第5話 飲み物
「喉渇いたよ〜!」
A子が苦しそうに呻く。
今度は喉が渇いたようです。人は何もしなくても勝手に水分がなくなっていくので、水分補給は大事なのです。
なんて事が分かってか知らずか、A子はひたすらに喉の乾きを訴えます。
「私だって喉渇いてるわよ」
どうやらB子もB子で喉が渇いているようですね。
しかしここは純白が支配する空間。
当然飲み物なんてあるわけがありません。
さて。二人は一体どうするのかと思っていると、A子は突然何か思いついたように飛び起きます。
「そうだ!」
A子が飛び起きたことにより、B子は怪訝な目を向けます。
今までの経験上。A子がろくでもないことをすると思っているのでしょう。
当の本人はそんな事思われているとも知らずにゆっくりB子に近づきます。
「ねぇ。おしっこしたくない?」
「えっ?」
「だから、今おしっこしたいんじゃない?」
始めB子は、A子が何を言っているのか理解することが出来ず、思わず聞き返す。
だが再度、A子から出てきたことばにやはり、B子は耳を疑うのだった。
それもそうです。いきなり女の子の口から、おしっこしたくない?なんて聞かれるなんて思ってもいなかったことでしょう。
A子はどこか期待したように、B子の顔を見ています。
恐らく返事を待っているのでしょう。
「…………したくないけど」
「なんだーー」
一体どういう意図があったのか、B子の返答を聞いたA子はその場に倒れ込む。
「あっ、それじゃあ、私今おしっこでるから先に飲む?」
「へっ?」
今度こそB子の耳が故障したのではないかと疑う。
「だから〜私のおしっこ先に飲む?って聞いてるの」
それでもB子の耳は故障したわけではなかった。
「なっ、なな、なんでそんな事っ!!」
B子の顔は真っ赤に染まる。
それもそうだ。いきなり女子からおしっこ飲まないかなんて言われたら誰だったこんな反応になる。――一部の層を除けば。
「だって喉乾いたんだから仕方ないでしょ」
「いや仕方ないって言われても…………いや、でも…………」
なんだかB子は頭の中で葛藤を始めたようです。
このまま飲み物が手に入らずに死ぬのか、ここで水分を少しでもとるか。
でもここでいう水分は、A子から出てくるものです。果たしてB子は本当にそれを飲むというのでしょうか?
「――――背に腹は変えられない、か」
どうやらB子は覚悟を決めたようです。
「そ、それじゃあ……あ、あなたの、お、おおしっこを飲ませてもらうわっ!!」
全身真っ赤になりながらもB子は言った。
ここまでの覚悟をしたB子を労ってあげたい。
そんな気持ちになった所だが、B子の目の前で衝撃の光景が現れる。
「ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ」
なんとA子がペットボトルを片手に、水をがぶ飲みしていた。
「なっ、ななっ、なんで!?」
「ん?なんか急に出てきた」
先ほどの覚悟がなんだったのか。と思わず怒鳴りそうになるB子。
しかし自己の欲求には勝てなかったのか、A子が飲んでいる途中だったペットボトルを奪い去る。
「私にも飲ませなさい!」
「あっ、ちょっと〜」
こうしてペットボトルの中身は、それぞれ二人の体に吸収されたのだった。
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