二枚の招待券

 三人と動物さんとお話するゲームをしばらくした後、僕は自分の部屋に退散した。


 一息ついて柚川がくれた封筒の裏を見る。


 せっかくくれたんだし、じっくりとみないとな。水着姿のみかんを改めてしっかりと眺めたい、というのもあるけどな一応。


 今更だけど、この写真。場所がプールではない。まず柚川はプールにはカメラなんて持ってなかったし、スマホももちろん持ってなかったはずだ。これはおそらく、前もってどこかで水着を着て撮ったものだろう。


 僕は招待券だけを取り出して財布の中に入れ、写真付き封筒は引き出しの隅に入れた。


 みかんには見つからない方がいいものな気がしてきたし。




 僕にしては珍しくそれからは勉強していると、


「あのお兄ちゃん……」


 花凛がとんとんとノックしてから顔だけドアの隙間からぴょこひょこんと出してきた。


「どうした……? お友達は……帰ったのか?」


「うん。二人とも帰ったよ。あ、それでね、えっと、これはい!」


 花凛から渡されたのは……招待券。


 今日は招待券ブームかな。


「あの今度、なわとびダンスの発表会があって、忙しいと思うんだけどもしよかったらきて欲しいなって思って渡したよお兄ちゃん」


「おお……ありがとう。絶対行くから」


「ほんと? お兄ちゃんも最近忙しいでしょでも」


「いや、そこまででもないし、何よりも優先して行く」


 だってそう。小学生の発表会とは大体、親が見にくることが多いはず。でも、うちの母親は仕事で見に行けないだろう。だから僕は絶対に行かないと。


 僕が小学生が見たいから行くというわけではなくそういうこと。もちろん僕は花凛の発表はとても見たい。


「嬉しい。私頑張って本番に向けて練習するね!」


 花凛はそう言ってドアをいつもより少し丁寧めに閉めて出て行った。


 僕は今日もらった招待券を二つ並べた。


 よく見たら同じ招待券だ。お子様ランチがいきなり分裂したようにそっくり。


 日にちも場所も同じ。


 どうやら同じ発表会に、二人とも出るようだ。


 すごく楽しみだ。僕は自分のカレンダーのその日に、しっかりとお子様ランチのシールを貼った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る