第3話『サーブだけは、サーブだけは、ボッチでもデキる!』





六畳四冥は不真面目な部員ではない。






彼はむしろ真面目な方だ。

練習を休むことも稀であるし、声かけだって大声でやっている。


ならば運動神経が悪いのか


これも違う、運動神経はいい、特に反射神経とレシーブ力には目を見張るものがある。




そう聞かされれば誰もが思うだろう。

なぜ六畳四冥はベンチ要因なのか?






それは彼のプレーが『周囲に合わないという点』、その一点においてのみ他の誰よりも劣るのである。







例えば二人一組でおこなう基本のパス回し

これは六畳と組むと誰もが回数を続ける事ができない。



「あれ、おっかしーな?ちゃんと受けたはずなのに」



受ける側が必ずミスをする。




相手の渾身のサーブをレシーブした時も




「おしッ!六畳ナイス!」




どりゅ





「おい!セッター、何ミスってんだ、絶好球だろ?」


「あー、すんません」





何かが悪い訳ではない、

彼のプレーは普通のはずだ。


だが、続かない、プレーの流れを断ち切ることが多い。

奴が居ると周囲がなぜか調子が悪くなる。



まるで、彼だけが、・・・現実と違う次元に居るような・・・そんな錯覚さえ覚える。



次第に部員たちは六畳から距離を置き始める。







$$$








夕方の公園でひとりベンチに腰掛ける。



(もうバレー部やめちゃおっかな)



そんな弱気な思考が頭をよぎる。






「よーどうした?バレー少年」






綺麗な女子の声


「渡辺先輩」




渡辺先輩は3年の女子マネージャーだった先輩だ。

今年の春に引退した人


先輩たちがいた頃は部活楽しかったなぁ、今はちょっとピリピリしてついていけない雰囲気あるし




何となくは聞いてるよ、六畳君の事




「で、先輩からアドバイス!」





「前向きに考えなさい、レシーブが駄目ならサーブがあるじゃない」




「サーブなら誰かと組む必要なし、サーブだけは、サーブだけは、ボッチでもできる!」





先輩の笑顔はいつも眩しい。

少しだけ暗い気持ちが晴れた気がした。




「あと先輩、俺ぼっちじゃないんで」




「・・・あ、そう」






$$$






「ドンマイ、ドンマイ!」


「先輩、力み過ぎッスよ、リラックス、リラックス」



強豪校の雰囲気は明るい。


リベロは深く深呼吸して気合いを入れなおす。




2投目




「オーライ!」



どりゅりゅ




また、レシーブは乱れてコートの端に堕ちる。




「ははっ・・・あれ?」



言いようのない不安が徐々に広がり始めていた。




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