第四話 四つ
四大グループ、というものが日本社会にあるらしい。
四大グループと呼ばれるものは、聞いたことがなかったので、恐らく、ワルキューレという神様が作ったのだろうか。
話を戻すと、四大グループは日本社会を支える四つの柱であり、世界にもかなり影響を与えているとのことだ。
そのグループは、それぞれ特定の分野に分かれて、経済や社会を支えているらしい。
まず、一番歴史が古いのは、五十嵐グループ。
主に貿易や旅行の担当だという。
そのグループの元を辿ると鎖国している時にまで遡ると言われており、とても歴史が古い。また、交渉を穏便に、有利に進めるのだそう。その為か、信頼は非常に厚く、五十嵐グループの傘下の子会社ならば安心、という雰囲気が社会全体にある、とのことだ。
次に歴史が古いのは、導本(どうもと)グループ。
主に、重工業や軽工業、機械類の担当だ。
残念なことに、そのグループの評判はあまり良くないらしい。社員へのセクハラ問題は当たり前。さらに着服金を受け取るなど、かなり荒れているグループだ。しかし、製品の質はよく、安く、使いやすい、という特徴があり、なんとかやっていっているという状況とのこと。
そして、三番目に古い、いや、二番目に新しいのは、松林グループ。
主に金融系を担当している。
このグループも信頼は厚く、実績はとてもあるが、最近、少しずつ不景気になってきているせいか、業績が段々と落ちてきているらしい。また、仕事についてはどんどんと多忙になってきており、今の時点では、就職しない方がいいと言われている。
そして、最も新しい、力もとてもあるグループがある。
ええ、びっくりしました。
まさか、「私の父親」が経営しているグループとは。
その名も一ノ瀬グループ。
主に、車や鉄道、農業を担当している。
さらに、アジア、アメリカの方にも進出していて、世界的にも有名だ。
このグループの始まりは父親が二十五の時だったらしい。そして、今の父親の年齢は三十四。もうすぐ三十五らしい。
ここまでやってくれて、本当にありがとうございます。あの神様には感謝しかない。としか言えない。少し無理矢理感があるが、まあ、なんとか誤魔化せるだろう。いや、誤魔化してみせる。
このグループについては、最近、簡単な仕事をAIに任せたり、週休を三日にするなど、かなり大規模な改革を行ったらしい。そのおかげか、業績はどんどん右肩上がりになってきており、嬉しい、という父親。私から見ると、社員に甘いように見えて、逃がさないように、少しずつ締め上げていっているように感じる。
恐らく、いや、絶対にこれらのグループが出来た原因は私が、裕福な家で、と言ったせいだろう。
正直、これからは大変だろう。一ノ瀬グループの会長の一人娘として、見た目だけでも、模範的に演じた方がいいからだ。まあ、ヤンキーなどになるつもりはこれっぽっちもないが。
少し話はズレたが、これからは気があまり抜けない日々を過ごすのではないか、と思ってしまう。
しかし、私には神からもらった能力がある。
あの能力を使えば、日本、いや世界を治めることも可能だろう。
楽しくなりそうだ。
そんなことを思っていた。が、ある疑問が出てきた。
何故、母親は和室にまで迎えにきたのか。
歩行障害があるわけではなさそうだ。そんなことを思いながら質問をすると、あっさりと答えてくれた。
どうやら私は、熱を出して寝込んでいたらしい。三日ほど前から。いきなり。
いきなり熱を出した理由は、推測するに「意識の上書き」という方法で、過去の自分の体と今の自分の意識を合わせるのならば、熱を出して意識が混濁していた方が楽だから、ということだろうか。
だとすると、今、熱がないのも納得できる。
作業が終わり、熱を出し続けている必要がないからだ。
そんなことを考えながら、席を外す。トイレに行く、と嘘をついて。何故、そうしたのか、それは自分の顔を確認したいからだ。
顔、というのは、遺伝が深く関わってくる。
そしてあの二人の顔。期待をしない方がおかしい。
「お願い・・・」
そう呟きながら、洗面所のドアを開ける。
鏡をゆっくりと見てみると・・・
美少女がいた。
「!?」
思わずびっくりしてしまう。それくらいに美少女だ。
目は大きな二重で新種の宝石のように輝いている。鼻はスッと通っていて、桜色の唇が下にちょこんとあった。輪郭は少し丸めで、それがまた愛らしさを強調していた。
髪型は名称は忘れたが、肩より少し短く、中側に髪の毛の末端がくるりん、と入っている。黒色である。
「これは・・・ワルキューレさんに感謝しないと」
神にさんずけはどうかとも思ったが、これが一番しっくりくるのでしょうがない、と思ってもらうしかない。
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