第7話『部長泣いてない』





セッター斎藤の意表を突いたツーアタックが静かに決まる。






「斎藤さんナイスツー!」

「ナイス!」


「すごい度胸だよな、斎藤さんがあんな強心臓だとは思わなかった」




「・・・はは」




恐る恐る部長の方を向く。


「部長すいません」







「・・・は?・・・謝る必要あるか?」







その部長のぶっきらぼうな返事に

同じ3年の福田先輩は笑う。


「俺が決める―って迫真の顔してたし、今もちょっと悔しそうだしな」




ドッ微かに起こる笑い。


「・・・うるせぇ」

小声で呟く。



福田先輩はそのまま六畳の方を向く。





「それにしても六畳だ、よくあのスパイク拾ったな」






「・・・っす、正直、勘で飛んだ感じです」


「それでもナイスだ」



「そりゃ、一本でも多く撃ちたいですし・・・サーブ」





・・

・・・







涙・・・







部長の目から

その言葉を聞いた瞬間、涙が・・・

ボロボロあふれて止まらない。


えっぐ、えっぐ・・・




「部長、え?え?・・・泣いてる?」



「・・・泣いてねぇし!」



「いや泣いてっし」





「ピー!脆弱高校?」





やべ・・・




配置につく。




部長は涙をぬぐって、

気合いを入れなおす。




「六畳!本気でぶちかませ!・・・サーブなんぞ、何本でも打たせたらぁ!次の試合もその次の試合も!」




「「ああ!」」




脆弱高校、

全員の掛け声がコートにこだまする。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る