第十二話 報告

「さて、定例報告会、としますか。」

 日本語。相手側が。

「いつも思うんだが、普段からそうしてくれれば、通訳代が節約できるんだけれど。」

「うーん、そうしたくても、日本語を話すことで、誰かに怪しまれたりしたら嫌だからな。」

 父親の親しい友人が日本人だったため、小さい頃から日本語も聞きながら成長した彼。

「まあ、そう言うことなら。というわけで、定例報告会。まずはそちらから。」

「まずはビックなニュースが一つ。近頃に大規模な討伐隊が組まれる。」

「討伐隊?」

「まさか、あの神の目的を知らない、とかはないよな。一応確認だけれど。」

「目的は知っている。「世界を美しくするために、マイナスな人を殺す」でいいよね?」

「そうそう、それ。で、そのマイナスの人たちを大規模に討伐していくために作られたのが討伐隊。アメリカの方で行われるから。」

「人数は?」

「かなり多め。「六属性」の内、三人は参加するらしい。」


「六属性」

 それは駒の中でも特に優秀な人たちを指す。

 それは、十パーセントのエリートによって構成される。

 八十五パーセントの、記憶を失った逆行者ではないのに少し、疑問を感じた。

 そこで、あの神に聞いてみると、実は人形と八十五パーセントの人たちの成績はあまり良くないらしい。恐らく、この世に転生されてくるまでのプロセスが原因だろう。

 ちなみに、この問題は最近気付いたらしい。

 記憶を失った逆行者は、この世に転生するまでに、殺しに関する様々な能力を身につけていく。暗殺に護身術、会話術まで。

 そして、この世に転生。三歳になるまで、そのまま放っておく。記憶は何もなしの状態から始まる。そして、三歳になった途端に、殺しの訓練の記憶を呼び起こさせる。記憶は無くならないが、この時点で、すでに人格は崩壊している、と言っても過言ではない。

 そして、秘密裏に殺人をする。

 しかし、殺しの訓練で身につけた能力は、他の人たちに違和感を感じ起こさせる。 その結果、外国の場合、保護施設に入れたり、外出を厳しく取り締まる場合もある。

 日本でも、親との信頼関係が薄くなってしまう為、心に気づかぬうちにダメージが与えられる場合もあるらしい。

 しかし、十パーセントのエリートならば、殺しの訓練を受けていない為、違和感がなく、日常生活を送れる。

 そして、そう言う人たちは「記憶を保持する」という願いをするくらいだから、頭がいい。その為、色々役に立つ能力を持っている。

 だから、エリートと呼ばれるのだ。

「で、詳しい人は?」

「<炎の踊り手>アリシア・ファルディーに、

 <光の天使>エミリー・キーティン、

 <獰猛な森人>モハメド・スリレイカだな。」

「・・・「新星」の活動は?」

「いや、今回はないらしい。次回の討伐隊には参加予定らしいが。」

「次回となると、かなり先になるか・・・「休暇」の期間は長いからしょうがないけれど・・・」

 休暇、それは討伐の後にある停滞期、と言った方がいいだろうか。


 そもそも、マイナスの人たちを殺した後、どうなっていくのか、ここでおさらいしておく。

 まず、対象が殺された後、ワルキューレという神によって、この世から存在自体が消される。そうすると、その人物が乗っていた車などが、元のお店に戻ったりする。

 しかし、存在自体が消える、という大規模なことをするので、少し矛盾が残ったりする。

 いつもなら大して問題はないが、討伐があった際にはたくさんの人物が消され、沢山の矛盾が発生する。

 その矛盾を時間経過とともに収まらせる為に、休暇と呼ばれる期間が与えられる。この期間は原則として五年であり、基本的に殺しはしない、ということが決められている。

「まあ、大人しく待つんだな。」

「それ以外に報告は?」

「特になし。ああ、また討伐する前と後にメールを送るようにする。」

「助かる。」

 秘密の会談はこうして終了した。

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