第18話 真実

「私が最期にナホに会ったのは、この世界に来る1年前です。まだ、ナホは全身機械化する前で、15歳の時でした」


そして、哲は語りだす。


 ――私は元々、ナホやショウと共に孤児院で育ちました。私の世界では貧富の差が激しくて、親に捨てられる子が多く、宗教施設で育つことは当たり前でした。

 それに、裕福な人たちは貧しい人たちに人権は無いと思っているのか、平気で連れ攫って、実験の材料にしたり臓器を取られて売られるなどざらにありました。

 そんな世界で生きてきたものですから、12の時、ナホは裕福な人に連れてかれました。

 その後、私たちは軍に入隊したお陰で15歳の時、ナホと再会します。

 その後はナホが知っているように、16のあの冬の日までは日々の任務をこなしながら生きていました。

 ですが、12月24日、私は一度死にました。敵の銃弾を頭にくらって即死だったと思います。

 その時、私は火の鳥のような存在によって肉体から離れるのがわかりましたが、同時にある人物と接触したのです。龍神と名乗る人物と。

 龍神は私と入れ違いで私の体の方に向かっていきました。

 私はそのままこの世界に来て、かれこれ5年の歳月が経ち25になります。


「ここで問題になることが、私がこちらの世界に来て以降、私の肉体はどうなっていたのかということです」

「私が覚えているに、テツは反政府軍を引き連れて超能力を用いて、国家転覆、いや世界征服を図っていたのですよ」

「ええ、そこなんです」


 菜穂と哲が会話しているところに、美佐樹も割って入る。


「この世界と私たちのいた世界は近い関係にあったみたいなんだ。それで、火の鳥と呼ばれる存在がその二つの世界で循環している魂のうち、選ばれた魂”神の愛し子”と呼ばれる魂を入れ替えていることは、現段階でわかっている。あと、哲くんの話が正しいとするなら、この世界の神に近い存在の龍神は鱗だけを残し、この世界を5年前に去ってしまった。それは一体、なぜだろうか」

「5年前、それは然国が建国した年で、総の国の国王は死んだ年でもある。そう言うことだ」


 今度は総龍も話に割って入ってくる。


「総龍様はつまり、龍神はこの世界に見切りをつけたとお思いで?」

「ああ、そうだ。龍神の統治下の世界は終わったのだ。その代償として、また別の世界を龍神は統治しようとしているだけだ。龍神は神に近しい存在、倒す術はない」

「じゃあショウは......!!!」

「恐らく......」

「いや、結論に至るまではまだ早いかと。それに今回、美佐樹さんが貴方を連れてきたのには訳があるのです。私自身、ナホが来た後でようやく理解しましたが」

「我を呼ぶからには、ただの過去話をしに来たわけではないのだろうからな。それで、美佐樹、理由を話すがよい」


 総龍に命じられ、美佐樹は改まった。


「私の目的は元の世界に帰ること。その為に龍神の力を借りようとしている。これはみんなも既知の事実だと思うけど、それには必要なことが一つある。それは龍神の招来。哲の話を聞いている通り、龍神は既にこの世界を去っている。じゃあ、どうすればいいか」

「5つの鱗を持ちて果てにありし仙霊山に向かう、じゃな。しかし、鱗は五氏族の元にあるし、仙霊山の場所はわかっておらぬぞ」

「まず、鱗に関してなのだけど、知人の情報によると、最近、然国の姫君が五氏族を消し去るついでにそれを集めているそうで、既に羅家が壊滅された」

「何!?そんな......」

「番犬相手じゃ、仕方ないでしょ。それはさておき、幸いなことに林家でもうじき五氏族会議が行われるそうよ。鱗は各家を示す証、だから3日後、龍神の鱗は林家にそろう」

「では、仙霊山はどうなのですか?」

「仙霊山はね、無いなら作ればいいのよ」

「「「はい?!」」」

「疑似的に呪術を用いて仙霊山を作成できるわ」

「じゃあ、龍神招来が可能ですね!でも、ならばなぜ私とテツを会わせて、そしてテツに過去の話をさせたのですか?」

「超能力、非科学的現象を起こせるのは神に近い存在のみ。前に菜穂ちゃんは将って子の話をしていたわよね。あるときから超能力者になったっていう」

「それってまさか......!」

「残念だけど、菜穂ちゃんの約束の相手の将くんは龍神になるわね。超能力を使えるようになった時から、彼はもう死んでいるのよ」

「え......」



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