第五話 能力

 さて、私は神様から「一日に一度願いが叶う」という能力をもらった。

 これはとても便利で、私は着々と便利な能力を作っていった。


 1:時を操る能力

 制限時間はないが、自分が生きている期間中にしか使えないので、原始時代に行くなどは不可能。

 そして、いきなり、時間移動を行うと酔う。

 また、対象物を時間停止空間の中で動かせることも可能。工夫すれば、誰も聞く人がいない、とても安全な相談室を一瞬で作ることができる。また、一緒に過去や未来に行くこともできる。


 2:身体能力を向上させる能力

 大まかに三つのモードがあり、一つ目は普通の人モード。二つ目は、人類の限界モード。

 三つ目は異常モード。

 また、霊感、幸運なども含まれる。


 3:人の心理を操れる

 十億人が限界。また、行動を促すことは出来るが、絶対にこの行動をさせる、というのは不可能。また、反射も操れない。

 他にも、応用系として、相手の心理や思考を自分の方に流すことも可能。そうすることで、相手の考えが分かる。


 4:触れたものを記憶する能力

 主に本に対して使うが、絵画などに触れると、絵柄や、表面の凹凸などを記憶できる。上限はなく、また、覚えたものを忘れることもできる。


 5:対象の座標と、状況、どういうものかが分かる

 対象に関しては特に制限はない。また、状況を調べることで、健康状態が分かったり、他にも探し物をする時に便利。

 そして、状況の応用系として、テストの答えの状況、つまり答えが分かるなど、なかなかずるい点がある。


 6:虫や菌を寄せ付けないバリアを張る能力

 無色透明。制限も特にないが、あまりにも広く張りすぎると、生態系に大きなダメージが与えられるので周辺十メートルくらいがいい。


 その中でも4:の能力をたくさん使用した日があった。


 そう、図書館に行った時である。













「行くよー」

 母の声が聞こえる。

「はーい」

 と返事をして、母が開けてくれている玄関のドアから外に出る。

 太陽が眩しいほど照りつけており、八月、という言葉がぴったりの暑さがそこにある。今日は八月二十七日。目覚めた日からちょうど二十日が経った。


 あの目覚めた日から、私は、ニュースや新聞などのメディアを活用して、世の中がどうなっているか、というのを理解しようと努めた。父と母からは怪訝な目をされたが、一応は世の中の動きがどうなっているのかを教えてくれた。

 そんな勉強ずくめの中で唯一行っていない場所があった。図書館だ。


 図書館はありとあらゆる資料があり、冷房も効いていて、夏の時期には天国とも思える場所だ。

 歴史や文化を調べるのはそこが一番だろう。まあ、その他にもやりたいことはあるが。

 そんなことを思いながら、車庫の方に移動すると、父親が車を出しているところだった。

 黒い車にはあのマーク。ベンツだ。

 最初あの車を見たとき、あまり乗りたくないな、と思ったりしたが、慣れというものは恐ろしい。今では、拒否感はほとんどなくなってしまった。

「はー・・・」

 拒否感はほとんどなくなっているが、驚きなどはまだ少し残っている。内装を見て驚いていると、いつの間にか出発していた。

 相変わらず恐ろしい運転技術だ。

 ちなみに今運転しているのは父親。助手席には母が座っており、後ろの席にはチャイルドシートに私。

 一応記しておくが、私はまだ三歳になったばっかりだ。だが、来年には幼稚園に通うことになる。引きこもり体質の私にとっては中々辛い。

 そう思いながら車から車外の景色を見る。そこには、車と人ばかりが目立ち、大都市というべき光景がある。だが、その中にも緑があり、ゴミは落ちていない。


 ここは東京。

 高いビルだけでなく、古い建物もある都市。

 今から行くのは国立図書館、と心の中で唱えてみる。

 そう唱えるのは、今から大仕事をする緊張感から逃れるためだ。

 そうしていると、あっという間に国立図書館についた。想像しているよりもずっと大きい。

「にしても、歩くのが速くなったねー」

 母親が言う。なんだか嬉しいのか、そうでもないのか複雑な気持ちで聞く。

 当たり前といえば当たり前だろう。小さい子どもよりも中学生の方が歩くスピードは速いのだ。

 そして、入り口が見えてきた。

 自動ドアが開き、私たちが通ろうとすると・・・


 時が止まった。

 全体の風景が青みがかり、外の鳥も、雲も止まっている。

「さてと、やりますか」

 そう言いながら、本に触れていく。何も起きないはずだが・・・本が青く輝き、すぐに収まる。記憶した、ということだ。

 特に変わりは無いように思えるが、調べた本に関する情報を思い出そうとすると、まるで本を読んでいるかのように文字が目の前に表示された。視界の左上がその情報で埋まっており、大変見にくいが、身体能力の上昇という能力でさほど気にならない。

 そう思いながらどんどん記憶しておく。不思議と疲れないが、精神は違う。本の多さにげっそりしながらも、楽しみ、という感情を持ってやっている。と、第三者の視点で見る


 終わったのは、何時間後でもあり、何十分後のようにも思える。この空間だと時間の感覚がおかしくなるのだ。

 感覚を養う訓練でもしようか、とふと思った。








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