第7話 抱き枕

「スー、スー、スー」

 静かな寝息が響く。

 A子とB子はお互い眠っているようだ。

 夜も朝も分からないこの空間では、眠たくなったら寝る。

 いつしかそんな習慣がこの二人にはついていたようだ。

 正直とても羨ましい習慣である。

「う、うぅ…………」

 ここでB子の目が覚める。

 そしてようやく自分がしている事を自覚するのであろう。

「うぅ………………ん?」

 B子はまず目を覚まして、A子の姿を見る。

 目を覚まして、第一にA子の姿が目に入るということはそれだけ二人は密着しているという事。

 B子はまだこの時、どうせ寝てる時に抱きつかれたのだろう。とそんな事を思っていた。

 しかしB子は気づかなかった。それを行っていたことが自分だったと。

「ん、ん〜……。もう朝?」

 B子が目を覚ましたからか、A子も目を覚ました。

「――どうして抱きついているの?」

 A子にしては珍しく寝起きがよかったようで、いち早くその事に気づいた。

「え?あなたが抱きついてきたからじゃないの」

 しかしまだ事の事態に気づいていないB子はいつものように反論する。

「じゃあ、私の腰に回している手と、私の足に絡ませている足はなんなの?」

 A子が指摘すると、B子はたちまち自分の腕と足を確認する。

 確かにA子が言っていたように、B子の手はA子の腰に回っており、足はA子に絡みつくようになっていた。

「……え?」

 ようやく事態に気づいたB子はたちまちに顔を真っ赤にする。

「私を抱き枕にして気持ちよかった?」

 そんなB子に追い打ちをかけるように、A子が囁く。

「そ、そんなわけっ!」

 もうこれ以上赤くならないだろうという所まで真っ赤に染まったB子は慌ててA子をはねのける。

「いたーい」

 A子は冗談めかしく痛みを訴える。

「うるさい!は、はやく今日もここから脱出する方法を見つけるわよ!!」

 B子は早口でまくしたてる。

「もう、ツンデレなんだから」

 そんな言葉を聞きながら、B子は確かに今日は寝付きが良かったのだと感じ、さらに肌を赤く染めるのだった。

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