調理実習
そしてその日の六時間目。僕はたくさんの小学生と一緒にいた。
なんの時間かといえば調理実習の時間。
小学生がたくさんいる理由は僕たちの班が作ったお子様ランチを試食に来てくれているからだ。
いやあ、本物の小学生が食べにきてくれるなんてこの上ない幸せ。来てくれてるのは小二だから小三の万実音ちゃんは残念ながらいない。
頑張って小学校と児童館に電話した甲斐があったな。児童館の方は僕のことを知ってくれてるから大丈夫だけど、小学校の方は怪しまれたっぽくて話を聞いてもらうまで大変だった。
結局調理実習の班は、僕とぬいぐるみ部の羽有と、あともう一人ぼーっとしていて余ってたから僕たちの班になってしまった稲城。
稲城とは、図書室でパソコンしたり勉強したりするのが日課の変な人。
つまりは三人とも変人扱いされていて、トマトが嫌いな子供に真っ先にお子様ランチから排除された三つのミニトマトのような感じだ。
ちなみにもうすぐお子様ランチが完成する頃という今。ここまで料理をしているのは僕だけだ。
二人とも料理にやる気ゼロ。
しかし羽有の方は貢献をしてくれた。
お子様ランチのおまけのおもちゃとしてぬいぐるみを作ってくれたのだ。
僕が頼んだら仕方なくやった感があるけど、予想以上にすごい可愛いぬいぐるみを羽有は作って来た。
お子様ランチをよりよくするために大切なものを僕は忘れてしまっていた。
そう。僕はおまけのおもちゃをつけることを怠っていたのだ。それに気づいた僕はこれから、お子様ランチには必ずなんらかのおもちゃをつけることを決意した。
というわけで、
「そろそろできあがりだぞ……」
? あれ、反応がない。のになんだかざわざわしている。
ざわざわの方を向くと、部屋の角っこに立つ羽有の周りに扇状地のごとく小学生が集まっていた。
な……なんとおかしいことだ。
今まで頑張っていたのは僕で、僕の周りには出来たてのお子様ランチがあるのに。
羽有はどんな面白いものを持っているのだろうか。
とさらによく見れば、ぬいぐるみをつくりながら、楽しく小学生たちとおしゃべりしているだけで特に何もしていなかった。
なのに、なんでこんなに小学生が集まるんだろう?
これが本当の小さい子のお世話のプロ……。
別に小さい子が僕のところに来なくて寂しいとかいうわけではないけど、なんか羨ましくなってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます