の地位は副外務大臣です。
ジアース:テルルさん。スピースさんほどの者が代表に選ばれた理由は。
テルル:この歓喜祭の企画は国を挙げての企画ですので、各国の代表者と交渉するには高い地位のものでないと、この企画の質に関わると思いまして。
ジアース:なるほど。それで、後、何かこの国に対して何か言うことはございますか。
テルル:私はありませんが・・・・・・。
そこにスピークが熱い視線でジアースを見ていたのでジアースはスピークに声をかけた。
ジアース:スピーク。何か重要なことに気づいていると同時に、この企画に対し、熱意が多くあるように見えるが、この企画に対し、何か心の内を話してもらえるか。
スピーク:さすがはジアース様。私の視線だけで、ここまで見抜かれるとは。・・・・・・。そうです。私はこの企画には重要な使命を感じております。この企画は当然国内だけのものではありますまい。海外の国々にも客として参加をしてもらい、これを機に、平和への道へ歩が進めやすくなるでしょう。海外の人々が来ることにより、異国間の文化交流がさらに活発になり、お互い理解しあうことにより、絆が結ばれることは間違いないと思ってもいますし、また、それも私の使命だと思います。
ジアースはこのスピークの話を聞いて感動した。自分のこの歓喜祭の狙いの一つにスピークが言っている事も目的になっており、スピークが言ったことは、ジアースが外務省に対し行動して欲しいことと一致したのだ。
ジアース:スピーク君。この歓喜祭の目的の一つは君が言っていたことが含まれている。というより、外務省の立場としてやることは大体は君が言った通りの事だ。よろしく頼むぞ。
スピークも感動した。理由は激励されたからというものもあるが、自分の考えとジアースの考えが大枠は一致していたからであった。
ジアース:では、テルルさん。スピーク君。今日は顔合わせですので、ここで失礼させていただく。明日の代表者会議もどんどん意見を言ってくれ。
スピーク:はい。この歓喜祭。楽しみにしています。
次は厚生省である。応接室にジアースとサハリンは接待された。厚生省の大臣はメディ(女)で、代表者はクロロ(女)である。
ジアース:今日はメディさん。
メディ:ん?今日はミュウ様はどうしたのですか。
ジアース:いや、これには事情があって、サハリンが代役をするのもミュウが決めたことなんだが。
メディ:あはははは。ミュウ様も面白いことをなさりますね。
サハリン:何が面白いんでしょうか。
メディ:まあまあ、サハリンさん。怒らないでくださいね。それより、厚生省からの代表者を紹介します。こちらはクロロ(女)で、厚生省の衛生部の副所長をしている者です。
ジアース:クロロさんですね。よろしく。
クロロ:ジアース様。よろしくお願いします。
ジアース:ところで、メディさん。クロロさんを代表にした理由は。
メディ:この歓喜祭で厚生省がする役目は、衛生の管理が重要だと思いましたので、それなら彼女(クロロ)が適役と思いまして・・・。
ジアース:他には理由はないのか。
メディ:どういうことでしょう。
ジアース:厚生省の役目としては、衛生管理も必要だが、他にも怪我人や病人ももちろん数多くの客が来れば、当然客が来た分だけ救急隊の増員とか、緊急救急所の派出所が必要になると思うが。
メディ:・・・・・・。なるほど、ジアースさんは奥が深いですね。それでは、なぜクロロが適役といえば、彼女は過去にボランティアで現場での場数をふんでいます。その経験が最大限に生かされると思いましたので。
ジアース:なるほど。現場での経験を重視したわけか。しかし、我ながら思うのだが、ローレンシアの人は皆、人を試すのが好きな人ばっかりだな。ミュウもそうだ。
メディ:そういうジアースさんもそういう面も持っているでしょう。
ジアース:そうですかねえ。ところでサハリン。サハリンも何かしゃべらないか。
サハリンはただ茫然と話を聞いていたので、ジアースにいきなりふっかけられて、当惑しながら答えた。
サハリン:いや、なんか、次元が違うというか、ただ、私はみんな凄いと思うのは、理想論と現実論がかみ合っているってことかな。
メディ:ははは。私はミュウ様の狙いが読めた気がしました。
ジアース:は?
メディ:いや、ジアースさんはわからなくていいんですよ。
ジアースはメディの言葉には気を止めることも無く話を進めた。
ジアース:では、クロロさん。事前に何かここでしか言えないことはあるかい。
クロロ:いえ、特にありません。
ジアース:なら今日は先があるので帰ります。クロロさん。よろしく頼むよ。
クロロ:はい。
次の訪問先は交通省である。ジアースとサハリンは応接室に通された。そこには交通大臣ネルと、代表者ミール(女)が待っていた。
ネル:ジアース殿。お待ちしていました。
ジアース:どうも。ネルどの。こちらの女性が代表者ですか。
ネル:はい。ではミール(女)。自己紹介を。
ミール:はい。私はミールといいます。役職は交通省の次官補佐です。
ジアース:ミールを選んだ理由は?
ネル:彼女はわが省内で、細部にわたり指揮を行える地位にいますので。
ジアース:おお。それはありがたい。
ネル:しかし、今日はミュウ様は如何なされて。
ジアース:ははははは。ミュウは何を考えているんだろうな。本当は。
ネル:ジアース殿。本当は察しがついているんじゃありませんか。
ジアース:どうだろう。まあ、それは置いておいて、ミールはこの歓喜祭に対し、自分がすべきことは予測はつかれているかな。
ミール:一言で言えば、交通状態をスムーズにすることと思います。特に海外からのお客様に対しては気を使わなければいけません。
ジアース:なるほど。大体はその通り。それに加えると、一番大事なのは、今回の歓喜祭はあらゆる場所で企画を行うので、各場所での企画に対するお客さんの移動がメインだという事を頭に入れていてくれ。つまり、移動ルートについて細かく考慮に入れておくように。
ミール:わかりました。
ジアース:後は他に聞く事はないか。
ネル:特に無いです。
ジアース:では次があるので、今日はこれで失礼します。ミールさん。期待してますよ。
ミール:はい。
次は労働省に移動した。ジアースとサハリンは応接室へ案内され、そこで大臣のワルク(男)と、その代表者ウォル(男)が待機していた。
ワルク:ジアース殿。お待ちしてました。
ジアース:どうも。ワルク殿。
ワルクの隣にいたウォルが挨拶した。
ウォル:私はウォル(男)でございます。よろしくお願いします。
ジアース:こちらこそよろしく。ところでワルク殿。彼を選任した理由は?
ワルク:彼の役職は企業監督区部部長代理で、この国の企業の実情を9割以上把握している者です。
ジアース:なるほど。では、ウォル君に聞く。
ウォル:はい。
ジアース:今回の企画で、ウォル君は実際自分がすることは何だと思う?
ウォル:はい。私の考えは、企業が持つ力を最大限に生かすことと思っています。特に大企業のみではなく、中小企業にも機会を作っているように見えます。
ジアース:うーむ。確かに実際はその通りではある。
ワルク:ジアース殿。何か気になる事でもあるのですか。
ジアース:一つある。ここで肝心なのは、少ない財力でやる、これもしっかり頭に入れといてくれ。
ウォル:はい。わかりました。
ワルク:なるほど。この辺はジアース殿はさすがですな。
ジアース:ところで、ここで何か私に言っておくことはありませんか。
ワルク:正直無いです。というか、労働省の立場として見ると、今回のジアース殿の企画には、我々の希望しているものが多く含まれています。そういう意味で、我々もウォルを通してどんどん意見を出していくので、この企画は必ず成功させましょう。
ジアース:ワルク殿。ありがとう。それではまだ次があるので。
ワルク:ジアース殿もお疲れ様です。十二省庁を恥から回るのは、正直素晴らしい。普通は各省庁から代表者を呼び寄せて、一人一人面接する手段をとるんですがね。
ジアース:いえ、いえ、私としては、一人一人と接する、これは絆を作るには大事なことと思っていますので。では、この辺で失礼させていただきます。
ジアースとサハリンは移動した。移動中は最初はこの二人は話していたが、途中から無口になっていた。そこに運転手のカランがこの空気を吹き飛ばしにかかった。
カラン:ジアース様。サハリン様。さっきから一言もしゃべらないけど、何かあったんですか。
ジアースはハッとした。自分が車の中でいつの間にか無口になっていたことに気づいた。
ジアース:あっ。ごめん。企画のことで頭がいっぱいでしゃべるの忘れてた。サハリン、寂しかった?
サハリン:・・・・・・。
サハリンは黙って下を向いていた。
ジアース:サハリン。どうしたんだ?
サハリンはジアースの顔を見て苦笑いした。
サハリン:ははは。私って正直、何してるんだろうね。場違いなのかな?
ジアース:そんなことないよ。サハリンはこういうの初めてだから免疫が出来てないんじゃないの?
サハリン:うん・・・・・・。
カラン:しかし、ミュウ様も人が悪い。サハリンさんがこういう風に思うのを狙っていた感じに見えますが。
ジアース:そうかなあ。ミュウってけっこう気を使う人だから、別の理由が何かあるんじゃないか。
カラン:そういえばそうでしたな。
サハリン:私は今回のことでわかったことは、公務と私事を同時にこなすミュウ様って凄いと思った。これが正直な感想。
ジアース:まだ感想は早いんじゃないか。
ジアースとサハリンはミュウについてあれこれ話しながら次の目的地の法務省に着いた。ジアースとサハリンは応接室へ案内された。
インカ:ようこそジアース殿。
ジアース:どうも。インカ殿。
インカ:今日はミュウ様は一緒ではない様で・・・。
ジアース:ははは。どこへ行ってもこの事は言われますよ。
インカ:まあ、それはいいとして、私の省でも代表者を選んでおきました。となりにいるのが、法務省代表のロウ(男)です。
ロウ:ロウです。よろしくお願いします。
ジアース:ロウ君の役職は。
ロウ:副法務大臣補佐です。
ジアース:なるほど。インカ殿。ロウ君が選出された理由は。
インカ:ジアース殿の企画を行うにしたがって、やはり、法律との関わりも重要になると思うので、今回の企画は、法的に特例が数多く出ると思い、特例を速やかに法として処理するに当たり、彼の地位と能力はフルに活用できると思った次第です。
ジアース:わかりました。ではロウ君。よろしく。
ロウ:はい。
ジアース:あと、法務省で何か国のためにしたいことがあれば、この場を借りて私に言って欲しいのですが。
インカ:特にないです。
ジアース:わかりました。ではロウ君。共に頑張っていきましょう。
ロウ:はい。
ジアース:では、まだ回る所があるのでこの辺で失礼します。
ジアースとサハリンは通信省に移動した。二人は応接室に招かれた。
メイル:ジアースさん。お待ちしておりました。
ジアース:どうもメイルさん。
メイル:私の横にいるのは今回の企画に参加する代表者のアルス(女)です。
アルス:初めまして。アルスです。私の役職は報道部部長代理です。
ジアース:どうも、ジアースです。
サハリン:サハリンです。
メイル:今日はミュウ様とは一緒じゃないんですね。
ジアース:まあ、こっちにも事情がありまして。
メイル:でも、私はサハリンさんと一度ゆっくり話したいとは思っていたんですよ。サハリンさんが出演する番組は視聴率が高いですからね。我々、通信省でもサハリンさんの恩恵を受けてますからね。
サハリン:いえ。とんでもありません。
メイル:それに、ミュウ様も、一度サハリンさんと会ってはどうですかと言われていましたし。
サハリン:ミュウ様が。
ジアース:そういえばそうでしたな。それでは、ほかの機会に一度ゆっくりメイルさんとサハリンさんは会談をすることにして、今回の企画はアルスさんはどういう役割をするかは悟ってはいますか。
アルス:はい。宣伝が中心になると思います。
ジアース:その通りです。あと通信省で何か意見というものはおありですか。
メイル:特にないです。
ジアース:わかりました。では私たちは次を回らなければいけないので失礼します。
ジアースとサハリンは通信省を出て車に乗った。
ジアース:あとは、今日はローレンシア大学に行くだけだ。
カラン:ジアースさん。もうすぐ昼ですね。食事はどうなさいます。
ジアース:ローレンシア大学の食堂で食べるか。いいだろサハリン。
サハリン:どうかなあ。
カラン:ジアースさん。それはよしたほうがいいんじゃないですか。サハリンさんはアイドルなんですよ。ファンに囲まれたら食事どころじゃなくなりますよ。
ジアース:っそ、そうか。だが、教職員専用の食堂だったら問題はないだろう。それに、そこでラバンバたちと食べながら話すことになっている。
カラン:あはは。それもそうですね。
車はローレンシア大学の本部棟で止まった。ジアースとサハリンとカランは車を降りて、本部棟の中に入った。
本部棟の入り口で、大臣達が待っていた。経済財務大臣のデバロ、教育大臣のラバンバ、環境大臣のエコー、技術開発大臣のコンバットである。この四人はジアースとミュウと共に宇宙を旅した者たちである。
コンバット:おお、サハリン。元気か。
サハリン:お父さん久しぶり。
ジアース:え?コンバットとサハリンは親子だったの?
コンバット:ん?ジアースさんは知らなかったのですか。
ジアース:いや、不覚にも知らなかった。
デバロ:そりゃまずいなあ。知るべきことは知っておかないと。
ラバンバ:でも、ここ3ヶ月でここまでなじめるジアースさんも私は凄いと思うが。
ジアース:いやあ。なんかこの国は自分にすんなりなじめるんですよ。
エコー:とりあえず食事と行きましょう。
ジアースとサハリンとカランと四人の大臣は職員専用の食堂に移動し、昼食をとりながら雑談が始まった。
ラバンバ:ジアースさん。どうでしたか、各省庁周りは。大変だったでしょ。
ジアース:かなり大変だった。ここに来てからこの国の重要人物とは会談はしてましたが、評定であったのが初めてで、今日初めて話す大臣もいたから、話がよく通ったなあと思ったことは結構ありましたよ。だが、前のジアースが各大臣とどういう会話をしていたのかはよくわかった。
コンバット:そのへんは、ジアースさんはさすがですよ。でも、今日は散々だったでしょ。ミュウ様と一緒に行動していませんからなあ。
ジアース:そうなんですよ。けっこう突っ込まれましたよ。今日はミュウはどうしたのかって。
サハリン:そうよ。私なんか立場なかったよ。
コンバット:ところでサハリン。王宮での生活はどうだ。
サハリン:ぼちぼちよ。
コンバット:いつでもうちに帰って来てもいいんだぞ。
サハリン:私はこうでいいのよ。納得するまでこうしていたいの。
コンバット:そうか。そうだな。
食事をしながら雑談をし、しばらくして本題に入った。
ジアース:では、本題に移りますが、代表者の4人と対面したいのだが。
エコー:そうですな。
ジアースとサハリンと四人の大臣は、会議室に入った。そこでは、各省庁の代表者が横一列に並んで待機していた。
デバロ:では、ジアースさん。左から紹介します。一番左の男がドルア(男)役職は経済財務省長官です。
ドルア(男):よろしくお願いします。
ジアース:よろしく。
ラバンバ:次は教育省相広報部のリリィ(女)。
リリィ(女):よろしくお願いします。
ジアース:よろしく。
エコー:彼はグリス(男)。ローレンシア大学理工学部環境学科教授。
グリス(男):よろしくお願いします。
ジアース:よろしく。
コンバット:一番右は、名はアンプ(男)で、技術開発省本部部長を行っている。
アンプ(男):よろしくお願いします。
ジアース:よろしく。では代表者の方は、今回の企画に対し、どういう意識をお持ちか。また、自分の部署とどういう関係になっていくとお思いか。
ドルア:私はこの企画は大賛成です。経済は人が動かなければ循環が行われないからです。循環が行われれば、税も徴収できると思います。ですから、今回の私の役割は、税を取れるよう消費者にたくさん消費してもらおうということに力を尽くすことと心得ております。
ジアース:了解した。では次のリリィさんはどうお思いか。
リリィ:正直言いまして、教育省としては、今回の歓喜祭と教育とをどうつなげるかを思案中でございます。ただ言えることは、この企画に対し、子供たちもあらゆるところで参加させることで、それが子供の教育につながればいいと思っています。
ジアース:わかった。次はグリス。あなたの思うところを言ってくれ。
グリス:はい。環境庁では、これを機に、環境というものを訴えたいと思います。また、現実的には祭り当日のゴミや清掃についても重要課題であるとも思っています。
ジアース:わかった。ではアンプはどうだ。
アンプ:技術開発省では、正直、ものを作るということがメインですので、ものを作るとなると時間がかかります。ですから、今回の企画は3ヶ月ではものは作れないというか、限られますので、わが国の技術の公開ということが中心になるのではないかと思います。
ジアース:わかった。一応、皆に思うところを述べてもらった。私としては、この文化祭での企画に皆が協力的で意欲的であることは大変嬉しい。実際の活動は明日からになるが、どんどん自分の力を発揮して欲しいと思う。
これで、ジアースの今日のやるべきことは終わった。
ジアース:では、みなさん。私は、今日はこれでやるべきことは終わりましたが、少々時間があります。今、皆さんに時間があれば、久しぶりの出会いを祝して雑談をしたいのですが、いかがでしょうか。
コンバット:賛成です。
ラバンバ:おっ。いいですねえ。
エコー:私も賛成です。
デバロ:私は授業がありますが、臨時休講して雑談会の仲間に入ります。
ジアース:あはははは。生徒は気の毒ですね。
デバロ:そうでもないですよ。休講を喜ぶ生徒はたくさんいますから。
ラバンバ:確かにそうだ。
ジアースとサハリンと四人の大臣にそれぞれの省での代表者四人も加わって雑談会をし、窓から夕日が差しこむころまで話をしていた。
エコー:おっ。もうこんな時間か。
ジアース:では私は王宮に帰ります。ミュウが首を長くして待っていると思うので。・・・・・・。ところでサハリンはどうだ?今日はお父さんと一緒にいるか?
サハリン:私はジアースと一緒に帰る。
ジアース:そうか。
コンバット:だが、サハリン。たまには父親の私と話さないか。
ジアース:サハリン。
サハリン:何?
ジアース:サハリンはコンバットと会う機会はそんなにないんだから、たまには父親と一緒に何か話をしていてもいいんじゃないか。
サハリン:・・・・・・。
サハリンはしばらく考えた。そんなコンバットはそんな様子のサハリンを見て言った。
コンバット:そうか。わかった。それほどジアースさんといたいのか。
サハリン:うん。
コンバット:ジアースさんにはミュウ様がいてもか。
サハリン:うん。
コンバット:・・・・・・。わかった。だが、今日ぐらいは私と一緒にいてもいい気はするんだがなあ。
ジアース:サハリン。俺もそう思う。今日ぐらいはいいんじゃないのか。
サハリン:・・・・・・。そうね。今日はお父さんと一緒にいる。
ジアース:よし、それじゃあ、俺は王宮に帰る。サハリンのところには、明朝、迎えの車を出すから、王宮への帰りは心配しないでくれ。
サハリン:わかった。
ジアース:では、皆さん、サハリン、自分は王宮に帰るのでここで失礼します。
サハリン:うん。じゃあね。
ジアースは車に乗り、移動した。
王宮に着くやいなや、ジアースは、今日のミュウは一体、何をしていたんだろうと思いながら、ミュウの部屋に着き、ドアを開けた瞬間、抱きついたものがいた。その者は、もちろんミュウであった。
ジアースに抱きついたミュウは、耳元でささやいた。
ミュウ:お・か・え・り。
ジアース:お、おう。ただいま。・・・・・・。今日はどうしたんだ?
ジアースは少し困惑した。
ミュウ:今日は何の日か知ってる?
ジアース:ご、ごめん。知らない。
ミュウ:私とジアースが初めて会った日よ。その日から今日がちょうど三年目よ。
ジアース:三年目ということは、前のジアースと会った日から今日で三年目ということ?
ミュウ:そう。今日は、サハリンがいないから、二人で思いっきり楽しもうね。
ジアース:ミュウ。もしかして、サハリンをミュウの代理にしたのは、このためか。
ミュウ:さあ、どうでしょう。でも、サハリンもたまには父親と会うのもいいんじゃないかな。
ジアース:あはははは。ミュウってけっこう怖い女だな。
ミュウ:それじゃあ、まずは食事ね。
二人はドアのところからテーブルのところへ移動した。
テーブルの上には綺麗に盛り付けされた料理が数種類置いてあった。
ジアース:おっ。ずいぶん美味そうな料理だな。
ミュウ:美味そうでしょ。だって、私が作ったんだもん。
ジアース:へえーっ。ミュウって料理ができたんだ。
ミュウ:そりゃそうよ。私だって女だもん。
ジアース:いつもはコックが作ってたから知らなかったよ。
ジアースは料理にも目を奪われたが、それ以上に奪われたものがあった。それはミュウの姿だった。そう、ミュウはまばゆいばかりのドレスを着ていたのだ。色は白で、ミュウに大変似合っていた。ジアースはミュウに見とれていた。
ミュウ:ん?ジアース。どうしたの?私のほうをジーと見て。
ジアース:え?あ、いや、今日のミュウは、いつも見るミュウと何か違って、なんというか、思いが溢れているというか。ははは・・・・・・。
ミュウはやわらかい笑みを浮かべながら言った。
ミュウ:何、いまさら照れくさそうに言ってるの。
ジアース:いや、今日のミュウはいつもよりなんか新鮮で。
ミュウ:ありがと。でも、私はいつも新鮮だけどね。
ジアース:あ、いや、それより、食事をしようよ。
ミュウ:そうね。じゃあ、乾杯。
二人は緑色のワインが入っているグラスを持ち、お互いグラス同士を軽く当てて、ワインを飲んだ。
その後、食事中は、ミュウは前のジアースのことを話していた。
食事が終わった後、ミュウはしみじみとして言った。
ミュウ:ねえ。ジアース。今夜は私の部屋で二人で過ごさない?
ジアースはミュウの目を見た。
ジアース:え?それって・・・・・・。
ミュウ:そうよ。
ジアース:・・・・・・。じゃあ、今日は雑務ぬきにしないかい。この気持ちが覚めないように。
ミュウ:そうね。今日はいいよね。でも、私、・・・・・・。初めてなんだ。・・・。前のジアースとはこれからすることはしなかった。
ジアース:実は、俺も地球ではしなかった。初めてが他の星だなんて思いもよらなかったけどね。
ミュウ:じゃあ、私の部屋に来て。
ジアース:いや、ちょっと持った。俺はミュウを腕で抱えて、ミュウの部屋まで行こうと思うけど・・・・・・。
ミュウ:ジアースって演出家ね。
ジアースはミュウを腕で抱えて、ミュウの部屋まで運んで降ろした。
ジアース:ミュウ。愛してる。
ミュウ:私も。
二人はミュウの部屋で過ごした。何をしたかはミュウとジアース以外は知らないことだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます