甘い朝のみかん
次の日。朝からお子様ランチを食べたくなるような清々しい朝。
花凛がすでに家を出た後、夜ご飯の下準備をしてから家を出た僕は、ドア前でみかんに会った。
僕が開けたドアを華麗なステップでよけて、綺麗に制服のスカートがひらりとなる。色々な点でやっぱりさすがダンス部って感じだ。
「おお……今日は朝練ないのか……?」
「ないですわ。ですから、一緒に、行きたいですわ」
「おお行こう……」
みかんと数分歩いてから、僕は言った。
「そう言えば……招待券、もらったぞ……」
「え? だ……誰にですわ?」
なんでそんなに驚いてるんだろう?
「柚川が……」
「音香? どうして……? つまり、音香は凛太が好きなのですわね!」
「いや絶対それはない……」
僕は柚川が言ったことをほぼそのまんまみかんに言った。そうすれば勘違いの発生源は皆無。
「それ、本当の話か怪しいですわ」
ただし信じてくれたとしたらなんだけど。
「本当なんだけど……柚川に聞けば本当だとさらにわかるぞ……」
「……そう、ならいいのですわ」
「……ちゃんと見に行くから」
「いそがしくないのですわ?」
「いや、そういう問題ではなく、僕が見に行きたいし……それに、同じ発表会に花凛も出るみたいだしな……」
「え? あ、小学生の部に出るってことですわね? つまりそのために凛太は行くのであって、私はおまけってことですわね……」
「いや違うって……」
なんか今日のみかん、めんどくさい人度がプリンカップ一個分くらい増してるな。
「そう言えば……みかん」
「なんですわ?」
「まあ……なんだかんだ言ってこれからみかんも僕も……それぞれのことで忙しくなるから……」
僕もみかんも文化祭に向けて、そして、それぞれ料理コンテストと発表会に向けてで忙しくなる。だから今のうちに……。
「忙しくなるから、どうかしたのですわ? やっぱり私の発表会見る暇はないということですわね」
「違う。僕は……まだ少し時間がある今週の間に……みかんと二人でどこか行きたいなと……」
「わ、わわたしと二人? …………実はですわっ。私もらったチケットがあってですわ」
みかんは目を下にやって、だけど手をまっすぐに僕に出してきた。
そして甘いみかんがちょうどフィットしそうな少し小さな手には、水族館のチケットが二枚。
端っこに可愛いうみがめとペンギンの写真が見える。
僕は驚いた。僕おんなじことを考えていたから。
「よし……今週末、水族館に行くか」
「はいですわ」
僕はみかんからチケットを受け取り、僕が用意していた二枚のチケットが入っている方と反対のポケットにしまった。
脳内でカレンダーにお子様ランチのシールを貼ったことは、言うまでもない。
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