第十三話 日々

「いってきます。」

「いってらっしゃい。気をつけていくのよ。」

 習慣の一部である行為をし、私は玄関を出る。

 外は見事な晴れで、少々熱い気もする。今は五月なのでしょうがない部分もあるが。

 少しだけ歩くと、門があるのでそれを開けると、目の前には黒い高級車、ベンツだ。

 そして、自動でドアが開く。ツッコミはもうしない。そして、乗り、閉まるのもまた自動。

「おはようございます。」

「おはようございます。」

 これも習慣の一つだ。車が動き出す。

 運転手である水橋さんの運転技術はすごい、といつも思っている。

 しかし、集中しているせいか会話がほとんどない。だが、私はこの静寂が好きだ。

 私は元々社交的な存在ではない。父親のようになりたいと思ったことは何度もあるが。

 能力を使えば可能かもしれないが、自分の気持ちを無視してまで、社交的にはなりたくない。それが私の持論だ。

 話を戻すと、車内は私にとって居心地のいい場所になっている。十五分で小学校についてしまうのが少し惜しいが。

 今日の授業は五時間授業。国語、算数、学活が二時間に、図工が一時間。

 予習はしていないが、まあ、するメリットはないだろう。

 この体はとても便利で、試しに東大の問題を解いてみたとき、全ての問題で百点を取れた。自重する気は無い。嬉しいからだ。


 さて、そんなことを思っているとあっという間に学校に着いた。時刻は八時ちょうど。

「あれって・・・」

「相変わらずすごいよね・・・」

「羨ましいけれど、教育とかすごい厳しそう・・・ほら、彼女ってすごく頭も運動神経もいいじゃない。」

 周りから声が聞こえてくる。

 蛇足ではあるが、家の教育はあまり厳しくない。勉強しなさい、という言葉よりも、お菓子食べよう、という言葉の方が何倍も聞いている。あとは、礼儀には厳しめだ。

 なぜ、勉強しなさいと言わないのか、と疑問に思ったこともあったが、個人的には勉強の能力よりも、もっと大事なものがあることに気づいているから、あまり言わないのだろうか、と思っている。

 ちなみにだが、今噂している人たちは高学年が多い。低学年は、まだ私がどのような人物なのか、あまり分かっていないのだろう。

 そして、教室に入る。人数はあまりいない。大抵の子は話したり、遊んでいたりして、私の方には話しかけてこない。恐らく、父と母からにあまり関わらないように、と言われているのだろう。もう少し成長したら、仲良くしよう、と思うのだろうが、低学年の今は、無理して付き合って、自分の子が何かしてしまったら・・・と警戒しているのだろう。以前に言った気がするが。


 そういう状況だと絶対に暇になる。

 そういう時は外の景色を見たり、絵を描いたり、考え事をしたりするが、すぐに飽きてしまう。

 なので、今ハマっているのもが、これである。

 私がランドセルから取り出したのは、分厚い本。

 誰もが聞いたことがある本、「六法全書」だ。暇すぎて読み始めたのがこれだ。自分で自分に引いている。しかし、これ以外に暇つぶしになるものというと参考書ぐらいしかない。しばらくは暇だろう。

 そうしていていると、いつの間にかチャイムが鳴り始めていた。先生がこの状況を見るとびっくりするのですぐにしまう。

「起立!礼、着席!」

 私はダラダラされているのが嫌いなので、能力を使うことで、ビシッと決めている。

「はい、今日は・・・席替えをしまーす!」

 歓喜に、文句にちょっとした絶望の声が聞こえてくる。

「くじ引きで決めるからねー文句はナシだよ!」

 えー、という声が聞こえてくる。が、私は嬉しい。くじ引きならば、座標の能力を使うことで、好きに座席を決めれるのだ。ズルかもしれないが、やめたくはない。

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