第4話 王子からの刺客
ローレンシア講演会が大成功に終わったのを不服に思うものがいた。その者は、ローレンシア王国王子のガイである。
ガイは、ミュウが活躍しているのを見て、ミュウが時期国王の椅子に座るのではないかと、自分の野望がかなわなくなるのを恐れていた。そのため、ガイはミュウを亡き者にしようと、何度も行動を起こしていたが、毎回前のジアースに阻止されていた。
ミュウの地球への旅も、ガイにとってはミュウを亡き者にするための作戦でもあった。つまり、ミュウとジアースが無事地球から戻ってこないように計画を立てていたのだ。その計画の内容は、宇宙船の燃料を半分にし、片道分の燃料しかないので、帰ってこれないとふんでいたのだ。しかし、ミュウたちは帰ってきた。地球で燃料を補充したからであったのだ。
だが、ガイにとってはラッキーなことが会った。ジアースが記憶喪失ななったことであった。実際はジアースは記憶喪失ではなく、前のジアースと入れ替わったため、ミュウは立ちはジアースが記憶喪失になったことにしていたのだったのだが、ガイはジアースは記憶喪失だと思い込んでいたのだ。
ガイはそういうふうに考えながら、ノルワーを呼んだ。
ガイ:ノルワー。今のジアースは記憶喪失になっている。もし、ジアースに記憶がよみがえったら、往来の力をまた発揮するだろう。今が機であるとは思わんか。今のうちにミュウとジアースを抹殺しようと思うのだが、何か意見はあるか。
ノルワー:しかし、ガイ様。殺し屋は何人も送りましたが、全員ジアースに倒されたのをお忘れではありませんか。
ガイ:そんなことはわかっている。俺は他に方法がないのかといっているのだ。
ノルワーに案が閃いた。
ノルワー:ガイ様。人質を取ったらいかがです。
ガイ:人質?
ノルワー:そうです。人質を取ってミュウとジアースをある場所に誘い込んで、そこで抹殺し、死体を海にでも放り込んでいけばいいと思いますが。
ガイは目を大きく開かせて、
ガイ:それはいい案だ。だが人質はミュウとジアースにとって近い者でなくてはならない。誰が適役か。
ノルワー:サハリンがいいと思います。
ガイ:なに。
実は、ガイはサハリンに恋をしていたのであった。しかし、サハリンはガイのアタックには毎回拒否をしていたのだった。
ガイ:しかし、ノルワー。それをしたらサハリンと結ばれなくなるではないか。
ノルワー:ガイ様。国王の座と一人の女とどっちが大切なのですか。
ガイ:しかしだなあ。
ノルワー:しかしもかかしもございません。私はガイ様が王座につくために仕えているのです。女なんていくらでもいるのではありませんか。
ガイ:しかし・・・サハリンほどの女なんか他にいるのか。
ノルワー:ではこうしたらどうです。黒幕は私ということで、よろしいですか。
ガイ:本当にいいのか。
ノルワー:あなた様が王になるためです。だから、それといっては何ですが、ガイ様が王になったときは私を大臣にしてもらえますか。
ガイ:いいだろう。ミュウとジアースがいなければ俺が時期国王になるのだからな。あと、俺の妃はサハリンだということも忘れるな。
ノルワー:わかりました。では、さっそく作戦を立てるとしましょう。
ある朝、ミュウとジアースとサハリンは宮殿内のミュウの部屋にいた。
ミュウ:ジアース。今日の予定は?
ミュウは朝から元気に言い、ジアースはそんなミュウを見て笑顔になって答えた。
ジアース:ミュウと俺は企業の視察で、サハリンはローレンシアTVに出演するという予定だ。
サハリンはミュウとジアースやりとりを見て、羨ましそうに言った。
サハリン:いいなあ。ミュウ様。いつもジアースと一緒で。私なんか一人でテレビ局に行くのよ。
ジアース:サハリン。ミュウは最近どうやら命を狙われているらしい。だからミュウと別行動はできないんだ。
サハリン:理由はそれだけじゃないでしょ。
ジアース:ま、まあ、そうだけど。
サハリン:そうよね。仕方ないよね。
ミュウは一人寂しがっているサハリンを見て言った。
ミュウ:ねえ。サハリン。次はなるべく三人で行動しようね。
サハリン:いいのよ。ミュウ様。私とミュウ様は立場が違うし、やることも違うから一緒というわけにいかないのは当然よね。ごめんね。気を遣わせちゃって。
ジアースとミュウは、今日のサハリンに対し、何かいやな予感がしていたが、サハリンは、そんなミュウとジアースの気持ちを察した。
サハリン:二人とも、私は大丈夫よ。
準備が終わった三人は王宮の乗車場へ行き、車に乗った。今日はカランがジアースとミュウの運転手で、ドミーはサハリンの運転手である。
移動の途中ではミュウの話が始まった。
ミュウ:ねえ、カラン。ドミーとはいつ結婚するの?
カラン:からかわないで下さいよ。まだドミーとはそういう関係でもありませんし。
ミュウは恋の話になると盛り上がるのである。
ミュウ:嘘言わないの。本当はいきつく所まで行っているんじゃないの。
カラン:勘弁してくださいよ。
そこで、カランの携帯がなった。ミュウはさらに突っ込んだ。
ミュウ:カラン。ドミーからの電話でしょ。
カラン:ミュウ様にはかないませんな。ドミーからですよ。
カランは携帯を手にした。
カラン:もしもし、カランだけど、ドミーかい。どうした。
すると、叫びともいえるドミーの声が聞こえた。
ドミー:カラン。大変よ。サハリンが連れさらわれるわよ。
カラン:どういうことだ。サハリンが乗っている車の運転手はドミーだろ。
ドミー:違うのよ。そいつは偽者よ。
ドミー:なにーっ。
事体は一変して緊迫した空気に包まれた。
カラン:ドミーそれはどういうことだ。ドミーは今どこにいるんだ?
ドミー:トイレよ。ミサキ公園の公衆便所の男子トイレの大便の便器のところに閉じ込められてるの。それに、あっちこっち殴られて動けないの。
ミュウとジアースはカランの会話からいやな予感がした。
ミュウはカランから携帯をとって、
ミュウ:ドミー。今そっち行くから待っててね。
カラン:ミュウ様。今日の予定は?
ミュウ:そんなの後よ。まずドミーの手当てをしなくちゃ。
ドミーから必死な声が聞こえた。
ドミー:ミュウ様。私のことはいいから、早くサハリンを助けに行って。サハリンはたぶん偽者の私が運転している車に乗っていると思うから。
ミュウ:わかったわ。じゃあ、ドミーのところには王宮の者に行ってもらうから。サハリンのことはこっちで何とかするから心配しないで。
ミュウの判断は速かった。
ミュウ:カラン。サハリンの身に何かあったら大変だわ。企業の視察は後。今すぐサハリンの車を追って。
カラン:わかりました。
サハリンは緊急用に発信機を身につけているので、その車を追った。ミュウはこのことを王宮の者にも連絡した。
十分後、カランの携帯が鳴った。
カラン:ドミーか。
ドミー:うん。
カラン:どうした。
ドミー:私は今王宮の者に保護されたよ。
カラン、ミュウ、ジアースの三人は少しホッとしたが、それもつかの間、ドミーから大変なことが伝えられた。
ドミー:カラン。さっきは意識がもうろうとしていて気づかなかったんだけど、今、私のすぐ側に書置きを見つけたのよ。
カラン:内容は。
ドミー:これから読むわ。『サハリンはスワン港の第六倉庫に監禁している。助けたければジアースとミュウ、二人だけで来い。もし他のものが来ればサハリンを殺す』ということよ。どうします?
ジアースはミュウとサハリンをどうやって守るかと考えている間に、ミュウはカランの携帯をとってドミーに言った。
ミュウ:私とジアースは途中までカランに連れて行ってもらって、そこからは二人で行くわ。私たち二人で何とかするから他の者は絶対現場にきちゃだめよ。王宮の者にそう伝えて。
ドミー:でも。
ミュウ:いいから私の言う通りにして。
ドミー:はい。
走行中、ジアースとミュウは、それぞれサハリンを救出する作戦を頭の中で練っていた。そうしている間に、スワン港の倉庫から百メートルぐらいの所に着いた。
カラン:ミュウ様。本当に誰も呼ばなくていいんですか。
ミュウ:サハリンが殺されたら大変でしょ。私の言う通りにして。
カラン:でも、私はミュウ様とジアースさんが死んでも大変だと思いますが。
ジアースは覚悟を決めて言った。
ジアース:カラン。大丈夫。ミュウとサハリンは俺が守る。
カラン:わかりました。
カランはそう言うしかなかった。
ジアースとミュウは急いで準備した。車の中からジアースはナイフを、ミュウはムチを取り出し、防弾着を着て第六倉庫に向かって警戒しながら歩いていった。
二人は第六倉庫の入り口に来た。今のところ人の気配は全く感じられない。ジアースはミュウを見て言った。
ジアース:俺はこの倉庫には絶対罠があると思う。サハリンの所へは俺一人で行く。ミュウはここで待っててくれ。
ミュウ:だめ。私も行く。
ジアース:ミュウ。いいからここにいるんだ。
ミュウ:いや。絶対行く。
ジアースはミュウの目をジーと見た。
ジアース:ミュウ。わかった。じゃあ、ミュウは裏から援護する準備をしてくれ。二人一緒に同じ行動をするのはまずい。的を一つにさせるだけだからな。いいか。まず俺の合図を待っててくれ。合図が来たら、ミュウは思うとおりに行動をしてくれ。これでいいか。
ミュウ:わかった。
ジアースは倉庫の扉を自分が入るだけの隙間を開け、中に入った。
ミュウは外から隠れて覗いていた。倉庫に上のほうの窓から光が射し込んでいた。
ジアース:おい。約束通り来たぞ。サハリンは無事か。誰か返事しろよ。
倉庫内のどこからか声が聞こえた。
サハリン:ジアース。来ちゃだめ。
ジアース:今の声はサハリンだな。今、どこにいる。
そこで、ジアースめがけて四方八方から光が注がれた。倉庫内は明るくなり、ジアースの正面にサハリンがおり、その左に男が一人、ジアースの左右にも二人ずつジアースに銃を向けている男が二人ずついた。
サハリンの左にいる男はボスであり、そのボスは右手でタバコを吸いながら、左手は持っているナイフをサハリンに向けていた。サハリンは縄で手と足を縛られていた。
ボス:おや、ジアース一人できたのか。ミュウはどうした。まあいい。先にジアースを片付け・・・。
ジアースはボスが自分のセリフを全部言う前に先制攻撃をした。自分のナイフを男五人をめがけて飛ばした。そのナイフは左右の男の銃を持っている手に命中し、ボスのナイフを持っている左手にも命中した。ナイフを落としたボスは動揺した。
ジアース:油断大敵だな。
ジアースはさらにナイフをとばした。倉庫内が暗くなった。ナイフはすべての電球に命中したのである。中の男どもが声を張り上げている中、ボスの声がした。
ボス:ぐわっ。
ボスは倒れた。ジアースがボスの腹にパンチを喰らわしたのである。
その隙にジアースは縛られたままのサハリンを抱えこんで、出口まで走っていき、サハリン救出に成功した。
倉庫の外にでると、王宮直属の警察部隊が三十人駆け込んでいた。ジアースは命令した。
ジアース:素早く中の犯罪者をひっとらえよ。
部隊は倉庫の中に駆け込んだ。
ジアースはサハリンの縄を解きながら言った。
ジアース:ミュウ。誰が救援を呼んだんだ。
ミュウ:カランよ。だけど、救援は無意味だった見たいね。
ジアース:そうでもないよ。犯人を逃がさなくてすむからなあ。
サハリンがジアースの目を見つめていた。ジアースはそれに気づき、
ジアース:サハリン。大丈夫だったか。怖くなかったか。
サハリンはジアースに抱きついた。しかし、体は震えていた。
サハリン:ジアース。ありがとう。
ミュウ:あらあら。
ミュウはそれ以上は言葉が出なかった。
サハリンは震えが止まると、ジアースに不思議そうに言った。
サハリン:ねえ。ジアース。中が暗くなったとき、よく私の位置がわかったね。
ジアース:サハリンの場所を明るいうちに覚えたからね。
カラン:いやあ。でも、サハリンさんにジアースさん、そしてミュウ様。みんな無事でよかったですよ。
ミュウ:なんかあっけなかったわね。私の出番はなかったみたい。ヒロインなのに。
ミュウの言葉でみんな笑って帰った。
一方、ミュウとジアースの殺害に失敗したガイは、悔しがってはいたが、ノルワーと共に次の手を考えることにした。
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