第十七話 買物

「わぁ、すごく似合ってます!」

 お世辞ではないだろう。嘘を付いている様子では無さそうだし、この顔や体型は中々のものだと自負している。













「今日はショッピングモールに行こうか?」

 朝、母に突然言われた。

 その時の私の気持ちはこうだ。

 はあ?何言ってんだ頭沸いてるのか、である。


 ちなみに私は元々口調が汚い。

 普段は標準語、たまに関西弁が出てしまうのだが、本当に状況がヤバい時には、口調がとても汚くなる。

 現に、今私は声には出していないが、とても汚い言葉を心の中で呟いた。

「うん、そうだね。行こう。」

 嫌すぎる。

 何故、こんなにショッピングモールに行くのが嫌なのか。

 それは、ショッピングモールに行く、ということは服屋さんに行くということである。

 服を選ぶ、と言っても何が良くて何が良くないのか全くわからず、毎回、服を買うのに何時間もかかるからである。

 ちなみに何時間もかかる原因は母にある。

「もう少しみようか。」

 と言って、気付けば何時間も過ぎている、が当たり前。

 そのくせ、文句を言えば怒る。

 ということなので、今までは能力を使って後回しにしてきたのだが、服が小さくなり、流石の私もこれは行かないとダメだな、と考え、今回行こうと思う。めんどくさい。


「それじゃあ、行こうか。」

「うん、そうだね。」

 一応、身だしなみを整え、家を出る。

 家からとても近い所にあるショッピングモールは、とても大きく、いつも人が大勢いる。

「それじゃあ、最初は・・・」

 そして見て回る。

 途中、試着した時に褒められた。

 褒められて嬉しくない人間はあまりいない。

 私は褒められて嬉しい人間だ。

 そして、少しだけテンションを上げながら、服を見る。















「ただいまー」

 そして帰ってきた時には夕方になっていた。

「すぐにご飯の準備するから。」

 そう言って母はご飯の準備を始めた。

 私は何をするかと言うと・・・

 ・洗濯物を取り入れる

 ・洗濯物をたたむ

 ・お風呂掃除

 ・お風呂を沸かす

 ぐらいだろうか。

 ちなみのこれらは習慣化しているので、あまり苦痛ではない。

 そして、慣れた手つきで次々と終わらす。

 自分で「慣れた手つき」というのはどうか、と自分でも思う。

 その後、自分の部屋に戻り、鞄を元の位置に戻すと、机の、小さめの引き出しを開けた。

 中には、風鈴のペンダントが入っている。

 このペンダントは、一年生の夏休みの帰省の際、座敷わらしから渡されたものだ。

 今は二年生の冬休みなので、かれこれ一年以上持っていることになる。

 これが 中々不思議なもので、なんと、形が変わるのだ。

 桜の形になったり、ペンやヘアゴムになったりと色々ある。

 特に驚いたのは、このペンダントが剣などの武器になったことだ。

 私は前世からラノベが好きなので、その日はずっとニコニコしていた。

 だって剣である。ラノベ好きとして「武器に変化」というのは見逃せない。


 さて、そんなペンダントだが、当然ながら親には言っていない。

 こんなに綺麗なペンダントだ。誰かの持ち物では、と疑われるだろう。

 そのため、こうやって隠している。本当は魔法のペンダントを身につけておきたいが、こうして引き出しの中にしまっている。

「もうすぐ晩御飯よー」

 母の声が聞こえたので、ペンダントが入っている引き出しを元に戻し、リビングに戻る私であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

タイム&リープ @mileimoon @mileimoon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ