第三話 起床
交差点にいた。
夕焼けに染まっていた。何故かそれだけは分かる。モノクロなのに。
周りには人がいた。車が走っていた。
笑っていた。笑っていた。笑っていた・・・
不意に悲しくなった。
何故だろうか。
ただ、一つ分かるのは・・・・・ということ。
声が聞こえた。
「それがあなたの願い?」
鈴が鳴るような、綺麗な声だった。
はっ、と目が覚めた。
電灯が目に入った。見慣れた形の、楕円形の電灯。
そこまで確認すると、不意に何か忘れているような気がした。
「何だったけ・・・」
その言葉を口に出した瞬間に、一気に記憶が流れてきた。
気持ち悪さや、しんどさは感じなかった。ただ、思い出せた気持ち良さがそこにあった。
「・・・ここは?」
ワルキューレという神様の言う通りなら、ここは過去の現実世界だ。
しかし、私はこの部屋を知らない。
もしかして、家族のことについて、少しいじった際に、裕福な家で、と言ったのが影響しているのだろうか。
「とりあえず、家族に確認をしないと・・・」
諸々のことを。そして、私が記憶を失っていることを。記憶をいじったりすれば容易いのだろうが、どこからか綻びは必ずでてくる。
リスクは高いが、事実を言った方が後々楽になるだろう。
そんなことを考えながら、私は起き上がった。どうやら布団で寝ていたらしい。が、私は忘れていた。
過去に戻るということは、年齢も下がっているということを。
「視点が低すぎる・・・」
今、私は何歳かは分からないが、視点の高さ、手の大きさから、小学生以下、いや、幼稚園児以下な気もする。
これからしばらくは不便だ。
「・・・ちゃん・・てる?」
「様・・・行くよ・・・」
そんな中、声が聞こえてきた。
若い男女の声。おそらく、父と母だろう。
「そういえば、どう説明したら良いんだろう・・・」
説明するのは決まった。しかし、方法は決めていない。
「これ、かなりの危機・・・」
そう呟くと、
「あれ?起きてるの?」
気付かれた。かなりヤバイ状況だ。
が、このまま放っておくわけにはいかない。
「うん、起きてるよ。」
「じゃあ、迎えに行くよー。」
迎えにきてくれなくても良いのに、と思っていると、和室の扉が開いた。
そして、私はこう言ってしまった。
「は?・・・誰?」
物凄い美人がそこにいた。
見た目は可愛い、というより美人と表した方がいい。目は切れ長で、鼻は高く、輪郭はシャープ。背は、とても高く、少し威圧される様に感じる。年齢が下がったので当たり前かもしれないが。
しかし、私の言葉に反応したせいか、驚いた、心配した様な顔をしているのを見て、威圧的だなという気持ちはどこかに行ってしまった。
「??・・・えっと・・・今、なんて言った?」
母、だろうと思える美人が聞く。
「ええと・・・誰、と。」
その後に起こったパニックを抑えるのはとても苦労した。
「・・・まあ、そうゆうことです。」
説明がとりあえず終わり、出された麦茶を飲む。うん、美味しい。飲み慣れた麦茶の味だ。
説明の内容としては、私は未来から来た。年齢は十四歳で、学校の帰りに、「いきなり」
過去の世界に来た、というものだ。
神については黙っておいた方がいいだろうと思い、言わなかった。
「まさか、ねぇ・・・そんなことが本当に起きるなんて・・・」
ここはリビング。一言言おう。大きい。
よくCMで無駄にでかい部屋が映し出されることがあるだろう。あんな感じの部屋だ。
窓も大きく、テレビも大きい。そして本棚もある。蛇足だが、天井が高い。
「それで、一つ確認だけれど、あなたは未来から来て、家の形などが違う、というのが気になっている、ということよね?」
美人、いや母親が確認する。
名前を確認したところ、私の母と同じ名前だった。
ちなみに名前は一ノ瀬 美奈子。
運動、勉強面とともに優秀な成績を残している。また、人に物事を教えるのが上手い。
運動面に関しては卓球で県に上位に食い込んでくるなど、中々すごい。
私の中では、なんでも出来る、器用美人という印象が強い。
「信じられないが・・・嘘をついている様に見えない・・・」
驚いている男性は私の父らしい。名前は同じだった。
名前は一ノ瀬 雅人。
深夜アニメや、ゾンビ映画の知識から天文学の知識まで、幅広い知識を持つ、私の中で、一番謎が多い人。
もちろん、勉強面でもかなりの学歴らしい。
らしい、というのは、まあ、察してくれると嬉しい。また運動面でもスキーとテニスが出来るし、人脈も広い。
見た目は、イケメン、というよりかは優しそうで、おおらかな感じだ。顔が整っているのは確かだが。目は大きい二重で、鼻が高く、輪郭は丸っぽい気がする。母と比べているから余計にそう思うのだろうか。背は、母が百六十五なのに対し、少し高めなので、百七十ぐらいだろうか。
そんなことを呑気に思っているとある質問をされた。
「この家に見覚えはないんだよね?」
父からの質問に、
「はい、そうですが?」
と答える私。
「・・・それが確かなら・・・四大グループという言葉に聞き覚えはない?」
四大グループ、という言葉を聞いて、首を傾げた私に、父は重要な話だから、と言い、
その四大グループについての話を始めた。
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